3.24.2013

[film] Stoker (2013)

16日の土曜日の晩、その午後に牢獄から解放され雪のWilliamsburgをうろうろした後で、Sunshine Landmarkで見ました。 Londonにいた頃から見たかったやつ。

予告ではHBOのPhil Spector - Al Pacino の(ううう見たい)と、"Blue Valentine"のDerek Cianfranceの新作 - 再びRyan GoslingにBradley CooperとEva Mendes …うううこれも。

さて、"Stoker"、犯罪行為のストーカー(Stalker)ではなくて、Stoker家(ref. Bram Stoker)のお話なの。
父親を失ったEvelyn (Nicole Kidman)とIndia (Mia Wasikowska)母娘のところに突然父の弟であるCharlesおじさん(Matthew Goode)が現れて、なぜか同じ屋根の下で暮らし始める。おじさんは夫の死後骨が抜けてしまった母に親しげに近づき、同様にIndiaのところにも友達になりたい、と言って学校にまで追いかけてくるようになる。
夏のアメリカの田舎町、主人のいなくなったがらんとした一軒家、この家を舞台にしたこの三者の攻防と、だんだん明らかになってくるStoker家の過去と、ほぼこれだけ。設定だけなら昼メロにいくらでもありそうなべたべたの。

この設定の上で、Indiaの、Mia Wasikowskaの、行き場を失った不信と不機嫌が炸裂する。
それはゆるゆるふやけてばかりの母に対してでもあるし、プラスティックの笑顔で背後に寄ってくる叔父に対してでもあるし、でもそれだけではないの。
それは例えば"Melancholia"で地獄の釜の蓋を開けてしまうKirstenの不機嫌とも勿論ちがうもので、かといって宣伝文句にある「イノセンスの喪失」のようなところに置いてしまうのもちがう気がする。 イノセンスなんて最初からない、知らない。子供の頃から。 彼女はそんな顔をしている。

その不機嫌はやがて怒りに変わって彼女の手に鉛筆を、銃を、ナイフを握らせる。
(学校でいじめっ子の顔に鉛筆を突き立てるときの、その握り方がたまんない)
その変容と挙動をカメラも驚きとともに固唾を呑んで見守る、それしかできないくらい、Indiaの目と顔の歪みはすごい。 ほぼそれのみの映画、といってよいのかも。 かんじとしては、"Martha Marcy May Marlene" (2011) - あれは彼女の肩の丸みがすべての映画だった - に近いかも。

あとは、Nicoleもすごいねえ。 "Rabbit Hole"もそうだったが、家族の一員を失って喪失状態になってしまう主婦、をやらせたら彼女の右に出るものはいないのではないか。

この母娘を当初予定していたCarey MulliganとJodie Fosterがやっていたらどうなっていただろう。 もっと硬くて、でもウェットなかんじになってしまったかも。

音響がすばらしい。虫の音も鳥の声も。すべてがダイレクトに知覚の端に入ってくるような。
音楽はIndiaと叔父がピアノの連弾をするところがPhilip Glassの"Duet"で、とてもスリリングなの。

ずっとぴりぴりとおっかなかったので、ちっとも眠くならなかった。

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