7.27.2022

[film] Benedetta (2021)

7月15日、金曜日の午後、MUBIで見ました。
どうでもいいけど、これのすぐ後に見た”Minions; The Rise of Gru”でヌンチャク尼さんが出てきたのでおおー、ってなった。

監督はPaul Verhoeven、脚本は彼とDavid Birkeの共同、Judith C. Brownのノンフィクション - “Immodest Acts: The Life of a Lesbian Nun in Renaissance Italy” (1986) - 翻訳は『ルネサンス修道女物語 聖と性のミクロストリア』というタイトルで出ているが絶版ぽい - を緩くベースにしている。時代劇とは言えカトリック内部のスキャンダラスな下半身ネタがいっぱい出てくるので、2021年のカンヌでプレミアされた後、NYFFの上映時には抗議行動が起こり、シンガポールとロシアでは上映禁止となった。

モデルとなったBenedetta Carlini (1590-1661)は実在した修道女で、この映画で描かれたようなことはあったようななかったような、特に晩年のほうについてはそんなに記録も残っていないらしい。

Paul Verhoevenとしては”Elle” (2016)に続くもので、男性的な権威(みたいないろいろ)が女性を散々いたぶって踏んづけて痛めつけたあと、傷だらけになりながらも負けずに立ちあがってかっこいいったらない彼女たちを正面に据えるいつもの。

17世紀、イタリアのトスカーナのペーシャの修道院に両親に連れられて幼いBenedettaが修道女になるべくやってくる。その途上で母親の首飾りを盗もうとした盗賊たちに彼女が不思議な力を行使する - 盗賊の目に鳥の糞 - ところが描かれる。彼女は神と向きあう日々の修練にもとっても前向きな様子。

その18年後、厳しい修道院長Felicita (Charlotte Rampling)のもとで成長したBenedetta Carlini (Virginie Efira)にはイエスの幻影とかイエスの出てきてなんか言う夢をみたり妙なことが起こっていて、Felicitaはいちいち動揺しつつもなんだこいつは? になってて、ある日父親に虐待されて修道院に逃げこんできた娘 - Bartolomea (Daphne Patakia)を匿って、彼女はそのままBenedettaに仕えることになるのだが、ラフでワイルドなBartolomeaの面倒を見ていくうちにイエスが出てくるエロティックな夢を見たり昏睡状態になったり手や足に聖痕が現れたり男声で怒鳴ったり、その事象を調査をしにきた当局の目の前でもそれは起こって、彼女を貶めようとしたFelicitaの娘は自殺、Felicita自身も降格してBenedettaが修道院長になる。

他方で、Bartolomeaに導かれて引き摺られるままにBenedettaは愛欲の沼におちていって止められなくて、その様子を壁の向こうから見ていたFelicitaはローマの教皇庁に赴き、傲慢で欲深いNuncio (Lambert Wilson)に訴えると、NuncioはペーシャにやってきてBartolomeaを拷問に、Benedettaを裁判にかけて..   黒死病(ペスト)がまん延して彗星の尾が空にあってこの世の終わりのかんじがすごくて、最後の方のぐさぐさでなにもかも剥がされたり燃やされたりしていく終末感ときたらすごい。

汚れたこの世から隔絶してきれいでなければならない修道院に暮らす修行尼がみんな(でもないか)やらしいことしたりそれをのぞいていたり、権力欲の塊で蹴落としたりパワハラみたいなことばかりやっていたり、みんな地獄に落ちるぞ、って映画のなかではペーシャの町全体がだんごになって地獄に向かって転がり落ちていくようなのだが、それでもBenedettaは生きぬこうとする。”Elle”の、とてつもなくかっこよかったIsabelle Huppertさまのように。

全体として超常現象みたいなのから疫病にエロ・下ネタ、下克上までいろんなことが次々に起こっていくので目が離せないのだが、あまりに味噌も糞もぶちこみすぎのかんじもあって、そこを痛快って思うとこと、ちょっとこれは、って引いてしまうとこがあり、ややついていけなかったかも。 昔の日本のB級ポルノみたいで、絶賛するひとはしそうだけど。

もっと軽く、『神の道化師、フランチェスコ』(1950)みたいにしてもよかったのに、とか思ったけど時代が時代だからしょうがないのか。 Felicitaのどす黒い情念とNuncioの腹黒の絡み - Charlotte RamplingとLambert Wilsonのおっかないこと - と、聖なるBenedettaと俗なるBartolomeaの愛が対照を描かないままぐだぐだに堕ちていくところがなんか。 特に最後のほう、画面が明るすぎるのとかも(あれは彗星のせい?)。

終わってから、BenedettaとBartolomeaは、べつに異様なことをしているわけではないのにな、はて? ってなるかも。

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