3.15.2019

[film] The Kindergarten Teacher (2018)

9日の土曜日、午前に”Captain Marvel”見て、午後にPicturehouseでこれ見ました。

昨年のSundance Film FestivalでDirecting Awardを貰っている。Nadav Lapidによるイスラエル映画”Haganenet” (2014) – 未見 - の英語によるリメイクだそう。

スタテン島に暮らすLisa Spinelli (Maggie Gyllenhaal)は、キャリア十分、仕事熱心な幼稚園の先生で、子供たちを見守る目も暖かいし誰も心配してないし文句も来ないのだが、自分の家では夫との間も冷めてて、息子も娘ももう自分たちでやるから構ってこないで、ってゲームやSNSに没入、の年頃で、自分は週に一回フェリーに乗ってマンハッタンの詩の教室に通っている(教師はGael Garcia Bernal)。そこにもそんなに情熱を込めているわけではなくて、続けていけたらいいな、程度。

ある日、おとなしい園児のひとりJimmy (Parker Sevak)がぼうっと突っ立ってて、何かに撃たれたように歩きだしたと思ったら詩みたいな文句をぶつぶつ呟いていて、Lisaがなにこれ? と書きとめてみるとなんか素敵な詩になっているではないか。ちょっと驚いて、彼を迎えにきたNannyの娘に聞いてみると、あーたまにあるみたい、とかいうので、彼がこんどなんか呟いてたらそれを書きとめておいてくれる? と頼んで、暫くして彼女があいよ、って持ってきた紙切れを見ると、やっぱり詩みたいで、しかもすごくよいの。自分の詩の教室に持っていってみんなに聞かせても、いいね、って言われる。

ひょっとしたらこの子はモーツァルトみたいなあれかもしれない、この才能がこのままで埋もれていってしまうのはもったいなさすぎるのでなんとかしてあげたい、と思うもののクラブ経営をしている父親は忙しくて顔を出さない、母親もいないらしい、Nannyはちゃらい娘でなんも考えてなさそうだし、なので自分で面倒をみることにして、無口なJimmyが何か呟けば書きとめ、美術館(MOMAだわ)に連れていったり、リハーサルとかしてBowery Poetry Club – なつかし – の素人ステージに立たせてみたり、熱狂するようにつきっきりで世話を始めてしまう。

この辺の空気をつくっていくかんじが巧くて、孤独で年齢もあっていろんなことに焦り始めた幼稚園の先生がもともと教育熱心だったし自らの寂しさを紛らわすためにちょっと変わった園児に付きまとう、というのが新聞記事ふうの書き方になるのだろうが、コメディにもスリラーにも転びうる微妙に居心地の悪い空気の舵をLisa - Maggie Gyllenhaalの表情とひょろっとした物腰 - 眼差し、喋り方、立ったり座ったり、それだけでも –  は見事に操って統御していて、こないだの”Hannah”と同じように不安定な女性像を見せてくれてすばらしい。 

そしてそんな彼女の先にいるJimmyは外見だけだとそこらにいるただの、ひとりぼっちのガキで、突然詩を呟きだすところなんてだいじょうぶなのこの子?  なのだが、こんな子であんな詩って、ちっともおかしくないかんじは間違いなくあるの。

そしてなによりも、今の時代の詩ってネットの隅っこに浮かんでくるとか、こんなふうに行き場を失った中年女性と半孤児みたいなガキの間に突然浮かんだり消えたりするものなのかもしれないなー、って。 それでいいじゃんかべつに。

ラストは戦慄、といってよいくらいものすごく後に残る。 そういうものか、と。

劇中に出てくる詩は、Kaveh AkbarとOcean Vuongによるものだそう。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。