8.07.2019

[film] Blonde Venus (1932)

1日木曜日の晩、BFIで見ました。 月が替わって始まった8-9月のBFIの特集 - ”Cary Grant: Britain's Greatest Export”からの最初の1本。 今回の目玉は”Notorious” (1946) - 『汚名』の4Kリバイバルで、見たことがあるのも結構あるけど、できるだけ追っかけていきたい。

監督Josef von Sternberg – 主演Marlene Dietrichで『上海特急』に続く作品。 -   邦題はそのまま『ブロンド・ヴィナス』。

冒頭、ドイツの森のなかにある池で女性たちが裸で泳いでいて、そこにアメリカ人の学生たちがやってきて覗いて、泳いでいたHelen (Marlene Dietrich)はあっちに行ってください、と追い払おうとするのだが学生のひとりNed (Herbert Marshall)はやだよ、ってやりとりが始まって、その数年後、水面を映していたカメラはバスタブでばしゃばしゃしているふたりの息子 Johnnyの脚にジャンプする。

家族3人はとても幸せに暮らしているのだが、Nedは仕事でラジウム中毒になって、医者が言うにはよい治療があるけど、それはドイツで6ヶ月間かけて$1500必要、と言われ、Johnnyが寝た後でふたりで話すとHelenはあたし昔みたいに歌って稼ぐから、と言い、Nedはよい顔はしないのだがHelenはキャバレーでゴリラの被り物をしたりしながら歌い始める。

と、そこの常連でお金持ちのNick Townsend (Cary Grant)がHelenに目をつけて、Helenも彼の羽振りがよいことを聞いていたので迫っていって、歌っているのは夫の治療費のためで子供もいて、ていう事情を話してもNickは治療費を出してくれるからそれに甘えてNedには出演料を前払いして貰ったとか嘘をつき、彼がドイツに旅立ってからJohnnyとふたりでNickの世話になって楽しく過ごしたりする。

で、予定より早く治療を終えてがらんとした家に戻ってきたNedが金の出どころも含めて全てを把握すると当然激怒してもう一緒には暮らせないJohnnyを置いて出て行け、というので息子を取られたくない彼女はJohnnyを連れて旅に出て、南部の酒場で歌を歌ったり日銭を稼ぎつつ転々と逃げていくのだが、やがて追っ手に見つかってJohnnyとは引き離され..

全てを失って開き直った彼女は本腰いれてばりばり歌い始めて、パリでも成功するのだがやはり気掛かりなのはJohnnyのことで、それを察したNickは..

ショービジネスのお話しのようで夫婦愛の話のようで辛い子連れ逃亡旅の話のようで、いろんな要素があるなかではやはり家族愛のこと、になるのだろうか。

ちょっと暗いけど正直者のNed - Herbert Marshallと明るくさばさばしたHelen - Marlene Dietrichが最初に出会ったときのやりとり(ふたりはどうやって出会って結婚したの?ってJohnnyが何度もせがんで聞く話し)が底に流れていって、最後のお別れにってHelenがJohnnyにハイネの詩を詠んであげるシーンにメリーゴーランドとかが被さってぐるぐる回り始めるとなんか魔法、というか騙されているんじゃないか、とか。

そうすると最初は胡散臭い若い成金やくざにしか見えなかったNickも、あんたそんなによいひとでいいの? そんなよいひとなのになんで大金持ちなのさ? って。

ここでのCary Grantはまだぴかぴかのぱりぱりで、なのに得体のしれないオーラは既に滲んでいて、そんなことよりMarlene Dietrichだねえ。子連れ逃亡の気疲れでぼろぼろなのに、でも歌うたう時はぱりっとして、あれもこれも愛と歌に生きているから、ただそれだけのことよ、ってさらっと言ってしまう、そういうかっこよさがあって、で最後はほんとに愛の言葉を囁くだけでぜんぶ元に戻っちゃうんだからすごいわ。

やっぱり最初のとこ、池で裸で泳いでいたのはヒトじゃないなにかだったに違いない、と。

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