3.16.2022

[film] Turning Red (2022)

3月11日、金曜日の晩、Disney+で見ました。邦題は『私ときどきレッサーパンダ』。
“The Batman”を先行の3月10日に見たのはこっちを公開日に見るためだったの。

この日は会社を休んで、上野でフェルメールみて、空也上人みて、ポンペイ見て、シネマヴェーラで『暗黒への転落』(1949)をみて、最後がこれだった。 少し疲れたけど本当によかった。こんな素敵なのをなんでシアターの大画面で見ることができないのか、ちっとも理解できない。あったまくる。

ピクサーの最新作で、すばらしかった短編アニメ”Bao” (2018)を作ったDomee Shiの祝長編監督デビュー作。

2002年(監督自身が13歳だった年なのね)、トロントの中国系カナダ人の家族と暮らす13歳のMei Lee (声:Rosalie Chiang)はやや過保護で過敏なママMing (声:Sandra Oh)と優しいパパの間で育って学校でも成績優秀なよいこで、学校の仲間たち3人とボーイズバンドの4*Town(5人だけど)に熱狂している。

学校のいじめっ子男子との間でひと悶着あってやれやれだった翌朝、Meiが目覚めてみると自分が巨大なレッサーパンダ – Red Pandaに変身していることを発見してパニックになる。バスルームからの彼女の悲鳴を聞いたMingは娘の月経が始まったと思って準備しておいたあれこれを出してくるのだが、ちょっと違った – 確かにTurning Redではあるが。

どうも興奮して感情が昂るとレッサーパンダ化するらしいことがわかったので、とりあえず自分を落ち着かせて(でも髪の毛は黒→赤になってしまった)そーっと学校に向かって、でもやっぱり抑えきなくなった姿を友人たちにも見られて、でも彼女たちはこんなの最高じゃん、てMeiは人気者になる。友達みんな素敵。

娘のレッサーパンダ化を知ったMingは祖先のSun Yeeがレッサーパンダを愛して崇拝して(Meiの家はレッサーパンダを祀っている)、あまりに愛しすぎたので自分がレッサーパンダ化する能力を有してしまい、その能力が女性にだけ代々受け継がれているのだと説明する。でもそのままだと困るのでもうじき、赤い月の晩にその能力を封印する儀式をやることになるから、と。

やがて4*Townがツアーでトロントに来るのを知り、当然みんな行こうぜ!になってチケット代を稼がなきゃ、って思いついたのが、Meiを客寄せ(レッサー)パンダにして集金しよう! って。結果みんなが寄ってきてお金は順調に貯まっていくのだが、ライブの晩が儀式のそれと重なっていることに気づいて…

ライブには行きたいし友達ともずっと遊んでいたいし親には構われたくないけど嫌われたくもないし – などなど、どこかを我慢して引っこめて、のようによい子としてお行儀よく振る舞うことを求められるけど、ぜんぶやりたいのだしやるし、っていうティーンのもんもん爆発がカフカ的に捩れるのではなく、レッサーパンダへの変態にうまく、ポジティブに乗っかっていて楽しい、のだがこのアニメーションはそこに留まらなかった…

儀式の晩、田舎から祖母や叔母たちもやってきて厳かに取り仕切られようとしていたところで、そんな迷惑かけてないのになんで封印されなきゃいけないのか、わたしはレッサーパンダになっている自分も好きだし、なんで自分だけライブ行けないのか(うんうん)、ってブチ切れてしまったMei vs. ここはなんとかしなきゃいけないって必死なママたちとが..

これ、実写でやったらすごくなっただろうなー(もちろんSandra Ohはそのままで)って思いつつも、やっぱしアニメーションだからかもな、って。 でもCatwomanだってこういうのだと思うし、Twilight Sagaのオオカミくんも実はこれよね。

ティーンの女の子が直面するいろんな抑圧や不満に不安、それらに対する何故? 彼女を取り囲む家族や友達の間を行き交ういろんな矢印やため息やごたごたをひと通り拾って、だいじょうぶだから、ってわかったような顔をしようとしたその時に、いきなりレッサーパンダが現れる。

とにかくレッサーパンダ、という設定が極めて絶妙で、前に書いた“Red”の意味もあるし、両手を挙げて真剣に威嚇しているのに「かわいー」って片付けられてしまう不本意/不条理もあるし、ジャイアントパンダのアニメだと『パンダコパンダ』(1972)には敵わないから、だろうか。 ほんの少しだけ欲を言えば、Meiがどうやってあのもふもふ毛だるまボディに自身をアジャストしていったのか - 臭いとかも含めて - その辺はもっと丁寧に描いてもおもしろくなったのではないか。

とってもあの頃のあれっぽい4*Townの音楽を書いたのはBillie Eilish and Finneas O'Connellだって。なーんて器用なのかしら。

続編は、あるところに代々センザンコウを奉ってきた一家の男の子がいて..(ゴジラ対アンギラスみたいなところを狙いたい)


揺れたけど、積まれた山たちはなんとかがんばってくれた。どうかみなさんもご無事で。

 

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