3.22.2019

[film] Moses und Aron (1975)

14日木曜日の晩、BFIで見ました。

BFIというより、Goethe-Institut(こっちにもあるの)の主催で、この3月から6月まで、”The Films of Jean-Marie Straub and Danièle Huillet”ていう彼らのComplete Retrospective(Completeは英国初らしい)をロンドンのいくつかの定期上映館でやっていて、Straub and Huilletは日本だとアテネでちょこちょこ見ていたくらい、ものすごく大好き、というほどでもないのだが、たまにあの土壁みたいな世界に向かいたくなることがあって、見る。

最初にSam McAuliffeという大学の先生 - Lecturer in Visual Cultures, Goldsmiths, University of Londonのイントロがあって、まあ頭に入ってこないことときたら…

Einleitung zu Arnold Schoenbergs “Begleitmusik zu einer Lichtspielscene“ (1972)

英語題は”Introduction to Arnold Schoenberg’s Accompaniment to a Cinematographic Scene”、
邦題は『アーノルト・シェーンベルクの《映画の一場面のための伴奏音楽》入門』。
“Moses und Aron”の前にかかる序章のような短編。シェーンベルクが、カンディンスキーの反ユダヤ主義的発言に対して書いた絶縁状の朗読にシェーンベルクの音楽が被さる。屋外でそれを語る人、スタジオで朗読する人、それを反対側で録音する人、その関係のなかで切りだされるそれらの言葉の「現在」のありようと、勿論、「映画」と。

続けて、”Moses und Aron”。英語題は“Moses and Aaron”、邦題は 『モーゼとアロン』。

前の短編に出てきた反ユダヤ主義へのアンチを「出エジプト記」に乗せてぶちまけたシェーンベルクの3幕ものオペラ(3幕目は未完)を、野外のそれらしいセットと衣装で、オーケストラと歌の同録 – ライブフィルムの生々しさで撮ったもの。指揮は先頃亡くなったMichael Gielen。ここには3つの視点と時代があって、実際にMosesとAronの兄弟が生きていた頃と、彼らをテーマにした(せざるを得なかった)シェーンベルクの生きた時代と、そしてこれらが演奏され歌われて映画として問われる現代と。 映画はこの3つをひとつの調性のもと総括的に包摂する、というよりも、それらの間にある断絶とか違和を顕わにするかのように、にらみ合いとかダンスとか動物とかが現れては消えて、未完の3幕まで容赦ない。

古典や昔話を読む(聴く)ことの意味はこういうことなのよ、ていうのがよくわかるおもしろさだった。  まあ、こういうのって見ない人はいっしょう、ぜったい見たいのだろうけど。

Geschichtsunterricht (1972)

16日の土曜日の昼、BFIで見ました。 英語題は“History Lessons”。邦題は『歴史の授業』
この後、この上映に続けて“History lessons: Brecht, Straub-Huillet and the British context”ていう約100分のパネルがあって、参加したかったのだがBarbara Stanwyckと被ったのでごめんなさいした。

イントロは、King’s College LondonのMartin Brady氏。ものすごく歯切れよくおもしろかった印象だけ残っているのだが、なかみが… (メモ取らないとだめねもう)。

原作はブレヒトの未完の長編小説「ユリウス・カエサル氏の商売」の一部、らしい。
ローマの市街を移動するオープンカーの後部座席にカメラを置いて、あとで銀行家とわかる若者の運転で彼の後ろ頭の向こうに広がるローマの街なかをぐるぐる回っていくのと、カエサルとその取り巻き連中が周囲の国をずるく騙して植民地支配して資本主義を持ちこんで肥えていく過程を詐欺師ふうにべらべら喋る(たまに客席からは”Shit…” とか)姿と、カエサルとその末裔(だろおまえ)としか思えない銀行家のにらみ合いと。

とにかく車でローマの狭い路地とかを移動していくだけでじゅうぶんにおもしろくて、更にここでも上にあった3つの視点のせめぎあいがもたらす緊張は生きていて、だから歴史を、そのありようを正しく学ぶということの意味って(以下略)。 あとここから歴史修正主義のありえない詐術っていうのも..

あとはRenato Bertaのカメラ、なんであんなふうに世界がいっぺんに入ってくる(ように見える)のか、とか。

なんか、昔は題材によっては退屈よね、とか思っていた彼らの映画がこの頃とてもおもしろくなってきた気がしてならず、 これってなんなのかしら、って。

ただの歳か..

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