8.04.2016

[log] Blue Hill at Stone Barns

食べものやレストランに行ったあれこれは、書くのが難しいしへたなので(…ぜんぶへただ)、備忘のメモ程度で済ませていたのだが、ここのは書いておかねばと思った。 ので書く。

7月22日、金曜日の晩のお食事。 
場所はマンハッタンから北に電車で約1時間、そこから更に車で20分のとこ。 開始は21時過ぎ。 マンハッタンに戻る終電は午前1時。

ワシントンスクエアの近所に2000年にできたレストラン、Blue Hillのことはここでも何度か書いているけど、ものすごくちゃんとした野菜や肉、魚をこねくり回さずとってもおいしく出してくれるところで、ずうっとお気に入りで通っていて、そこが2004年にオープンしたのがBlue Hill at Stone Barns。

Stone Barnsはこの辺一帯の広大な農場施設で、30年代からロックフェラーの一族(ここの近所にKykuitていう彼らの邸宅+庭園があって、ここもすごい。 観光名所)がオペレーションしてきて、2003年に彼らがこれをノンプロフィットの団体に譲って、Stone Barns Center for Food and Agriculture ができて、ここがこんどはレストランのBlue Hillを呼んで、Blue Hill at Stone Barnsができた。

で、Stone Barns Center for Food and Agricultureていうのはオーガニックなんてもちろん、食料、農業、農作物全般、いろんな作物とかエコサイクルについて実験も含めた様々な取り組みとか情報発信とか大学との共同研究とかをしていて、子供とか家族向けにいろんなツアーもやってて、一回参加したことあるけど季節に応じていろんな草とか鶏とか七面鳥とかあひるとか蜂とか豚とかを見せてくれてとっても楽しい。 勉強にもなるし。 食べちゃってごめんね、だけど。

レストランはかつて農場のなかのなんかの建物だったところを改造したやつで、天井が高くてでっかくて、ずっと行きたかったのだが相当前から狙っていないと予約は難しくて、それが今度の夏休みでようやく。  Panoramaとおなじくらい楽しみだったの。 窓の外には火花を散らしてごうごう燃えているのバーベキューの炉みたいのが見えて、なに焼いているのかしら、牛まるごとかしら、とか。

テーブルの上には小冊子が置いてあって、年間ここで採れるいろんな作物とかお肉とかを月別に記したのと、どこになんのはっぱや食物が埋まっているのか育っているのか、の農場全体の地図と、あとは今日のメニューのテーマなのかしら、紙一枚、"Grazing, Pecking, Rooting" てある。 
- 放牧して、つっついて、穴掘り?

始まったコースについて、こまこま書かないけど、始めのうちは野菜まるごと、ものによってはそのままを手渡しされてもしゃもしゃ食べる。 フェンネル一束手渡されたときはさすがに引いたが、うさぎの気分になって食べる。根っこのほうから食べるととても甘くておいしい。

くしゃくしゃに丸まった藁の巣の間にチーズスティックが挟まっているやつ - このへんがPecking、のあたりか、とか、プレゼンテーションとして、これはなんじゃろ?どこ食べるの? などと楽しめるのがある他方で、いっこいっこの素材の風味、その張りと香気はとても力強くて鮮烈で、ああ、根っことか実とかはっぱを食べているんだわ、もしゃもしゃもしゃ草食ばんざい、でもずっと草ばかりでもなく、だんだんにいろんなお魚お肉も挟まってくる。 ただ、モダンフレンチにある泡とか飛沫とかスポイトとか、なんじゃろこれ、みたいのはほとんどない。 ものすごく軽い一皿、ものすごく重い一皿もなくて、どれもそれぞれに比較しようのない素材の塊のおいしさと、そのおいしさを噛みしめることのできる絶妙の分量で出てくる。

一応フォーマルなレストランで、でもデコールはかっこいい農家仕様で、そういうなかでポップコーンとかレモネードとかも大まじで出てくる。 たまに食材の説明を丁寧にしてくれて、これは大学と共同開発中のじゃがいもを使っていて、バターやクリームと和えなくても同等のねっとり感をだせるようになるやつ - コードネームはNY-150 っていうの、とかね。 NY-150、憶えておく。

隣とか、近所のテーブルの人々がコースの途中でどこかにすうっと連れていかれて暫くすると戻ってきたりしているのでなんだろと思っていたら、やがてそれが来て、テーブルによって連れていかれる場所やタイミングはばらばららしいのだが、こちらへ、と導かれたのはキッチンのなかだった。 
わー。 こんなのはじめて。

キッチンの隅っこに立食のテーブル(クロスあり)があって、飲んでいた飲み物も持ってきてくれて、大勢の人たちがわらわら真剣に働いているところを眺めながらおそらくコースの締めになるバークシャー豚さん(でっかいやつが森のなかにいる)3片をいただいた。 お腹ぱんぱんだったがとろんと甘い脂身とひたひた苦いラディッキオの組合せがとんでもなくおいしいのでもぐもぐいってしまった。いろいろ信じられない。 至近距離で育てられたものを目の前で調理して、自分のなかに取り込む、というのは、例えばこういうことで、それってやっぱり学ぶ、ということなんだよね。

結局ぜんぶで27コース、うちデザート3。怒涛の約2.5時間だった。
最後、もうこれ以上いったらしぬ、となったところで、でっかい巣蜜のボードの上、ひたひたになった蜂蜜のじゅうたんの上にチェリーとかベリーとかカラントとかが敷きつめられて出てきたので、ああこの上で寝たいよう、と食べながら悶絶した。

かつてquestlove氏がInstagramで自慢していた4時間で46コースに及ばなかったのはちょっと悔しいので、今度はもっと早めに入って、死んでもいい覚悟でかぶりついていきたい。 
好き嫌いの激しいひと、小食のひとはやめたほうがいいです。

レストランの外に出たら別の建物の二階のホールみたいなとこで爆音のNirvanaにあわせて大勢の子供たちがぴょんぴょん跳ねていた。 月夜の深夜12時。 あれはなんだったのか。

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