12.28.2023

[film] Force of Evil (1948)

12月23日、土曜日の昼、シネマヴェーラで始まった特集 『Film Gris 赤狩り時代のフィルム・ノワール』で見ました。
パレスチナを巡ってあの時代とほぼ同じような囲い込みと排斥がおおっぴらに繰り広げられているいま、全部必見のやつ… なのに個人的にそれどころではない状態にあるのでううう。

邦題は『悪の力』。 監督はAbraham Polonsky、原作はIra Wolfertの小説 - “Tucker's People” (1943)。

冒頭、Wall stのTrinity Churchがでてきてナレーションが被ったところで、あーこれ見たことあったわ、なのだが、最近はそんなのばっかしなので、もう一回見れてうれしいな、しかない(老人)。

Joe Morse (John Garfield)はNYの数当てくじの胴元でギャングのBen Tucker (Roy Roberts)の弁護士をしていて、これが合法化されれば大儲けになるのでいろいろ活動しているのだが、反対側では新たに特別検察官になったHallという男が取り締まり強化に向けて動いていて、そんななか、Tuckerは独立記念日のくじ(みんなが776に賭ける)の当選番号を裏で操作して弱小胴元を破綻させて傘下に置く計画を立てる。

それを聞いたJoeは、弱小の胴元をしている兄のLeo (Thomas Gomez)に今度のくじはやばいからこの商売をやめろ、って言いに向かうのだが、Leoは弟の言うことを聞かずにおれが働いて弁護士にしてやったのに.. って臍を曲げてどうしようもないので、警察にLeoのとこにガサ入れを仕向けて彼のオフィスの全員を逮捕してどうにか破綻を回避させようとするのだが、結局間に合わなくて。

ここにLeoのオフィスにいる会計士のBauer (Howland Chamberlain)とか若いDoris (Beatrice Pearson)とか閉所恐怖症の男とか潰される側の人たちと、Joeと付き合っているTuckerの妻のEdna (Marie Windsor)とか、極悪ギャングのFicco (Paul Fix)と手下のWally (Stanley Prager)とか、闇の勢力が絡まってぶつかって、Joeは両方を見ながらなんとかうまく立ち回ろうとするのだが、結局BauerもLeoも…   

悪いことをしてのしあがろうとする闇ビジネスのチェーンと、その網から逃れようとする弱小個人店と、その間で権力への欲と血縁のしがらみの両方に絡みつかれどうしようもなくなっていく弁護士 - でもJoeは最後まで悲劇の主人公とはならず、その中途半端なありようがかえって”Force of Evil”を浮かびあがらせる、という。

高みからどっちもどっち、とか言っているとJoeみたいなことになって全てを失うことになるんだからね。

映画史でも有名なオフィスでの銃撃戦のとこと、ラストでGeorge Washington Bridgeのたもとに兄の死体を探しにいくとこについては言うまでもない。


The Lawless (1950)

12月25日、クリスマスの日の午後、シネマヴェーラの同じ特集で見ました。

邦題は『暴力の街』。監督はJoseph Losey、原作はDaniel Mainwaringの短編小説 - “The Voice of Stephen Wilder” - この人は”Out of the Past” (1947)や”The Big Steal” (1949) の原作も書いているのね。

これも見たことあるやつだった。自分にあきれてものもいえない。
こういうことが起きないように、いつなにをどこで見た、はちゃんと記録してるわけじゃん? なのに平気で繰り返すってばっかじゃないの? ばかだけど。

カリフォルニアの果実農家で働くラテン系のPaul (Lalo Rios)とLopo (Maurice Jara)が車に乗っていてちょっとした不注意で事故を起こしたら対向車に乗っていた白人たちに難癖つけられて、そのなかのぼんぼん - Joe (Johnny Sands)が根に持ってラテン系コミュニティのダンスパーティーに殴りこみをかけて、そこにいたPaulに再び掴みかかると騒動が広がって、誤って警官を殴ってしまったPaulは..

その現場にいた地元で小さな新聞 - “La Luz”を発行しているSunny (Gail Russell)とかつてNYの大新聞社にいて、今はここの地元紙 - “The Union”で編集者をしているLarry (Macdonald Carey)は、この件がまずい方に向かう気がしていたらやはりLarryの部下が人種暴動だ! って恐怖と嫌悪で分断を煽るような速報を出して、それが逃げていくPaulの挙動とそれを追う白人たちの怒りを増幅させて、Larryがきちんとした記事を書いてなんとか収めようとしても、偏向メディアだ! って却ってオフィスを襲撃されてしまう。

すべてが悪い方に転がって、というよりはもともとそういう根があったところにメディアが火をつけて延焼させて、という70年以上経った今でも続いている懲りない、しょうもない事態を極めてストレートに率直に投げてて、ぜんぜん古くなっていないの(ほめてない)。

「人権」や「差別」という言葉が今のようにはっきりと使われているわけでもなさそうなのに、やられていることは今とそんなに変わっていない、ということは人権意識や教育がどう、という以前に「悪」とか「悪いこと」ってどういうことなのか - 人を殴ったり虐めたり - もちろん殺したりしてはいけない - をふつうに、きちんと考えさせるようにしないといけないのではないか、って。これも結局は教育の話ではあるのだが。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。