3.06.2017

[film] Wendy and Lucy (2008)

2日の晩、BFIでみました。 Wendy and Lisa、ではないよ念のため。
新作"Certain Women"の英国公開を記念してBFIではKelly Reichardt監督の小特集が組まれていて、これはそのなかのひとつ。
上映以外に彼女とのトークやシンポジウムやQ&AもBFIとCurzonであれこれ行われている。
"Meek's Cutoff" (2010) 見たいよう、今週見れますように... と祈りつつ。

Wendy (Michelle Williams)はわんわんのLucy(監督の飼い犬だって。芝となんかの雑種。賢そう)とふたりで事情はよくわからないが車でアラスカのほうに向かって旅をしている。
鼻歌を歌いながらの散歩の途中で焚火をしてふらふらたむろしている怪しげな地元の連中と会って、その夜もいつものように車のなかで寝ていたら朝に警備員のようなおじいさんにここに停めてはいかんよと言われて、移動しようとしたら車が変な音をたてて動かない。 とりあえず人力で少し先に動かして、なんとかしなきゃ、なのだがLucyのご飯がほとんどなくなっていることに気づき、お金を節約するために散歩しながら空き缶を拾って換金の機械のとこに行ったらすごい列だったので諦めて、しょうがないとスーパーマーケットに入って、ごめんなさいごめんなさいと思いつつ犬缶とかを万引きして出ようとしたら出口で捕まって、切羽詰まっていただけなのでお金は払うからと謝ったのに対応した店員の若者がすごい陰険で性悪(いそうなかんじ)で、彼女は警察に送られて写真と指紋とられてうんざりで、なによりも心配なのはスーパーの入口に繋いだまま置いてこざるを得なかったLucyのことで、リリースされて大急ぎで戻ってみるとLucyはいなくなっていたので目の前が真っ暗になる。

シェルターに探しにいってもいなくて、車も直さなきゃと修理工のとこに行ってもありえない値段を言ってくるので全てが嫌になって、こんなふうについてないことばかりが重なって、そんなことよりお腹をすかせたLucyのことを思うと胸が張り裂けそうになるWendyのきつい彷徨いと、果たしてWendyとLucyの運命やいかに、なの。

ずっとしかめっ面で仏頂面のWendyの痛さ辛さがものすごく伝わってきて、一緒に探してあげたくなる。 インディペンデント犬映画としてはほんとうに素敵で、少しだけネタバレすると、最悪のことにはならないから。 だからLucyを見にいってあげて。

とにかくMichelle Williamsがすごすぎる。ずっと手入れしてないおかっぱ頭のすっぴんで、スーパーのトイレで顔を洗って着替えして- 撮影中は実際にそうしていたらしいが - そんな表づら以上に、Lucyのことしか考えられなくなってしまった女の子の世界を敵に回す/背負って立つぎりぎりの目つき、眼差しと挙動がどこまでも生々しくこちらに迫ってくる。
そして、だからこそ彼女のアラスカを目指す決断は正しいのだろうなと思うし、彼女だったら這ってでも約束の地には行き着くだろう、と。

アメリカを旅するのってこういうことなんだろうな、というのも思った。 よくないことがどんどん勝手にスタッキングされて自分から動いたり言ったりしないと誰も助けてくれなくて、列車は気ままに汽笛を鳴らして出ていってしまう。そして気がつくと元に戻っていたりする。 こんなだからこそWendyにはLucyが必要だったんだよね、ていうこともとってもよくわかるの。

撮影はSam Levy。 女の子の動いて遷ろっていく表情を切り取らせたらこんなすごいひとはいない。
音楽はWill Oldhamさん(浮浪者みたいな役で一瞬でてくる)。 スーパーで掛かっている音楽はSmokey Hormelさんによるもの。

5日の監督とのQ&Aで、この作品が本当に本当に好きなんですけど.. ていう女の子がいて、そういうのがなんかとってもよくわかる、そういう作品です。

猫じゃ無理だよね? 

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