7.05.2022

[film] Une belle fille comme moi (1972)

6月28日、火曜日の晩、角川シネマ有楽町のFrançois Truffaut特集で見ました。 Bernadette Lafontの2本。

Les Mistons (1957)

英語題は”The Mischief Makers”、”mistons”とは”brats”みたいなものらしいので、「ガキども」のようなかんじだと思うのだが、邦題は『あこがれ』。 18分の短編。原作はMaurice Ponsの小説”Virginales” (1955)。

トリュフォーは(短編二作目だけど)これが自分のデビュー作と認定していて、Bernadette Lafontもこれがデビューとなる。冒頭彼女が自転車で颯爽とプロヴァンスの緑(モノクロだけど)のなかを抜けていって、それを5人のガキどもが追っかけていく。彼女には既に恋人のGérard Blain(彼らふたりは実際夫婦だった)がいて、そんなことわかっていながらも連中はテニスをしている彼らに張り付いてその横で猿みたいにわーわーしていたりするのだが、やがて彼の方は戦地に旅立ってそのまま亡くなってしまい、直接の関係もないけどガキども一同は.. っていうちょっと苦くて切ない夏の..


Une belle fille comme moi (1972)

英語題は”A Gorgeous Girl Like Me”っていうのと”Such a Gorgeous Kid Like Me” (US alt.) とか”A Gorgeous Bird Like Me” (UK alt.) とかいろいろあるようで、邦題は『私のように美しい娘』。原作はアメリカの小説家Henry Farrellの”Such a Gorgeous Kid Like Me” (1967) - この人は”What Ever Happened to Baby Jane?” (1960)なんかも書いているのね。音楽はGeorges Delerue。

冒頭、本屋に1年前に出版が告知された社会学者による「女性と犯罪」だったか.. そんなような本ってもう出た? って問合せがあり、いやまだだよ、っていう返事からこの著者である若い社会学者 - Stanislas Prévine (André Dussollier)が施設の受刑者に直接会ってインタビューをすべくテープレコーダーのチェックをしたりして、そこにゴージャスな彼女 - Camille Bliss (Bernadette Lafont)が現れる。

Camilleは梯子を外して父親を屋根から落っことして殺した罪その他で収監されていて、映画は彼女の語る半生伝ふうに、ものすごい勢いで彼女の周りにたむろして関わって好き勝手し放題のまままだ生きている男たち - 不死身のくるくる巻毛夫Clovis (Philippe Léotard)とか、怪しくいかがわしい歌手で、やるときにカーレースの轟音のレコードをかけるSam Golden (Guy Marchand)とか、すけべいんちき弁護士Murene (Claude Brasseur)とか、40歳童貞の害虫駆除業者Arthur (Charles Denner)とかとのヒストリーが語られて、それはそれはメンズワールドにおけるアバズレさんの疎外と抑圧にまみれた - でもひょっとしたらあれこれ盛っているかもしれないけど - の遍路で、でもうぶな社会学者Stanislas氏にはなにやら響いてしまったらしく、彼女のことを正しく理解して周辺社会ごとあるべき場所に持っていくことができるのは自分だけなのだ、って思い込んで、あきれかえる女性アシスタント(Anne Kreis)も置いてひとり突っ走って、気がついてみれば彼女と立場が反転して自分が獄中にいることになってきょとん。獄中で論文いっぱい書けそうでよかったね。

これ、”The 400 Blows” (1959) - 『大人は判ってくれない』でやはり判って貰えないまま収監されてしまうAntoineだってこんなふうにちゃんとケアされていたら - それが映画っていう説 - っていうのと、その対象が女性になるとこんなにも世の中が違ってみえるっていうのと、それがものすごくいきいきとした明るく凶暴な姿となってかっこいいのってこんなにもかっこよくて素敵だからこうありたいよな、って。自分の周りにやってくるのはクズみたいな男ばっかしだけど、自分はやりたいようにやるし容赦も妥協もしないよ、って彼女のがなる調子外れのパンクとしか言いようがない歌などを聞いててしみじみ。

これは爆裂巻きこみ/巻きこまれ型コメディだが、これと同じことを平熱やや低めのまま淡々とぶちかまして周辺一帯を焼け野原にして異形のかっこよさを放つのが今週末公開の”Wanda” (1970)だから。どっちも問答無用、とにかく見るべし。

Stanislas役のAndré Dussollier - ロメールやアラン・レネの作品によく出てくるおじいさん - はこれがデビュー作だったのね。
でもまあBernadette Lafontがもれなくとんでもなくフランスの女優さんしてて目を離すことができないのときたらー。

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