8.16.2019

[film] His Girl Friday (1940)

10日、土曜日の晩、BFIのCary Grant特集で見ました。Howard Hawksによる極め付きの古典。

これは大昔に、たしか三百人劇場で見て、昔の映画ってこんなにおもしろいんだーと目を開かせてくれた1本で、コメディクラシックなので英米では割としょっちゅう上映されているのだが、あまり行く気にならなかったのは、ものすごいマシンガンお喋りの応酬が延々続くのでついていけなくなっちゃうよね、という懸念があったから。 でもそんな心配いらなかった。人の言うことをちっとも聞かない人達が巻き起こすどたばたで、言葉よりも体がつんのめって先に転がっていく、それを追っかけていくのに字幕はいらない。

原作はBen HechtとCharles MacArthurによる戯曲”The Front Page”で、31年に同タイトルで映画化もされている。原作の真ん中ふたりの男性設定を男性 & 女性 – しかも別れた夫婦に変更するにあたり、最初にキャスティングされたのはCarole Lombardで、でも彼女はギャラが高過ぎてだめで、他にはJoan Crawfordなんかも候補にあがったらしいのだが、最終的に”The Women” (1939)に出たばかりのRosalind Russellになった、と。どれになってもすごい!なのだが、結果的にあの叩きつけていくような喋りができたのはRosalind Russellだけだったのではないかしら。

The Morning Post紙の編集者Walter Burns (Cary Grant)のところにかつて一緒に組んでいた記者で別れた妻のHildy (Rosalind Russell)がやってきて、あたし保険屋のBruce (Ralph Bellamy)と結婚してAlbanyとかで静かに暮すからさよなら、ていう。それがおもしろくないWalterはたまたま転がっていたネタ - 冤罪で投獄されて絞首刑が迫っている件 – をこんなネタHildyにしか書けないやつだなあ、って振って煽ってみるとHildyの魂にめらめら火が点いて記者部屋に籠っているとそこに当事者のEarl Williamsが脱獄して助けを求めてきて..

その間、Walterが裏で手をまわして何の罪もないBruceを何度も刑務所送りにするとか、その火の粉が彼の母にも飛んでいくとか、突然窓から飛び降りてしまうEarlの婚約者の娘とか、絞首刑の裏にあったきな臭い行政とか選挙のこととか、(元)夫婦の意地の張り合いから転がってなぎ倒されていくより大きな世界、だけどそれって本当にそんなにでっかい大層なことなのか、みんな自分のFront Pageしか見ないし食べないし、ぜーんぶ肘とか意地とか見栄の追っかけっこじゃんか、みたいに見るのはあんま楽しくなくて、単に互いの面倒が拗れて別れた夫婦がよりを戻すには、こーんな大騒ぎがあって、でもこいつらそのうちまた同じこと繰り返すよ、っていう笑い話でよいの。ふたり共がこっちを向いてどつきあいながら喋り倒していくとそのスイングときたら、極上の漫才以外の何ものでもないし、Rosalind Russell、すごくかっこいいし。

配られたノートにはRosalind Russellの自伝からこの映画に関わったHoward HawksとCary Grantとの思い出があって、それ読むとみんなすごすぎて尊敬しかない。どいつもこいつも。

WalterとHildyとの役を逆に置いてみたらどうなるだろう? って少し想像してみるとぜんぜんWorkしそうにないことがわかる。 ここも絶妙に計算されていて、その上であのスイングなんだなー。

Sylvia Scarlett (1935)

11日、日曜日の午後にBFIのCary Grant特集で見たやつ。これは2016年の初め、シネマヴェーラのGeorge Cukor特集で見ている。
邦題は『男装』。

この日はこの後にGeorge Cukorの”Camille” (1936) – これはCary Grant特集とは別 – を見て、翌月曜の晩は、”Holiday” (1938)を見て、Cukorの3連になったので、なんかとっても幸せだった。

フランスに暮らすSylvia Scarlett (Katharine Hepburn)と父のHenry (Edmund Gwenn)は母を亡くしてお金もないので英国に渡ることにして、ついでに髪をばっさり切って男の子Sylvesterになることにする。 で、向こうに渡るフェリーで詐欺師のJimmy (Cary Grant)に引っかかって母の遺したレースを持って行かれたので頭きて突っかかり、でも適当に丸め込まれてなんだかんだみんなでキャラバン組んで見世物をしていくことになるの。

なかなか落ち着かずフックの見えないどさまわりの話で、Rom-comとしてもとりかへばや物語としてもあんまぱっとしないのだが、元気いっぱいのKatharine Hepburnはすばらしいの。 あとCary Grantがコックニー訛りの英語喋ってて、それがはまっててちょっと新鮮、くらい。

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