9.13.2023

[film] Retour à Séoul (2022)

9月5日、火曜日の晩、ル・シネマの渋谷宮下で見ました。
邦題は『ソウルに帰る』。英語題は”Return to Seoul”、オリジナルの英語題は”All the People I'll Never Be”。昨年のカンヌの「ある視点」部門で上映された。

監督はカンボジア系フランス人のDavy Chou、脚本は主人公と同様、韓国から養子に出されてフランスで育ったLaure Badufleと監督の共同。

25歳で、韓国で生まれフランスに養子に出されてフランス人の両親に育てられたFreddie (Ji-Min Park)は日本に向かうフライトがキャンセルされてしまったので気まぐれのようにソウルにやって来て、外国人向けのホステルに宿を取り、そこの窓口のTena (Guka Han)と強引に仲良くなって、彼女を通訳にして – 韓国語は一切できないから - 酒場に繰り出し、Tenaの友人だけじゃなくそこにいる人たち全員を巻きこんで歌を歌ったり騒いだり、で、Tenaの男友達をホテルに連れ帰って朝を迎える。 そんなキャラクターです、と。

Freddieはそんなつもりはないけど、と再三繰り返すものの何かが引っかかっているようで、韓国にいるのだから、と自分の生みの両親と会う手だてについてTenaに聞いてみると、TenaはHammondという養子縁組センターが唯一の手掛かりである、と教えて、Freddieがそこのセンターに行っていろいろ聞いて手続きをしてみると、父親とはコンタクトが取れて、母親の方は会うことを拒否しているらしい。

そこでFreddieはTenaを連れて、再婚し群山で家族と暮らしているらしい父親(Oh Kwang-rok)のところを訪ねると、向こうは家族総出で泣いて喜んで歓待してくれて、ここにずっといてほしい、って乞うのを振りきって帰った後も父親は養子に出したことを後悔しているとか、出直したいとか、韓国語でメールや電話をしてきたり、ソウルにまでやってきたりストーカーのようになってきたので、もう寄ってくんな!触るな! ってブチ切れて、その荒れた振る舞いはTenaやその友人にも及んで自分でもどうしちゃったのか.. ってなったり。

2年後、Freddieはソウルに住んでいて、武器商人の男と知り合い、その日は彼女の誕生日で、この日、自分を生んだ母親は自分のことを想ってくれたりするのだろうか? って。母親は依然として会うことを拒否していて、父親は相変わらず一緒に暮らしたがっていることも明らかにされる。

そこから5年後、片言の韓国語を喋れるようになっているFreddieは武器商人の男の会社に就職して韓国にミサイルを売っていて、韓国への出張にフランス人のBFのMaxime (Yoann Zimmer)を連れてきて、改めて生みの父親と会ったり、でもやはり気になるのは母親の方で…

おそらく自分を生んだ両親と会うこと(それで自分を捨てたことを謝罪させたり)が目的だったのではない、彼らと会って、その顔を見て(言葉はわからないけど)話して、それによって自分のなかで何が起こるのかを見てみよう、くらいだったのではないか。そして、父親と会ってみたら、思っていたのとあまりに違うし今の自分とは100% 相容れないし受けいれられないし、これはなんなの? 彼らと自分の血が繋がっている、って、血とか国とかって、なに? と。

こうしてFreddieは彼女を実親から引き離した一要因であるかもしれない戦争に関わるビジネスに足を踏みいれ、写真すら残っていない母親の影を求めて何度も韓国に足を運ぶ。

単に異文化にはまるとか、自分探しとか、だけではない、自分の身をソウルに帰らせる、引っかからせるものはなんなのか、を異邦人の目で追っていこうとして、それは最後のほうでなんとなく明らかになるのだが、そこだけちょっと甘くて普通すぎたかも。わかるけど。

でも、フランス人でも外見は典型的なコリアン、というFreddieがいろんなところにぶつかって怒ったり怒鳴ったり、そうやって自分も傷ついたりしながら平気な顔して向こうに歩いていって、でも決して和解のようなところに落としこもうとしないところとか、フランス映画だなー、って。韓国を撮っていても、佇まいとか雰囲気とか音楽のかんじとか、どう切ってもフランス映画っぽくなるー、とか。決して「国民性」とか「地元」とかに回収させようとしないJi-Min Parkのふてぶてしさもすばらしい。

韓国はふつうにそうなのかも、だけど、日本でも親族のべったーずけずけ、こちらに土足で踏みこんでくるようなところは(会社とかのふつうの呑み会とかでも)感じるところがあって、あれ変だし迷惑だから、いまや国際的にやめるべきだよね、って思う。あんただれだよ? なんてしょっちゅうだし。というようなところを「にほんすごい」系の人に投げかけたくなったり。

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