3.06.2017

[film] Certain Women (2016)

5日の日曜日の午後、BloomsburyのCurzonで見ました。 向かう途中、Russell Squareを歩いていたら突然雹が降ってきて、すぐにからりと晴れて、またしばらくしたらどしゃ降りがきた。
ここのはショッピングモールのなかにあって、地下のRenoirていうでっかいスクリーンで、上映後に監督のKelly ReichardtさんとのQ&Aつき。

2月はどこの映画館に行ってもこの予告が流れていて、出演者はなんか豪華なのだが、どういう筋なのかちっともわからない、そういう不思議な印象があった。
原作はMaile Meloyの短編小説3つ(未読)を脚色したもので、エピソードも3つ、出演者はエピソード間でほとんど交錯しない。舞台はモンタナ州で、ここは3つに共通している。

最初のエピソード; Laura (Laura Dern)は地元の法律事務所に勤める弁護士で、面倒そうなおじさんの案件で彼にはこれ以上もうどうすることもできないていう裁定をくらい、あーやばいひと悶着あるかもと覚悟したけど彼は静かに聞いてくれたので安心して寝てたら真夜中に叩き起こされ、おじさんがオフィスでたてこもりをしているので説得に来てほしい、と。現場に着いたら防弾チョッキ着せられて... Laura Dern特有の「えええなんであたしが.. とほほ」のひん曲がった顔が全面で炸裂する。

ふたつめのエピソード; ここのMichelle Williams - Ginaは成功した女性経営者ふう(Wendyとは違いすぎる)で、夫と娘の3人で自分らが購入した土地を見に行って、やっぱりあれが必要、と老人がひとりで住む家の前に積んである石灰岩の瓦礫をお金払うから譲って貰えないかとネゴをするの。 老人は彼女があまりに真剣でなんかおっかないので譲ってあげることにする。

みっちめのエピソード; 農場で兄と馬と犬と暮らすLily Gladstoneが初めて町の夜学に行ってみる。 教えているのは法律事務所から来たというElizabeth (Kristen Stewart)で、授業のあとダイナーで食事して、ElizabethはLivingstonの町から車で4時間かけて教えにきていることを知る。 授業のあとで何回か食事をして仲良くなっていくのだが、ある日行ってみると新しい男の先生に替わっていて、なんかたまらなくなったLily GladstoneはLivingstonに行ってみることにして ー。

うっすら雪に覆われたモンタナの大地、そこで交錯する4人の女たちの運命は..  のように謎解き、サスペンスふうに転がっていくわけではなくて、それぞれいろいろあるけど生きてます、みたいなそんなお話。 例えば、”20th Century Women"がどちらかというと男性の視点で世代・年代の異なる女性像を切り取って見せたのに対し、"Certain Women"はある地域・地帯に根をはってそこでなんとか踏み留まったり踏みしめたりしている女性たちのお話、のようにも見える。 どちらにも言えるのは、彼女たちはそこにいる、と。 楽ではないかもしれないけどいるよね? と。

エピソードでいうと3番目のが圧倒的に素敵で、それはKristen StewartとLily Gladstoneの演技によるところが大きいのだが、Kristen Stewartのやつれてふてくされた凄味にぜんぜん負けないLily Gladstoneの丸っこいかんじもすごいなあ、って。 この映画への出演はKristen Stewartが監督の熱烈なファンで熱望したんだって。

モンタナで(女性が、なにかに頼らずに)暮らすというのはどういうことか、普段あまり考えたことがないようなことを教えてくれる。それがどうした? になりがちかもだけど、これって日本の歴史だの領土だのを見直すことよか、今はずっとずっと大切なことなんだよ。 海外の小説読んだり映画を見たり、っていうのはこういうことでもあるはず、と淡々と教えてくれる。

この作品は"Wendy and Lucy"のLucyに捧げられていて、3つめのエピソードに出てきて雪の中、ぶいぶいトラクターを追い回してばかりいるでっぷりコーギーの雄姿がたまんない犬映画でもあるの。

上映後のQ&Aは「編集はどうやってやっているんですか?」とか「Shootingはどうやってやっているんですか?」といった監督が空を仰ぐような大ナタ質問ばかりで楽しかったが、最後のほうで彼女はChantal Akermanの本をいつもバッグに入れていて、Chantalだったらここをどう撮っただろう、ていうのをいつも考える、というのを自白するかのように呟いて、ああああーてなんか納得した。
作品から受ける印象とまったくギャップのない、とてもチャーミングな方でしたわ。


Film4チャンネルでとつぜん”This is 40” (2010)が始まってしまう。 月曜の夜23時過ぎからやらないでほしいわ。

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