3.06.2013

[film] To the Wonder (2012)

米国では4月公開だったはずなのが、英国では2/22公開であることを(地下鉄の看板で)知り、24日の日曜日の晩に見ました。 Terrence Malickの新しいやつ。

この日は土曜日に続いて朝から仕事で、何時に終わるかわかんないまま午後に入って、計画のひとつひとつがめりめりとキャタピラーで潰されていく。 翌月曜日は朝から会社で午後には空港に向かうので、ほんとに最後の最後というのにー。

場所は"For Ellen"を見たCurzon Sohoで、お手洗いに行ったら"Curzon Solo?"ていうイベントのチラシがべたべた貼ってある。 "Male + Female Speed Dating!" - 26日夜、この映画を見た後で男女で語りあおう!ていうお見合い会で、女子分は売り切れ、求む男子! だって。  こんな映画の後でいったいどんなアドヴェンチャーを... 。

男女(Ben AffleckとOlga Kurylenko)がいて、ヨーロッパを渡っていて、モン・サン=ミシェルに着いて、いちゃいちゃしていて潮の干満があって、子供が生まれて、アメリカ(オクラホマ?)に渡って、不仲になって、そんな男女のあれこれあれこれあれこれ、がえんえん続く。 Ben Affleckが土地開発系の仕事をしていて、もうひとり、アメリカのその土地で暗い顔して貧困層をサポートしている牧師(Javier Bardem)が出てくる。 会話は殆どなくて、それぞれのモノローグがぼそぼそと浮かんでは消える。 時系列はあまり考慮されていない。

前作 -"Tree of Life"からの流れでみるのがいちばんわかりやすいかもしれない。
"Tree of Life"のテーマを、すごく乱暴に生命の起源と家族の成り立ち、それをアメリカのここ数十年の歴史にプロットすること、としてしまえるのであれば、今度のは愛と信仰、をベースに置いたバリエーション、ということになる。 前者がツリー状に織られた生命やファミリーの不思議を隕石とか恐竜とかまで動員した絵巻ものとして描こうとした(ように見える)のに比べると、今回のはほんとに良くも悪くも散文的で、それこそタイトルそのままに「びっくりの方へ」てきょとんとするしかない。

それぞれの場面~極端なクローズアップからぐるーっとまわって世界全体を俯瞰するようなカメラ、それが映しだす微妙な表情の揺れ、或いはひとの途方に暮れる後姿、これらは頻繁に登場するイメージだが、これらひとつひとつに何の関連も連係もないし、終盤に撚りあっていくこともない。 殺し合いになるわけでも地獄の逃避行が始まるわけでも悪魔祓いが始まるわけでもない。
むしろ、そういうドラマ、ストーリー的な進行を排除したところで愛や信仰のかたちをどうやって描きだすのか、に注力しているように思える。

愛も信仰も、Treeを形成しないひとりひとりの、個の営みであり表象である、と。 
(その象徴としてのモン・サン=ミシェル、とか)

"Tree of Life"を見て、わけわかんねー、と怒ったひとはあんま見ないほうがよいかもしれない。

でも、Ben Affleckのぼんやり佇む後ろ姿がずっと残るので割と好きかも("Argo"の100倍いい)。
どことなく"Gerry" (2002)みたいに止まらないかんじもある(あれはCasey Affleckだったけど)。 
なんとなく、Terrence Malickは、これからGus Van Sant化(ってなに?)していくのではないか。 

音楽は"Tree of Life"と同様、Hanan Townshendですんばらしいのだが、今回はそれに加えてDaniel Lanoisがサウンド・デザインで参加していて、ところどころものすごく不穏な、すさまじい音が鳴る。 遠雷みたいに。 画面の、終始水に濡れたような美しさはいうまでもなし。

Olga Kurylenkoさんはとてもすてきで、Rachel McAdamsの二の腕は変わらず生々しい。

ここまででLondonで見た映画はおわり。

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