1.21.2019

[film] Knight without Armor (1937)

11日の金曜日の晩、”L'eclisse” (1962) に続けて見た2本目、BFIのAlexander Korda特集で見ました。
監督はしていないけどKordaのプロダクションの製作。邦題は『鎧なき騎士』。

Hitchcockの”The 39 Steps” (1935)の製作中にJames Hiltonの原作小説を読んだMadeleine Carrollが、横にいたRobert Donatに、あなたこれの映画化権を買うべきよ(それであたしたちが主演しましょ)、とそそのかしてRobertはそれに乗って、買い取ったそいつをKordaに渡した。 そういうわけで主演男優はRobert Donatで決まりだったのだが、女優の方は肝心のMadeleine Carrollが予定が入っていてだめ、次のチョイスのMyrna Loyも同様にだめ、でKordaが引っこ抜いてきたのがMarlene Dietrichだったのだと。なんとまあ。
(他にもKordaはRobertに£30,000払ったがいろいろ値切ってきたとか、Marlene Dietrichは原作を読んで女性のパートが少ない男小説だって原作者に注文をつけたけど無視されたとか、Robertは喘息がひどくて替わりにLaurence Olivierを起用する手前まで行ってたとか、上映前に貰ったペーパーにいろいろ書いてあっておもしろ)

1913年の英国の競馬場でロシアの伯爵嬢のAlexandra (Marlene Dietrich)と通信社のロシア特派員であるAinsley (Robert Donat) はすれ違ったりしているのだが、Ainsleyは帰任間際に諜報部からの命を受けてロシアのパスポートを渡されて、はじめは取材の延長くらいの感覚でいたのだがいきなり革命だのなんだのの洗濯機に巻き込まれて、シベリアに送られて、形勢が逆転すると人民委員となって、そこで身ぐるみ剥がされたAlexandraと会って、逃したり逃げたり – ひとが一杯いるところに着いて助けを求めると勢力がころりと変わっていてあんぐりで、どっちにしても一歩間違えたら捕まって銃殺の日々をぬいながらふたりで国中を転々としていく。

みんながうっとりする貴族の令嬢ドレスから囚人服まで、バスタブに浸かってぴっかぴかになったと思ったら死人から剥いだ服を着て落ち葉のしたに埋められたり、Alexandraの着せ替え百態とスクリューボール & どなどなロードムービー展開がすごくて、Alexandraを慕う兵士が彼女を逃して自殺しちゃうようなとこもあるけどそういうのも含めて楽しめてしまったりして、戦争大河メロドラマの盛りあげかたとしてはどうなのかしら、と思ったけど、でも実際にはあんなふうにいかに革命の火事場でうそついて凌いで生き延びれるかがすべてだったのだろうし、毅然として涙ひとつ見せないAlexandraも貴族ってそうこなくちゃね、でよかった。

最後はもういいかげん、どう考えてももうだめだろ、のどん詰まりになるのだが、それでも.. になってしまうのはご都合主義とかではなくて、ふたりともものすごく強運だから、そういう星の下だから、としか思えない。

Marlene DietrichとRobert Donatのふたりはとても絵になって、列車のなかでAinsleyがBrowningの詩を諳んじて、AlexandraがPushkinでそれに応えて、そうやって交わされる目配せを通してふたりの仲が解けていくとこなんてしぬほど素敵で、文学ってのはこういうときのためにあるんだわかっとけぼけ、って誰か(誰?)に叫ぶ。(撮影の合間にRobertはMarleneに詩の講義 – Shellyとかの - ばかりしていたのだそう - これもペーパーに書いてあった)

ころころ情勢が変わってその度に大量の人々がばたばたと銃殺されていくロシアについては、こないだ行ってとてつもない寒さに凍えてきたばかりなので、そういうのが起こってもおかしくない土地かもねえ、って思った。

それにしても寒いよねえ。

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