9.20.2023

[film] Gran Turismo (2023)

9月15日、金曜日の晩、109シネマズ二子玉川のIMAXで見ました。『グランツーリスモ』。

監督が”District 9” (2009)や”Elysium” (2013)のNeill Blomkampということで、B級メカ好きジャンク系飛び道具として、なんかおもしろそうかも、って。ゲームで高得点を叩きだした若者がスカウトされて訓練してほんもののレーサーになる、という実話がベースと聞いて、実話? フィクションなら(映画はしょぼかったけど)”Ender's Game” (2013)とか、当時の若者に決して小さくない影響を与えた(と思う。二回くらい見た)“The Last Starfighter” (1984) 『スター・ファイター』 - 農道の端に捨ててあったアーケードゲームでハイスコアを出した若者が宇宙人に拉致されて宇宙戦争に巻きこまれるお話し - とかあったけど、こんな実話があったの?

任天堂もプレステも触ったことなくてどっちがどうなのかもわからず、ゲームなんてだいっきらいで興味なくて、F1のと今回のような車(レーシングカー?)の違いもルールまわりもよくわからず(車の機構でフェードが悪い、って言い合う場面があったけど、フェードってなに?とか)、それでも楽しむことができたのはお話しとして極めてバカバカしく直球でわかりやすいファンタジーになっているから、だろうか。(バッティングセンターでばかすか打っていたらプロ野球とか、マッチングアプリで100%だった相手とデートしてみたらパーフェクトだった、とか)

英国日産の営業だったDanny (Orlando Bloom)が東京の本社に行ってドライバーを養成するアカデミーを作って彼らをレースに出そう、ゲームの宣伝にもなるしドライバーも養成できるし車の宣伝にもなるし、ってプレゼンをしたらそれがあっさり通って(リスクまみれの絶対やばい投資だと思うけど、あんなんで通るんだ?)、ル・マンを走ったこともあるのに落ちぶれて腐っていたJack Salter (David Harbour)をチーフエンジニアとして投入する。

ウェールズのカーディフで地元サッカーチーム選手の息子であるJann Mardenborough (Archie Madekwe)は父親(Djimon Hounsou)にあきれられながらも小さい頃からずっとGran Turismoのゲームにはまっていて、でも将来の展望もなんもないしどうする? になっていたところにアカデミーへの参加資格が届いて、厳しいトレーニングに耐えて、Jackたちからは”sim racer”ってバカにされたり怒られたり泣いたりしながらのし上がる、というよりぎりぎり生き残っていく。親からの反対はもちろん、Jackをはじめ昔からいるメカニックや、ライバルレーサーからの嫌がらせとかもたっぷり、全体として汗と涙の王道のスポ根ドラマとしか言いようがなくて、それがちょっと驚きなのは本当にそういう冗談みたいな筋書きに乗っかったままサーキットを転々として(世界中を旅することができて)、いきなりプロのレーサーとして輝いてしまうわけではないにせよ、怒涛のクライマックスを迎えるのはやっぱり夢か冗談かとしか思えない。

もちろん挫折や試練 - 人身事故を起こしたりもあって、そこではやはり過去に傷を負っているJackがケアしてあげたり、人情サイドもわかりやすい。子供に見せたらよいな – プレイ中のゲームのブースが解体されてサーキットを走る車に滑らかにトランスフォームしていくところなんて子供が抱く夢そのもの、だと思うし – 仮想と現実をかき混ぜながら自分の理想の乗り物ができあがっていくメカへの妄想(よくもわるくも)って、”The Fast and the Furious”のシリーズあたりが作ったものだろうか?

主人公はレーサーに育っていくJannなのだろうが、映画のなかで断然すばらしいのはJackで、David Harbourのなりふり構わない熊みたいな態度がたまんない(彼のキャラクターは実在の人物のそれにリンクしていないらしいが)。彼がぼろいウォークマンで聴き続けるBlack Sabbath - “Paranoid”とか”War Pigs”と、Jannがレース前に必ず聴くKenny G / Enyaの対比とかも。事故後のJackとJannがしんみりドライブするシーンで流れるBon Iverも。

あと、俳優さんがみんなとてもうまいのでドラマが浮いていない。Jannが事故ったとき、なりふり構わず泣き叫ぶママはGeri Horner -     Ginger Spiceだし。

日産もプレイステーションもこんなの格好の宣伝材料だと思うのにそんなに前に出てこない(気がする)のはなぜ?

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