8.14.2019

[theatre] The Starry Messenger

10日の土曜日の午後、Wyndham’s theatreで見ました。最終日のマチネになんとか間にあった。

原作Kenneth Lonergan、演出はSam Yatesによる演劇、休憩挟んで2時間50分。

初演は2009年のOff-Broadwayで、この時もMatthew Broderickが主演している。Kenneth Lonerganの舞台は2014年、NYで”This Is Our Youth” (1996)を見て以来のー。

購入したプログラムには、かつてNY自然史博物館の一部で、今はRose Center for Earth and Spaceと名前を変えているHayden Planetarium (1935–1997) についてのKenneth Lonerganによるエッセイがあり、高校の同窓生だったMatthew Broderickとも共有していた宇宙に対する憧れや希望(子供の頃にApollo 11が飛んだ)をここから育んでいった思い出が語られ、この作品はこの時代、この施設に対するトリビュートでもあるのだと。

52歳のMark (Matthew Broderick) はプラネタリウムに併設されたレクチャールームで、社会人初心者向けの天文学コースの教師をしていて、教室には何を教えても頓珍漢な質問を投げて来る困ったおばさんとか、やたら評価シートをちらつかせてコメントしてくる嫌な若者とか、いろんなのがいる。 この他に出てくる場所は;

・Markの家のリビング - 妻のAnne (Elizabeth McGovern)が出てきて、クリスマスにNYにやってくる親戚のアテンドだなんだの確認でひたすらうるさい(Markからすると)。あと姿は見せないけど部屋に籠って轟音でエレクトリックギターの練習をしている息子がいる。

・Markの教室に現れたプエルトリコ系のAngela (Rosalind Eleazar)の家のリビング。最初彼女は天体が好きらしい息子用のクラスはないかを尋ねてMarkの教室に来て、クラスはないけど興味があるのだったら始業前に簡単なレクチャーをしてあげようって、それをきっかけにふたりは親密になって、ここで会ってお喋りするようになる。

・病室のセット – ガンでベッドから動けない患者Norman (Jim Norton) がいる。たまに見舞いにくる実娘とはずっと険悪な関係で、看護婦の資格を取るために週末にここに来ているAngelaと仲良くなって、更に実娘からは疎まれたり。

舞台セットは教室を含めた4つの場所をぐるぐる回転していって、その真上にはいつも天球の星たちが瞬いているの。

Markは相手の言うことは文句でもなんでも辛抱強く聞いて、誰に対してもいつも機械のように礼儀正しく返すのだが、たまにそんな自分の態度に自分で苛立ったりしている。Angelaも同様に、常にいろんな人の受け皿のようにして生きていることにうんざりしていて、そんな2人が都会の隅っこで互いの星を見つけて、だがそれもAngelaの息子がフィラデルフィアに父親に会いにいった際に銃撃に巻き込まれて突然亡くなってしまうと様子が変わってきて…

星に願いを、とか、星はなんでも知っている、とかいうちゃちなおとぎ話ではなく、扱われる題材はいつものKenneth Lonerganのあまりぱっとしない人達のぱっとしないアンサンブル(不条理に近い突然の死によって人と人が向きあわざるを得なくなる、という点では”Margaret” (2011) にちょっとだけ似ている)なのだが、でも、それでも星が、天体がそこにあるってなんなのだろう、どういうことなんだろう?  というのがMarkが天体を見つめる仕事をしながら自分にも生徒にも問いてきたことで、だから彼はThe Starry Messengerなのだと。そしてプラネタリウムはそのメッセージを司る神殿であり教会なんだ、だからあそこにいくとすごい勢いで眠りに落ちちゃうんだ、とか。

ほんとにさあ、毎日だるいきついはきそう、とか言いながら仕事したりやんなきゃいけない面倒なことはあれこれ山積みなのに、なんで星は何万光年とか太陽の数千倍とかそういうスケールで勝手に動いたり生成消滅とかしていくんだろう、勝手に動くのはそっちの勝手だし比べるもんでもないのだろうけど、なんでいる/あるのよ? って考え始めると止まらない。そこにはなんの謎も不思議もない、現実逃避でも乖離でもいいけど、なんでこんなことになっちゃっているのか。なあ。(しーん)

Matthew Broderick が舞台で少し背を丸くして立ちつくす姿は本当にすばらしくて、役柄としてはFerrisというよりCameronの方だし、あるいはこないだ見た”You Can Count On Me” (2000)の銀行マンBrianにも近い。Matthew BroderickはMatthew Broderickなんだねえ、って。

これ、そのまま映画にしてもぜんぜんよいと思うのだが。ぜんぜん壮大じゃない”Interstellar” (2014) みたいなやつ。

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