9.07.2017

[film] Salem's Lot (1979)

2日の土曜日の晩、BFIで見ました。 35mm, 186分版。

今週末の"IT"の公開に合わせてBFIで"Stephen King On Screen"ていうStephen King原作の映画特集と、"Stephen King’s Picks"ていうKingがPick upしたホラーの古典映画の特集が始まった。

何回か書いているけど、もともと怖がりなので怖すぎるホラーはだめだよう、だったのだが、もういいや、見る、にした。
理由はいくつかあって、ホラーなんかよか今の日本とか日本ばんざいしてる連中の方がよっぽど気持ち悪くて怖いわ、とか、もういつどんなふうにやられて橋の下とか瓦礫の下とか地面の下とか木っ端みじんとかわかんない時代だしな、とか、それにもう歳なんだしこんなんで怖がっていたってしょうがないだろ、とか、そういうので、そっちの気分にえいっ、て切り替えるのにこの特集はちょうどよいのではないか、と。  季節も冬に向かっていることだし。

あとはアサイヤスがかつて語っていた『ホラーは観客のダイレクトなリアクションを引き出すことのできる唯一のジャンル』ていうあたりとか。

でもいきなり冷たい小雨が吹きつける土曜の晩に3時間はどうなのか、と。 
邦題は『死霊伝説』 - 死霊の話でも伝説の話でもないけど。 原作本は「呪われた町」。
TVシリーズとして放映されたもの(前後編?)を繋いだやつで、たまにCMの切れ目に一瞬画面が止まったりする。

上映前にUniversity of RoehamptonのStacey Abbottさんがイントロを。 氏はバンパイア・ホラー、なかでも特にTVの小画面に現れてきたバンパイアを専門に扱っている(かっこいい!)ということで、この作品を語るのに世界で彼女ほど相応しい人はいない、と。

まずは当然のようにTobe Hooperへの追悼の言葉があって、それからこの作品を186分のフルバージョン、35mmプリントで見れることの幸運について。 当初ヨーロッパで公開された短縮版は氏によれば全く別物といってよい粗悪品である、と。 それくらいこのバージョン(の特に前半部分)のスローなペース(→雰囲気のつくり方)は絶妙でかけがえのないものなのだと。
ジャンルとしてのバンパイアもの、の観点から言うと、60-70年代のTVで量産されたキワモノとしてのバンパイアから離れて、モンスターとしての本来のバンパイアのあり姿に振り戻した、という功績があるのと、これに加えて子供が表象するイノセンスとその反対側にイーヴィルを置き、イーヴィル(モンスター)がイノセンスの崩壊・喪失をもたらす、というところまで踏みこんだドラマになっている、と。
そして窓ガラスの向こうからカリカリやってくるあれって、居間でTVに向き合う人たちを背後から... ていう点で位置関係としてもおっかなくて極めて的確なのだと。

冒頭にグアテマラの教会で聖水を手にしようとしている男ふたりがいて、話しはその2年前のメイン州の田舎町Salem's Lotに移って、その中心にマーステン館があって、そこにライターのBen Mears (David Soul)が現れて、怪しげな骨董屋 (James Mason) が店を開こうとしていて、館には大きな箱が運びこまれたりして、その場所のその動きのまわりで住民がおかしくなったり犬や子供が消えたりしていって、後半になるとその災厄ははっきりと住民の間に広がって、最後には善玉も悪玉もみんな館に吸い寄せられて向かい合わないわけにはいかなくなる。

なぜ、なんのためにあの町のあの館が選ばれ、そこに骨董屋が来て作家が現れたのか、空を飛ぶのとどんよりするのと凶暴になるのと何がどうなってそうなるのか、そもそもあの青くてでっかいやつってなに? 誰?とか、なにひとつわからないのだが、それらが夜の闇の向こうでゆっくりと動めきながら育ったり繁ってきて、その薄ぼけた闇の感触は窓ガラスのカリカリも含めて自分がついさっきまで見ていた夢のように生々しく伝わってくる。 そして最後に明らかになるマーステン館のとてつもなくやばい内観 - 捩れた仕掛中の剥製とかねっとりこびりついた埃とか、これじゃああんな化け物だって棲むわ、ていう。

そして魔物は杖の一閃とか光の一撃で魔法のように消えてくれない。 現れ出たときのねちっこさと同様、杭をぐいぐい押しこんでねじこんで、ようやく静かになってくれて更に館ごと焼きうちにして、へとへとになるのだが、でもまだ終わらないの。 そうやって連中は生き延びてきたのであって、でもそれって我々も、なのよね。

どこまでもすばらしくおっかなかった。 見ることができてよかったー。 これが79年 ...

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