3.18.2017

[film] The Lost City of Z (2016)

15日の晩、BFIで見ました。 毎夕毎晩CurzonとBFIを行ったりきたりしているようで、実際そうなのだが、そういうこともあるのよ。 毎日毎日おなじ会社のおなじ机に通うのとおなじようなもんなのよ。

正式公開は来週の、これもプレビューで、35mmによる上映で、上映前に原作者のDavid Grann氏による紹介つき。
オープニングでBFIのおばさんが、35mmで見れるのは本当にラッキーよ、とおおおっても美しいから、と震えながら話していたが、嘘じゃなかった。 本当に美しかった。
原作者のGrann氏は、Brad Pittのプロダクションから映画化権の電話があったのが2008年で、これは自分にとって最初の本だったのでえらく興奮していよいよ映画産業界入りだ、と喜んだものの、1年たっても2年たってもちっとも進んでいるようには見えなくて、気がついたらここまで来ていた、映画って大変なんだねえ、って。 でもそれだけ待った甲斐はじゅうぶんあった、と。

個人的にはJames Grayの待望の新作 - 昨年のNYFFのクロージング作品で、これの上映タイミングに合わせていろいろ画策したけど(1 - 2日ちがいだったんだよちきしょう)無理だったのがようやく。そしてこれをもって昨年のNYFF上映作品で見たいよう、って呻いたやつはぜんぶ見れた、はず。

原作は20世紀初に実在した英国の探検家Percy Fawcett (Charlie Hunnam) - 当時まだぜんぜん未知の未開の地だったアマゾン川流域を探検して西欧人からすると想像を超える、でも発達した文明の痕跡がある遺跡、のようななにかを見つけてそれを"City of Z"と呼び、それに憑りつかれて旅を続ける彼と探検の相棒(Robert Pattinson)英国に置かれた妻 (Sienna Miller)と子供たちのお話。

Indiana JonesものとかこないだのKongのような、密林・秘境に分けいるただのアドベンチャーものかと思っていたらぜんぜんちがうの。
立派な軍人として英国地理協会から南米ボリビア周辺の国境の線引きを依頼されて、現地に行ってから死の界を彷徨うような苦労して戻って国の英雄になって、もう一回行って、戻ってきたら今度はメンバーの一人を見捨てたとかいろいろ言われて、その後に第一次大戦に従軍して負傷して、ふたたび息子(Tom Holland)と共にアマゾンに赴く。

時間軸が長くて地理的な移動距離も相当なのだが、これは紛れもなく自身が帰属する場所・土地・社会や家族との歓びや摩擦や葛藤を通して自身の生を掘り下げ探り続ける人たちの像を描いてきたJames Grayの映画に他ならないの。 前作の"The Immigrant” (2013)で約束の地New Yorkに着いても離ればなれにされ痛めつけられ、それでも踏みとどまろうとした移民たちの思いは、存在しないかもしれないCity of Zと、夫であり父であるPercyを待ち続ける英国の家族との間で引き裂かれていて、でもそれでも人は移動をやめない。 旅をし、移動することでのみ、ひとは自分が繋ぎとめられるべき土地を、亡骸が葬られるべき地面を自分のものにすることができるのだ、と言っているみたい。

で、そこにもちろん答えはないの。City of Zが存在するかなんて誰にも言えないしわからないのだが、でもPercyはかの地に向かわないわけにはいかない。
そしてそれが男のしょーもないロマンとか野望とか、そういう自己愛/実現系のなんかとしてではなく、闇の奥のLost Cityに魂を持っていかれて抗うことができなくなった男の悲劇(でもないか)のように描かれる。

そしてこの物語が、NYへの移民の物語に続き、世界中に国や街を失ってしまった人々が溢れてしまった今の時代にリリースされたことは決して偶然ではないと思うの。

ジャングルのなかのとてつもない緊張感(びゅんびゅん飛んでくる矢とか虫とか病気とか)、英国に戻ったときの安息と落ち着き、戦場のどうしようもない閉塞と絶望、そしてラストの …
場面場面のスペクタクルとアップダウンがめちゃくちゃ激しいのだが、死の恐怖はどこに行っても延々ついてきて、それなのに"The Immigrant"にもあった屋外・屋内の光の柔らかさと美しさはどの画面にも満ちていているのでうわー、て溜息をついているうちに終わってしまう。

前日の”Personal Shopper”もそうだったが、とてつもなくおっかなくて泣きそうなことが立て続けに起こっているのに画面が美しすぎるので釘付けで、なんかしょうもなかった。

音楽は何度かラヴェルの「ダフニスとクロエ」が流れてきて、これも盛りあがってのー。

日本にも35mmの缶からが行きますように。

ジャングルもLost Cityもいいけど、Lost House状態の今の自分をなんとかしろ。
そろそろ住むとこみつけないと、ほんとしんないからな。

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