8.15.2019

[film] Blinded by the Light (2019)

11日、日曜日のお昼、CurzonのMayfairで見ました。観客は地元の老婦人達が4-5人程。

監督は”Bend It Like Beckham” (2002)のGurinder Chadhaさん。実話ベースのお話し。

87年のLuton – Londonから北に電車で1時間くらいの郊外 - に高校に入ったばかりのJaved (Viveik Kalra)がいて、パキスタン移民の子で頑固で厳格でどうにもならない父との衝突、サッチャー時代のきつさしんどさ、などなどを引っかぶって悶々としながら、日々の不満とか怒りを詩とか文章に書き貯めてて、やがては文章を書く仕事につきたい、ここから抜けだしたい、とぼんやり思っている。

ある日クラスメートから「これを聴け!」って”The Boss”– Bruce Springsteenの”Darkness on the Edge of Town” (1978)と”Born in the U.S.A.” (1984)のカセットを渡されたので聴いてみると、全身に電撃が走ってこれだ! になって、以降はミュージカル風味も交えながら、Bruceの歌詞 - 字幕で画面上に現れたりする - に導かれるようにして、自身の夢と挫折、クラスの女の子 Elizaとか幼馴染とのこと、父親や家族、都会と田舎の現実、コミュニティにある差別や貧困等々と向きあって、自分の部屋もファッションもBruce一色になって、いろいろがんばってよかったね、になるお話し。
ぜったいこの後にミュージカル化狙っているよね。

原作はジャーナリストSarfraz Manzoor氏の自伝なので(Bruceの名にかけて)嘘はないのだろうし文句のつけようがないのだが、ここまでBruceすごい! すばらしい! がくるとなんか言いたくなることはなる。

別にBruce Springsteenは成長期の青少年に有害だとか意味ないとか言うつもりはなくて、彼は間違いなくBob DylanやNeil Youngと並ぶ現代アメリカ(大陸)のvoiceなのだ(から聴くべし)と思うし、自分だって70年代の終わりにはパンクと並べて聴いていたのだし、大学に入って新入生向けの人文の教科書に"Darkness on the Edge of Town"(..たしか)の歌詞が訳されていたのを見たときには盛りあがったりもしたし、全能感溢れてやまない思春期の男子にBruce Springsteenモーメントが訪れるであろうことはいくらでも想像できるし、この映画はそれをやや類型的ではあるもののきちんと捕まえてストーリーに落としこんでいると思う。

でも彼のライブでいつも地鳴りのように響きわたる男共の声、”Born in the U.S.A.”が簡単にレーガンのキャンペーンに利用されてしまったこと、85年の彼の代々木公演前後に湧いてでた勘違い「ロッカー」の数々 - 思いだしただけで吐きそう – を考えると、彼が歌ってきた人々や世界について、彼の示す「道」や「光」が向かうところ照らしだすものについて - 本人は十分わかっているのだろうが -  なんで男ばっかりがあんな幼稚に動物的に熱狂してしまうもんなのか、少しは反省してみたらどうだろうか(って言うと「うるせー」ってバイクに乗ってどっかに行っちゃうのよね)。  このかんじはU2とかNick Caveにもあるかな、どうかな?

あと、87年の高校の校内放送ではCutting CrewとかBrosとかCuriosity Killed the Catが流れていたのかー、って。

Marianne & Leonard: Words of Love (2019)

感想書こうかどうしようか悩んでいたNick Broomfieldによるドキュメンタリーで、5日の晩にCurzonのBloomsburyで見ました。

Leonard Cohenの”So Long Marianne”とかで歌われているMarianne IhlenとLeonardが60年代初、ギリシャのイドラ島で出会って恋におちて、その後Leonardは作家から歌手へ、そこから世界的なスターになってふたりは離れ離れになってしまうのだが、MarianneはずっとLeonardのことを亡くなる直前まで想っていて、死の床にあった彼女に宛てた手紙(「あとちょっとで追うから..」で実際数ヶ月後に彼も)とか泣けるのだが、ふつうに会いにいってあげればいいのに、って。

70年代の彼がどれだけもてて派手にやっていたのかはライブフィルム”Bird on a Wire” (1974)なんかからも窺えるのだが、すばらしい詩と音楽を残したから許されるってもんでもないんじゃないかしら? ってこれ見て少し思った。大人のふたりの間のことだし、ふたりとももうこの世にいないからわかんないけど、さ。

いじょう、70年代音楽から(今になって)見えてくる「オトコ」像について思ったこと。

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