1.11.2019

[film] La signora senza camelie (1953)

3日の晩、BFIで始まったMichelangelo Antonioni特集 –“Michelangelo Antonioni: Confronting the Modern World with Style” -  で見ました。4Kリストアされた”The Passenger”のリバイバル公開を中心にBFIでは初期作品や短編も含めて網羅していくみたいで、昨年のベルイマン特集と同じようなのかんじなのだが、昨年は出だしで遅れて見逃してしまったのが結構あったので今年はミスしないようにしたい。

のだが、Antonioniの作品ってどれも100分以上あってなかなか大変そう。 愛の不毛とか、モダーンワールドをさんざん生きてきたしわかっている(つもりだし)。(でもたぶん、ね)

英語題は”The Lady Without Camelias” – 個人的には昨年末の「椿姫」から続いている椿の女性シリーズで。
これ、日本公開はされていない?

Clara Manni (Lucia Bosé)はお店の売り子から映画女優になって、でもあまりぱっとしないのでプロデューサーが次はもうちょっとエロくて大衆にアピールするやつをやろう、ってスクリーンテストをして、これはいいかも、になるのだがそれを横で見ていた大物映画監督/プロデューサーのGianni (Andrea Checchi)が確かにすごくいいけど、俺彼女と結婚することにしたわ、って結婚しちゃって(Claraはびっくり戸惑い)、そしたらGianniは彼女に映画に出て他の男とやらしいことしてほしくないから、って自分が監督するジャンヌ・ダルク伝の主演に抜擢したらそれが大コケして、Claraはもう我慢できなくなってGianniと別れて自分の道を歩こうとするの。

男社会依存の筋書きだのメンツだのに翻弄される「椿」の伝説から離れて - なんでGianniの言いなりで簡単に結婚しちゃったかなあ? はあるにせよ- 自分は主役じゃなくてもいいから映画をやりたいんだ、って決意して前に出ようとするClaraのやや震えて怯えつつ、でも静かにふてくされた眼差しが最後に残って、よいの。(トーンとしては落ちぶれちゃったけど、しょうがないよね、ふうなのだけど)

女性映画としてとても素敵だと思ったけど、男性から見ればなんで言うこときいてくれないのかしらるるるるー、のお話しでもあり、ざまーみろの寒々しさが気持ちよかったり。

Cronaca di un amore (1950)  -  Chronicle of a Love Affair (or Story of a Love Affair)

これもAntonioni特集から、2日の晩に見ました。Antonioniの長編監督デビュー作。  邦題は『愛と殺意』だって。

ミラノで私立探偵のCarloni (Gino Rossi)が裕福な実業家Enrico (Ferdinando Sarmi)から7年前に結婚した妻Paola (Lucia Bosè)の結婚前のあれこれを調べてほしい、と依頼を受け昔の写真を持って彼女が暮らしていたフェラーラに行く。 Paulaと写真に仲良く写っていた女友達のひとりGiovannaが結婚直前にエレベーターで不審な死を遂げたことを聞いていろいろ調べ始めるのと、そのことがGiovannaの婚約者だったGuido (Massimo Girotti)と(彼とつきあっていたらしい)Paolaに伝わって彼らにやばいぞこれ、って過剰な憶測とスローなパニックを引き起こしていって、それがやがては …

基本は探偵が写真と聞きこみからじわじわ過去を暴いていく、というノワール仕立てなのだが、暴かれてくる事実が思ったほどすごくないのとその結果として引き起こされる出来事もあんますごくなくて、犯罪とか悪の闇といったノワールの基本が前に来なくて、え? こんなもん? なのだが、こういうふうに重ね合わせされ折り畳まれた因果の総体を”Chronicle of a Love Affair”、と呼んでみよう、というのはとってもよくわかるし。

男たちのどこから湧いて出るのか不明の独占欲と猜疑心のしょうもなさ – これは”The Lady Without Camelias”にもあったけど – がとっても意味わかんなくて不毛で気持ちよくないのと、どちらにも主演しているLucia Bosèが時折見せるどうしろってのよどうもなんないわよ、みたいな白々しい表情がモノクロのコントラストにはまっていて素敵なのだった。

あと、愛してる、とか、愛してくれ、とか特に言わなくても愛は空気みたいに当たり前にそこらじゅうにあって、気がつけば既にみんなじゃぶじゃぶ、ていうのはやはりイタリアンだからだろうか。

あと、今から約70年前のミラノの街並みは、こないだ行った時に受けた印象とそんなに違っていないようなかんじがしたのは気のせいかしら。 (よいこと)

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