9.02.2023

[film] Devyat dney odnogo goda (1962) - Девять дней одного года

8月26日、土曜日の昼、シネマヴェーラの特集 -『日常と戦争そして旅 ウクライナ・ジョージア・ソ連映画』で見ました。

いまはかの地では戦時下、戦争が日常で、この国だって明らかに戦時に片足つっこんだ(つっこみたくてたまらない)戦前の日々となっていて、なんでこんなことになってしまったのか? を考えるのにすごく遠くにいってしまった気のする昔のロシア・ソ連の映画を見つめて距離を測ったり肝を冷やしたりするのはとても大事で必要で、べつにそんなの抜きにしてもどれもすごくおもしろいから。戦争の暴力や不条理をどう見つめ、向き合い、描こうとしたのかの苦闘も含めた古典だから。

邦題は『一年の九日』、英語題は“Nine Days of One Year”。監督はMikhail Romm。

冒頭、核の研究施設で事故のようなのが起こって、教授っぽいSintsovは大量の放射線を浴び(でもひとり強がってて迷惑)、弟子の若い物理学者Dmitri (Aleksey Batalov)も同様に浴びてしまい、これ以上浴びたらしらんぞ、って言われる。頭はよさげでも軽薄そうな物理学者のIlya (Innokenty Smoktunovsky)は空港で恋人のDmitriのところに発とうとしているLyolya (Tatyana Lavrova)を口説いて引き留めて結婚しようって詰め寄るのだが、Lyolyaはぎりぎりで振りきってDmitriの方に向かって一緒になる。

当初のタイトルは”365 Days”だったそうで、一年間ずっと研究と日々の暮らしを行ったり来たりしつつ過ごしていくDmitriとLyolyaのふたりの季節ごとの一日を切り取ったのを9回分 – その中にはなんにもない穏やかな普通の日もあれば、実験が成功した日もあれば事故が起こったりIlyaが現れて波風がたったりの日もあり、流れとしてはDmitriの病状が悪化していって骨髄移植を受けるあたりまで。

核の研究施設の緊張などはあるものの、共通の高い目標を掲げたプロジェクトの遂行に打ちこむ研究者たちの群像を追っていて、そうするとこないだ見た”Oppenheimer”を思い起こしたりもする(男性ひとりの顔のポスターのビジュアルもなんとなく)。あの達成前と後の時系列いったりきたりの苦闘と同じようなことが、一年間の戻れない、戻せない一方向に流れる時間のなかで描かれる。 アメリカの反対側で原子力開発を競っていたソ連においても研究者たち - 国の威信をふつうに信じた若者たち3名が熱く魂を焦がして、Oppenheimerの努力は原爆に、Dmitriの努力(こちらは架空だけど)はチェルノブイリに行って、やがて沢山の人と大地を殺しました、とさ。


Trinadtsat (1937) - Тринадцать

↑のに続けて見ました。邦題は『十三人』、英語題は”The Thirteen”。 監督も同じくMikhail Romm。

スターリンがJohn Fordの”The Lost Patrol” (1934) - 『肉弾鬼中隊』をみてこういうのを作れ、って命じて作られた、と。(なんでわざわざあんな悲惨なお話を? ってふつうに思うわ)

戦いを終えて帰るべく中央アジアの砂漠を進む赤軍の10人に国境警備隊の司令官とその妻と地質学者の3人が加わって、砂漠のなかでの水を求める渇きとの闘いがきて、井戸らしいのを見つけたけど既に潰されていたり、ようやくそれらしき穴を見つけたと思ったらそこに隠されていた機関銃が2機見つかり、でも井戸は枯れ枯れで、でも何時間かかけてコップ一杯くらいはとれる、そんなでもないよりまし、って水のためにそこに陣取ると、向こうから敵らしき指令がやってきて、そこは俺らの井戸だからどけ、って脅してくる。

彼らは赤軍が1年攻めても倒せなかった恨めし憎っくき敵どもであることがわかって、200人規模だと(勝てるわけないだろ)。とりあえず援軍を求めて若い兵士と馬を砂漠の向こうに送りだし、掘りだした機関銃をセットして迎え撃とうとする。向こうも水が必要で疲弊しているはずだしかかってこい! って。この辺、迷いも決断の時とかもなくてあっさりしたもの。

初めのうちは機関銃でばりばり蹴散らすかんじだったのが、ちゅん、って弾にあたってあっけなく倒れる兵士がひとり、またひとりと増えていき、司令官がころりと倒れて、妻も銃を手にするが倒されて…

暑さで喉が渇いてううーってなっているところに敵が群れてきたら走って逃げるのも体力使うし面倒だし正常な判断もできなくなって、ああなっちゃうんだろうなー、っていうたんたんとした悲惨。かわいそうだけど、みんな虫けらみたいに一瞬で倒れて砂の中に、みたいな。

こんなふうに砂に埋もれて棄てられる犬死になっても国は映画にしてくれたり英雄ぽく見てくれるんだからみんながんばれ、ってことか…. やなこった。 みんな騙されちゃいかんぞ、って確認するために見る。

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