3.15.2022

[film] Death on the Nile (2022)

3月6日、日曜日の午後、二子玉川の109シネマズで見ました。
邦題は『ナイル殺人事件』。前のオリエント急行のは明確に「殺人事件」だと思うけど、これって『ナイルに死す』のが相応しい気がする。

前作 - ”Murder on the Orient Express” (2017)と同様、Kenneth Branaghが監督してエルキュール・ポアロを演じて、脚本のMichael Greenも前のから続いている。

おなじ原作がベースのJohn Guillermin - Peter Ustinovによる1978年版は、1979年のお正月映画で、銚子セントラルっていう映画館(もうない)で見た。ひとりで洋画を見始めた最初の頃の1本で、内容は欠片も憶えていないけどキャストは今みるととても豪華だったんだねえ。

冒頭、第一次大戦に従軍してヨーロッパにいた頃のポアロ(Kenneth Branagh)の姿がモノクロで描かれる。彼の推理に向かう容赦ないアプローチの起源とか口髭の秘密とか当時の恋の話が出てくるのだが、これだけで1本作ってほしい - 本編より惹かれたかも。

1937年、ロンドンのダンスホールで、Salome Otterbourne (Sophie Okonedo)が歌っているところにポアロが入っていくとSimon Doyle (Armie Hammer)とフィアンセのJacqueline “Jackie” de Bellefort (Emma Mackey)が情熱的にべたべたに絡まって踊っていて、そこにJacquelineの友人で社交とゴージャスの塊りのようなLinnet Ridgeway (Gal Gadot)が現れると森の獣たちがざわざわってなって彼女を見たSimonが近寄っていく。

その次にポアロはエジプトにいて、旧友の - 前作にも出ていたBouc (Tom Bateman)と彼の母で画家のEuphemi (Annette Bening) と再会して彼らと共にSimonとLinnetのハネムーンクルーズの船に乗り込むことになるのだが、ここにはLinnetの関係者や知り合い - 弁護士で従兄弟のKatchadourian (Ali Fazal)とか彼女の元婚約者(Russell Brand)とかマネージャー(Letitia Wright)とか専属メイド(Rose Leslie)などがいっぱいいて、ここにまったくお呼びでないはずのExのJackieが笑っていない目で現れたので、Linnetはこわいわ、っていう。

で、俗世間から切れているので安全なはずの船旅が逃げ場のない危ないものに感じられたLinnetは睡眠薬が、とか言っていると夜中に修羅場が勃発し、それが伝播するようにLinnetのこめかみに銃弾が撃ちこまれているのが見つかり、更に第二第三の殺人が起こって遺体は布に包まれて腐らないように冷蔵庫に置かれる。それからついでのようにティファニーのネックレスが盗まれていたこともわかる。

こうして関係者のサークルからひとり外に立っていたポアロは目に見える証拠とか川底から発見された銃とかスカーフなどを手掛かりに怪しそうな関係者ひとりひとりをねちねち問い詰めていくのだが、誰も本当のことを言っているようには見えないし、全員がLinnetに恨みをもっていたり死んでもらえた方が都合がよかったりする人たちであることがわかって、ううむーって(見ている我々が)。

こないだのRiddlerの謎々もだけど、こういう画面上で示されるミステリーって昔からなんか苦手で、だって答えはぜんぶ画面上で示されてきているはずなので、わかんないのだとしたらちゃんと見てなかったか頭の回転がとろいかってことで、ちゃんと見てなくてごめんな、みたいになることが多いから。

前のオリエント急行のと比べると、列車と雪で客同士の距離感が近い – が故に距離を取りがち - おとなしめ - なのに対して、開放的な観光地のなかのクルーズで、客は離れてばらばらにいて、でもシャンパン開けてダンスで絡みあったり、何かを抱えてそーっとワニのように忍び寄ろうとしている - やや熱め - そんな違いがあるかも。けどエジプトの土地や気候がコトに決定的に作用したかんじはそんなにはない。

失敗よね、って思えてしまうところがあるとしたらArmie Hammerがちっとも魅力的に見えなくて、Emma Mackeyとの間にもGal Gadotとの間にも決定的ななにか - 恋が、エジプトの呪いみたいにトグロを巻く恋が生まれたかんじがしないことなの。 彼のあの件でついそう見てしまう、だけではないと思う。彼女がWonder Womanだったら砂漠の彼方にぶっとばされて終わり、になるくらいに彼は弱くてちょろいキャラに見えないか。

なのでポアロが自身の辛く狂おしい恋の記憶を噛みしめつつ犯人を追い詰めても、なーんだになってしまう気がする。 殺人、というよりタガが外れて制御を失った何かが何かを押しやって、そこから先はドミノのようにぱたぱたと穴に落ちていって、最後は布巻きのミイラになって運ばれていく。

謎が明らかになってしまうと、これって謎解き推理劇に仕立てるよりも起こったことを順にきちんと追っていく - ポアロの動きも含めて - ドラマにした方がおもしろくなったのではないかしら、とか。

ポアロ、お金も貰ってないだろうし、エジプト行ってもクルーズ船乗ってもちっとも楽しくなかったろうな、かわいそうにー、って。 でもあのラストを見るとなにかを吹っ切ることができたのかしら? なんで? そっちの方がよっぽどミステリーだわよ。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。