12.03.2023

[film] My Foolish Heart (1949)

11月25日、土曜日から始まったシネマヴェーラの特集『文学と映画』 - 見たことがあるのも含めて改めてできるだけ見たい - から見ました。

神保町シアターでやっていた『文学と恋愛』特集からのも何本かみたのだが、映画の出来とは別にやっぱりあれこれ日本的ななんか等がきつかった。なんで自分が海外の方に向かおうとしたのかを改めて見て確認してしまった、というか。

邦題は『愚かなり我が心』。原作はThe New Yorker誌に発表されたJ. D. Salingerの短編 - “Uncle Wiggily in Connecticut” (1948)「コネティカットのひょこひょこおじさん」、短編集『ナイン・ストーリーズ』にも収録されている。監督はMark Robson。

雨の日、ひとり車を運転するMary Jane (Lois Wheeler)がEloise (Susan Hayward) と娘のRamonaの暮らす家を訪ねる。Mary JaneとEloiseは女学校時代からの友人のようだが暫く疎遠になっていたところも含め、かつていろいろあったらしい。

Mary JaneはEloiseの夫のLew (Kent Smith)のこともよく知っているので、二人の別れ話を聞きにやってきたらしいのだが家出のための荷造りを始めたEloise がある服を手にとると、ああーってなって過去に。

パーティでEloiseの用意した服をいけすかないやつがけなして悔しくて泣いていたのに当時つきあっていたLew は相手にしてくれなくて、そこでばったりぶつかった軍人のWalt Dreiser (Dana Andrews)が慰めて付き合ってくれて、最初はうさんくさく見えたこいつが悪くないようでEloise はだんだんはまっていって、LewはMary Janeにあげちゃって、そろそろ結婚を、ってなるのだがEloiseは妊娠してしまい、それを理由に結婚を迫るのはなんか違う、って黙って悩んでいると召集令状がきて、彼はなんも知らないまま戦地に向かう手前の事故で死んじゃって…. あたしのばかばかばか … って嘆いて引きずる「愚かなり我が心」 なの。

サリンジャーの原作だと、Ramonaのimaginary friendのことと、グラス家の三男だったWaltおじさんが戦死したことを聞いたりする話なので、ずいぶん、すごい改変したもんじゃ - これなら怒るだろうな、って思ったけど、戦時の女性を中心に置いたメロドラマとしては、そんなに悪くなかったかも。


The Fountainhead (1949)

上のに続けて見ました。邦題は『摩天楼』。
原作はAyn Randの同名小説 『水源』(1943) で彼女は脚本も書いている。監督はKing Vidor。

現代建築家のHoward Roark (Gary Cooper)は確固たるデザインの理念 - モダンであるとは - 等々を以ってギリシャ風とか蹴散らして強引に貫き過ぎるので顧客はみんな離れていって無一文になっても石切場で土方とかをやってる頑固者で、大衆紙New York Bannerの建築コラム担当のDominique Francon (Patricia Neal)はそんな彼に惹かれるのだが、もうひとりの建築コラム担当に反Roarkキャンペーンを張られて、社主で富豪のGail (Raymond Massey)はDominiqueに惹かれて、凡庸なぼんくら建築家と結婚していたDominiqueをそいつからひっぺがして自分の妻にして、でもDominiqueはRoarkと運命の出会いを…

最近は割と当たり前になっている感のある濃ゆい登場人物たちが財力と情念で思いのままに運命を転がし高笑いして、でもやられる方だって一筋縄ではいかない連中なのでガチでぶつかりあってとんでも展開の後にすべてが .. という大味すってんてんドラマの原型の趣きもあるような。この辺の大鍋を振るようなタッチが原作者としてはふざけんな、になったのではないか。

でも個々のパート - RoarkとDominiqueが石切場で出会うとこの睨み合いとか、Roarkが裁判で建築のあり姿や使命について演説するとことか、ぜんぜん悪くないし、Gary CooperとPatricia Nealの並んでいるのも素敵だし、このノリで現代の大御所がリメイクしたらおもしろくなるにちがいないー、って。

あと、やっぱり時代劇だなー って。いま建築についてあんなことを言ってもただの教科書知識にすぎなくて誰ひとり聞く耳もたない。ここ20年ですっかり変わってしまったマンハッタンのスカイライン、あんなカビの培養シャーレみたいのがよいとはちっとも思えないし、神宮外苑の件を例にとるまでもなく、問題となるのは建築家ではなく「ディベロッパー」とかいうロボットみたいな企業体なのでどうすることができようか? とか、「モダン」とか言われる建築家はとうにこの「ディベロッパー」業界に囲われているので… 以下えんえん。


この特集、ほんとになに見てもおもしろいよ。

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