1.23.2019

[film] That Hamilton Woman (1941)

19日、土曜日の夕方、BFIのAlexander Korda特集で見ました。
監督はKorda自身で、邦題は『美女ありき』(..よくわかんない)

これもこないだの”Knight Without Armor” (1937)と同じく大陸に渡った英国人を扱った大河ドラマなのだが、主人公のEmma Hamiltonについては、2017年の春にNational Maritime Museumで見た展示 - “Emma Hamilton: Seduction and Celebrity”がとても印象に残っていたので、なんとしても見たかった。”Based on true events”なんてもちろん出ない。英国人みんながようく知っているお話しだから。

フランスのカレーの波止場でお酒を万引きしようとした薄汚れた皺皺の老女が捕まって牢屋に入れられて、横にいた婦人にぼそぼそと過去を語り始める、というのが冒頭。

英国でCharles Francis Grevilleの愛人だったEmma (Vivien Leigh)はCharlesの叔父でナポリの英国大使のWilliam Hamilton (Alan Mowbray)のところに母親と一緒に送られて、実はこれがCharles の借金のカタだった、ということを知ってEmmaは嘆き悲しむのだが、彼女はWilliamと結婚してEmma Hamiltonとなり、Williamが彼女に十分な教育とか豪勢な暮らしを与えると彼女はみるみる輝いて社交界でもセレブとして頭角を現すようになって、そこでナポレオンとかと戦争をしているHoratio Nelson (Laurence Olivier)と出会ってときめいて、でも彼はすぐに戦地に行っちゃって、次に会ったときに彼は右目と右腕を失ってたりしているのだが、でも会うたびに愛は燃え広がってしまって戦争でも鎮火できなくなるの。

その後Nelsonは英国の英雄となって凱旋して、世間に注目されることも多くなり、彼には妻がいて彼女には夫がいて、でもそんなの関係ないわ、って互いに言うのだがやがてトラファルガー海戦の件が来て、Nelsonは受けて立つ、って出て行っちゃって、それで…(この後の海戦のシーンは音も火花もなかなかすごくて、オスカーのBest Sound, Recordingを受賞している)

配布されたノートには当時ハリウッド進出に向けて奔走していたKordaと、同様に当時米国で財政面で苦労していたVivien LeighとLaurence Olivier、この映画で第二次大戦での英国の戦意高揚を狙いたいWinston Churchillとの間でいろんな駆け引きがあった末に立ちあがったことが書いてあっておもしろいのだが、でもその割にあんまプロパガンダ臭はなくて、どんな境遇にあっても愛を貫こうとしたふたりのラブストーリー&メロドラマになっているのはよいの。 先のNational Maritime Museumの展示もいかにEmmaがきらきらすごかったか、Nelsonの死後に彼女がかわいそうだったか、が中心だったので、このふたりのお話しは英国人みんなに愛されているんだなあ、って。あと、あの展示にあったEmmaの肖像画は、映画のなかにも出てきた。

それにしてもVivien Leighの衣装(by René Hubert)も含めた輝きの光量ときたらとんでもなくすごくて(撮影はRudolph Maté)、これだけでうっとりしていられるのと、それ故の冒頭とラストの凋落ぶりがかわいそうすぎて泣けて、その割に見たあとの感触はなんだか軽くてよかった。大河ドラマのお手本みたいにバランスよく整った構成と展開だったとおもう。

これ、いまリメイクするとしたら主演のふたりは誰になるかしら?

KordaとChurchillの関係については、”Churchill and the Movie Mogul” (2019)ていうドキュメンタリーが明日(24日)から公開されるもよう。 見なきゃ、だよね。

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午後にJonas Mekasさんの訃報をきいた。

こんな凍える冬の日にはいちばん、ぜんぜん聞きたくない一報で、ずっと泣きそうだった。
彼が自分に与えてくれたものの大きさからすれば、きちんと別欄で括って書くべきなのかもしれないけど、なんか彼は旅に出ているだけなんじゃないか、って。  来年くらいに天国からの旅日記とかYou Tubeにひょっこりあげてくるんじゃないか、って。

前にも書いたが、大学の時に四谷のイメージフォーラムで見た”Lost, Lost, Lost” (1976)が全てをひっくり返してくれた。 映像は、映画はこんなにも自由にめちゃくちゃに世界を捉えられるのだと、世界を旅できるものだということを知った。 彼が見たように映画を、世界を見たいな、という思いが自分の旅の始まりで、それがどんなに果てのない、おそろしい、しょうもないものであるか、いいかげんにわかれよ、とも思うが、でも止めちゃいけない気がする。

Lost, Lost, Lost, Lost, Lost, Lost, Lost, Lost, Lost, Lost - ぐらい行かないとわからないのだろう。きっと。  彼の死で頭のなかにこの言葉が溢れかえっているけど、ほんとうに全てが失われたときって、いったい何が見えるのだろう。 

そしてMekasさんは、いつもの帽子にカメラを抱えて、かの地で、何を撮っているのかしらん?
そこって、Williamsburgにたどり着いた時のようなかんじ?
そうそう、彼が教えてくれたBrooklynのイタリアン - Roman's、こんどまた行かなきゃ。

本当にありがとうございました。 またね。

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