9.14.2023

[film] A Child is Waiting (1963)

9月9日、土曜日の午後、Strangerの特集”The Other Side of John Cassavetes”で見ました。
こんなの、どう見てもぜんぶ必見だし。John Cassavetesなんてぜんぶが”The Other Side”だと思うし。

邦題は『愛の奇跡』? 原作はAbby MannによりStudio Oneていう1時間枠のTVドラマシリーズ用に書かれて1957年に放映された同名ドラマの映画版。

冒頭、発達障害をもつ子供たちの医療施設の入り口で車から降りようとしない12歳の少年Reuben を所長のDr. Matthew Clark (Burt Lancaster)がおびき寄せるように中に入れて、それを離れて見ていた彼の父親(Steven Hill)はもうだめだ見ていられない、というかんじで出ていってしまう。

そこにジュリアード音楽院からのいろいろを経て新任教師のJean (Judy Garland)がやってきて、扉を開けた直後からいろんな子達に囲まれて、そのなかでも特にReubenはJeanになついてきて、Jeanも興味をもって彼について調べていくと父親と母親(Gena Rowlands)の病気に対する考え方の違い - 父親は子供の障害を認めようとせず医者をたらい回しにした - も含めて明らかになったりもしたのだが、所長はJeanがReubenにべったりになっている(Reubenもまた同じく)のはよくない、って彼女の担当を変えてしまって… 

どんな動きをするのか予測がつかないまま大きくなっていく子供たちを前に父親も母親も動揺したり目を背けたり、それはJeanも最初のうちは同様なのだが、所長だけは揺るがずに対応を決めるし、政策観点で口を挟んでくる自治体に対しても強くものを言うし、そんな障害児をめぐる社会の縮図のようなものを描きつつも、そこに突然生じる裂け目とか断線の衝撃とか、その揺れが当事者たちにもたらすショックや気まずさをためらいなしに追う目はJohn Cassavetesだなあ、って思った。

プロデューサーのStanley KramerとJCが障害児のとらえ方を巡って対立して、結果的にJCが折れてハリウッドのメインストリームから干されることになった、それもあって彼はこの映画を認めていない、というのは有名な話であるが、ここでの子供たちのダイナミックな描き方 - 学芸会のとか – は何が起こるかわからない予兆をはらんだじゅうぶんいつものJCのそれだと思うし、結末はどん詰まりのように見えても、まだ終わらないかんじがするところだってそうだし。

子供のことを気にかけながらも集中できなくて(十分な愛を注ぎこめなくて)自分ひとり苛立ちながら端からぜんぶ崩れて/崩していくGena Rowlandsの演じる母親、というのはこの辺からもうある、と言ってよいのかしら。


Minnie and Moskowitz (1971)


上のに続けてそのまま見る。『ミニーとモスコウィッツ』。

これ、21年の6月にもCriterion Channelで見ているのだが、大きな画面で見たらなんだか印象が(よい意味で)ぜんぶぜんぜん違ってて、わーこれすごいなに! となった。

NYからLAに越してきたしがない駐車場係のSeymour Moskowitz (Seymour Cassel)がLACMAのキュレーターだけど恋愛に関してはぼろぼろで泣いてばかりのMinnie Moore (Gena Rowlands)と出会って、降りかかってくる困難だの災難だのを端から揃ってひっかぶって、ふたりで踏んだり蹴ったりでもうやだ! って何度も互いに弾いたり弾かれたりで、でもとにかく愛を(あんま納得できないままでも)貫こうとする。愛とは災禍そのものである、どんなに抗ったってぶちのめされ、それでも流れこみ注ぎこんでくるのだ受けいれよ、っていうJohn Cassavetesの愛へと向かう基本的な態度、というかそんなものに立ち向かってもしょうがないのだから降参しろ諦めろ、という理念のようなのが最初に表明された作品なのかも、と思った。

のだが、小さいPCの画面で見た時は掃き溜めに咲いたなんか、みたいにごちゃごちゃあれこれどん詰まっていて大変だなあ、というかんじで、それはそれで面白かったのだが、今回の大きな画面のだと、よりでっかいスケールで愛ってこんなもんだろおらー、って”Love Streams” (1984)で車が向こうにぶっとんでいくあのイメージで、ふたりの恋が火花を散らしてでっかい花火から爆弾にまで膨れあがっていく、支離滅裂でガタガタ壊れた珠玉のrom-comとしか言いようがないの。

これってGena RowlandsとSeymour Casselの間でだけ起こるふわふわしたマジックだなあ、って。John Cassavetesもいやーな役で出てくるけど、Seymour Casselの髭とおさげのなんともいえない柔らかさがすべて、というか。夜のアイスクリームバーから始まる最初のデートのキュートで胸踊ることときたらとんでもないから、とにかく見て。

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