12.25.2023

[film] Le lycéen (2022)

12月21日、木曜日の晩 - 映画なんか見てる場合じゃないのに - シネスイッチ銀座で見ました。
英語題は”Winter Boy”、日本語ポスターだと”Winterboy”?

Christophe Honoréの新作を日仏とかじゃなくて見れる! ってこれだけで画期的ではないか、って行きたくなる。

主人公である17歳のLucas (Paul Kircher - Irène Jacobの息子なのね)が普段着で、カメラの方を向いたり向かなかったりしながら独白していく。父とふたりで車に乗っていて大型車にぶつかりそうになって道を外れたこと。2人ともだいじょうぶだったけど今から思えばあれが予兆だったのかも知れない、と語った後に学校でお父さんが、と呼びだされ、母Isabelle (Juliette Binoche)と兄Quentin (Vincent Lacoste)と車に乗ると病院ではなく自宅に向かい、父はもう亡くなった、と。

人が大勢きたお葬式を終えると、Lucasのなかで何かが抜けおちたのか壊れてしまったのか、友人で恋人のOscar (Adrien Casse)と会っても上の空だし学校は自宅の近くに転校すべきなのかとか、自分でもこれからなにをどうしたらよいのかわからない、母は母で傷ついていてそれどころじゃなさそうなので、パリでアーティストをやっている兄が彼をパリに連れて行って自分のところで暫く過ごさせたい、と言うのでそうさせてもらう。母はルーブルは行くべきだし、ポン・ヌフもあるわよ、なんて言う。

兄のパリでの同居人Lilio (Erwan Kepoa Falé) もアーティストでよい人ぽいのだが、Lucasはせっかくパリに来たのにあんま深く考えずに行きずりで体を売ってお金を貰ったりしているところをQuentinに見つかり、おまえなに考えてるんだ? って実家に送り返されてしまう。送り返されても受けとる母だってまだ自分のなかで整理がついていなくていっぱいいっぱいの状態だし、なにがなんだかわけわからなくなったLucasは、車のバックミラーを素手で叩き割ってその破片で両手首を。

命は助かったもの話せない状態になってしまったLucasは療養院に入って見舞いに来てくれたLilioに声をかけてもらったり、ギターを弾いたりしながら少しずつー。

ぼろぼろの状態からLucasと家族はどうやって支えを見出して立ち直っていったのか、かつての生に戻っていったのか、その軌跡を描いていくというより、すべてのコトの核心にあると思われる父の死は事故だったのか自死だったのか - 自死としか思えないのだが、であるとしたら何故彼は向こう側に渡ってしまったのか、ひょっとしてLucasにいけないことがあったりしたのだろうか? あなたがなにを思って悩んであんなことをしたのかわからないけど、こっちはものすごいショックと混沌のなかにあってちっとも立ち直れなくてなんなんだよ! って。

Lucasは家族にゲイであることを明かしていたし、パニック障害を起こすようなとこもあるし、でもそういったことで家族が変になるとは思えないし、家族だからと言ってなんでもオープンに話し合うべき、なんておかしいし、それぞれが他者には言えない悩みを抱えて走っていたってそれがどうした? だし、ってなるだけなのでおかしくもなんともないし。家族をそんな場所に置いてみたときに、父の死というのは後からゆっくりと、どんなふうに現れたり効いたりしてくるものなのか。

と、それまでひとりで画面に向かってぼそぼそ喋っていたLucasの場所にIsabelleが現れて、こちらに向かってあれこれ語ってから「会いたいよう」(こんなにも大好きなのに) って絞り出すように言うだけでこちら側も決壊してなにもかも一緒に持っていかれてしまう。Juliette Binoche、ふつうにおそるべし。

こうして最後に字幕で「父へ」って出るので、ああそうだったのか、と。監督の自伝的な作品、とは言われていたけど、なにが起ころうとずっとあの状態のままで蹲ってしまったままの - よくもわるくも - 父と子の姿を描いたものだった。

音楽はOMDの"Electricity" (1979)が何度か流れて、これは父親の好みだったのかしら? と思いつつ、あのチープで歪で、でも嫌いになれないあれ、がずっと残って引き摺られていった。

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