9.03.2017

[film] The Naked Civil Servant (1975)

8月26日の晩、BFIの"Gross Indecency"の特集でみました。
20世紀英国の文人(ライター、語り部 ? なんと言ったらよいのやら)、Quentin Crisp (1908 - 1999) )の68年の同名の自叙伝をTVドラマ化したもの。(をリストアしていて画面はとてもきれいだった)

冒頭に撮影当時の本人が登場してチャーミングに挨拶をしてからJohn HurtによるQuentin Crispのお話に入る。 お堅い、しっかりした家柄と教育で育てられたものの女装や化粧をやめることができず、家を飛びだして街角で拾われてSOHOのカフェに連れられていくと同じような仲間がいて、住むところも転々だし恋人も変わっていくし、まだゲイは非合法の時代だったので当然のように絡まれたり虐げられたり襲われたりは茶飯事で、そのたびにぼろぼろになるのだが、ぜんぜん逃げないの。 いや、もちろん暴力やいじめからは逃げるんだけど、自身のそういう習性・風貌・スタイルがそういう野蛮を呼びこんでしまうことに対しては毅然と、絶望も逡巡もなく淡々と逃げずに貫き通していて、その諦めの良さというか悪さというかは天晴としかいいようがなくて、しかも本人はそれを誇示したり押しつけたりするような素振りをこれっぽっちも見せずに笑っている。

タイトルの"Naked Civil Servant"は彼が生計のためにやっていたヌードモデルのバイトのこと(他にも男娼とかいろいろ)なのだが、いろんな意味でとても的確なものだと思って、そこからの連想でIggy Popのことを思った。"The Idiot"の、野生の圧倒的な明るさ、ポジティビィティと、それらが呼び込む有無を言わせない正しさと。

"Sexual intercourse is a poor substitute for masturbation." て軽々言っちゃうとことか。

この作品で BAFTA Television AwardsのBest Actorを受賞しているJohn Hurtのすばらしさ。これを見ることでQuentin CrispとJohn Hurtというふたりの個性が美しく、鏡のように向き合う瞬間に立ち会うことができる。

もともとこの作品の評判は聞いていたのだがここまで感動させられるものだとは思わなかった。画面を通してだけど素晴らしい人(人々)に出会ってしまった、という歓びが来て、米国にいたとき、本人を見たかったなー、としみじみ。

ちなみにStingの名曲、"Englishman in New York" (1987) て、彼のことなんだよ。

併映で、これもTVの”World in Action” というシリーズで放映された27分のドキュメンタリー “Quentin Crisp” (1970) も上映された。TVクルーが彼の自宅に来てインタビューをして、帰るまでをお茶目なかんじで記録したもの。 喋っている内容は"Naked.."で描かれたようなことが殆どだったのだが、彼のゆっくりした喋り方、どこまでもGentleな物腰、おしゃれな服装にやられてしまう。ほんとにびっくりするくらい素敵なおじいさんなのだった。

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