3.06.2017

[music] This is Not This Heat

4日の土曜日の晩、Barbicanで見て聴いた。 「これはThis Heatではない」 を。
昨年の2月に結成40周年でCafe OTO - こないだSlapp Happy + Faustをやった小屋で、このライブの裏ではPeter Hammillの3days residencyの最終日をやってた - で行われたライブの拡大版。
昨年6月に予定されていたのが延期になって(延期ばんざい)、この日についに。

開始は19:30で、今後は先月のようなミスをしないように行ったら時間ぴったりに始まって、まずCharles Haywardのソロ。 真っ赤のパンツで登場した御大はピアノに向かって割とふつうに聴こえる歌を歌いあげて、どうしたんだどうするんだと不安たっぷりの客席に次は缶からをじゃらじゃら鳴らすガラガラ蛇の歌、とかベビーカーから何かが詰まった缶からを取り出して転がすのとかパフォーマンスをかまして、余裕たっぷりだった。

続いて70年代のThis Heatでのライブでヴィジュアルを担当していたというJohn Smithの実験短編”The Black Tower” (1987) - 24分の上映 - 気を失っていましたごめんなさい。

更に続いてはCharles Bullenのプリペアドギター(だよね、あれ?)によるソロ。ぴろぴろちゃかぽこ。

これの後に約20分の休憩があって、オレンジと生姜のアイスクリームを食べて - なんでみんな休憩時間にアイスクリームを食べるのか? なんかの呪いなのか? -  9時から本編の開始。

このバンドがThis Heatでないことはステージを見ればすぐわかって、ドラムセットは2つあるし、いろんな楽器だらけで女性コーラス3名を含む総勢14名。どうしたのかスモークまで焚かれてるし。
追加メンバーの有名なとこだけいうと、Thurston Mooreとか、Alexis Taylor(Hot Chip)とかChris CutlerとかDaniel O'Sullivan (Sunn O)))他)とか。 ちなみにChris Cutler先生はドラムキットには座らずにパーカッション台に向かって慌ただしく動き回っていた。

メンバー登場前から”Testcard”のちりちりしたノイズが空中を漂っていて、ドラムスの前に座ったHeyward先生がうううおれはもう我慢できないふうに数回体を揺すってから思いっきり左腕を振り下ろすと”Horizontal Hold”がなにかの衝突事故のように誤爆した不発弾のようにHorizontalな衝撃波を送ってくる。 もう歳が歳だし鳥肌がたつような若いお肌ではないはずなのでこれは鳥肌ではない病気のようななにかなのかもしれないが、なんというやかましさ、なんという極上のジャンクでありノイズだろうか、と同調して震える。

This Heat特有のベースの横揺れ・うねりが3名のドラムス、パーカッションとウッドベースを含むベース2名で更に増幅・増強され、近年言われるところの「グルーヴ」とは全く異なる痙攣の波を呼び覚ます。 この痙攣こそがが70年代末のパンクに実験音楽(プログレ)をかけあわせて後にPost Punkと呼ばれる肉と神経と脳髄に一番近いところで鳴る音の原型となって、The RaincoatsもPILも、更にはSonic YouthもLCD Soundsystemだってここからうまれた。

びっくりして感心したのはテープ等を駆使していたとはいえ、3人のDIYで作られていたThis Heatの音の感触が14名のオーケストラになっても劣化も進化もせずそのままに - “mixing improvisation with composition and high complexity with great simplicity”と開演前に配られたproduction noteでChris Cutlerは言っている - 見事な均衡(という言葉が正しいのかどうか)をもって保たれていたこと。 あとはヴォーカリゼーション - Charles Heywardの朗々と道を外れて響く歌声はそういうもんだと知っていたが、Charles Bullenの暗く内に籠って不機嫌に引きずられるあの声があまりにあのままで、こういう声のひとは最近いないよねえ、としみじみした。

先のnoteでCutler先生も言うように、これはリバイバルでもノスタルジアでもなく、まったく新しい何かへの試みで、だからこの熱は、あの熱、あのThis Heatではないのだった。

最後はもちろん”"Health & Efficiency”をやって、”24 Track Loop”をやった。 どちらも大編成が見事に決まって脳内鑢が気持ちよすぎてなにがどうなってもいい、になるのだった。 これが週末でほんとによかった。

どうでもよいことだが、2階席から下、さらに周囲を眺めるとつるっぱげが異様に多かった。 なんじゃろか。

終わって地下鉄に向かうと11時前なのにメンテナンスで駅がクローズしていた。 今度からあの線はFラインて呼ぶことにする。

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