11.03.2010

[music] The Dresden Dolls

というわけで、Halloweenの晩には絶対に戻らねばならなかったのだし、後でどんな悲惨なことになろうとも、米国側に着火する必要があったのだった。 ほんとにほんとに、こんな燃え広がっちゃうとは思わなかったけどな(泣)。

JFKから7時半にアパートに戻って、お片付けして8時過ぎには出て、Irving Plazaに向かう。
この小屋はほんとに久しぶりで、00年代に入ってBowery一派がのしてくる前、90年代は、ライブハウスといったらここか、Roselandだったのに、LiveNationに喰われてからはすっかり元気がなくなってしまった。

それはともかく。
小屋のまわりをぐるうっと、ものすごい行列が囲んでいた。
ここでこんなに人が出ているのを見たのはほんとに久しぶり。

7時迄だったら小屋の前にBig Gay Icecreamの屋台がでていたはずなのだが、この寒さじゃねえ。

当然、はんぱじゃない格好のひとがうじゃうじゃいる。
これじゃID確認なんてできるわけないし、持ち物検査もあったもんじゃない。
たまにまともそうな人がいた、と思ったらNINのTシャツを着ていたりする。 (...一種の仮装か)

中に入っても、着ぐるみだのなんだのでひとりひとりの嵩が広がっているもんだからぎっしり。
まあしょうがない。Halloweenというのはそういう居心地の悪さと共に下層民が雄叫びをあげるものなのであるし。 
まあね、疲弊具合は墓から出てきた連中に負けない気がしたよ。 ぼろぼろ。

9時ちょうどに前座がはじまる。 30分きっちり。
なーんと、The Legendary Pink Dotsだった。 こんなところで「伝説」が観れてしまうとは。
ライブのなかでAmandaさんが語ったところによると、2003年、デビューしたばっかりの彼らに前座の機会を与えてくれたのが彼らだったのだという。 おん返し。よい話。
この分だと、何年か後、NINもDDの前座になったりするのかもしれぬ。

さて、Dresden Dolls。
今回のツアーはみんながみんな喜んだとおもう。 かつて彼らのライブに接して彼らのことが大好きになった人達は特に、ほんとうにふたりがまた一緒にやってくれることに安堵したはずだ。

だって、Amandaのソロは、余技と呼ぶのも憚れるくらい堂々としたものだったし、そのあとで出された"No,Virginia"は、とりあえず聴いといて、みたいな気の抜けたかんじがしたし、要はふたりがこれからもずっと一緒でやっていく必然なんてそんなにはないように思えたものだから。

でも彼らは帰ってきた。
仲良く体を寄せあって、キスしてハグして、客席に花びらをばら撒き、Amandaは真赤なガウンをばーんと脱いで黒のブラ一丁になって、Brianはドラムキットのとこに仁王立ちになって、がーん、ぎーん、ばしゃーん、どかどかどかー、と双方向から戦いの狼煙があがり、会場全体が沸点寸前までいったところで、"Sex Changes"のあの一瞬清々しく跳ねるイントロが鳴りはじめ、後ろからたたみかけるようなドラムスが追っかけ、雷鳴が轟き、独特のしなりと共に世界がバウンドをはじめる。

この音!   と誰もが思ったはずだ。 
Amandaのとてつもない強度をもった打鍵とそれにぴったり寄り添い、ボトムからおもいっきり突きあげて音を散らしてそこらじゅうにばらまくBrianのドラムス。

誰もが、行け!もっとひっぱたけ! と心の底から思い、願ったはずだ。

この音は、このふたりの、あの声と二の腕(ひとりのはふっくらと力強く、ひとりのはやたら長い)と、あの帽子がなければぜったいに出すことはできないことを我々は知っている。

そしてその音が、彼らふたりの世界観 -バンド名、ファッション、デカダンス、キャバレー、狂騒、エロ、などなどからなる、宝箱とかびっくり箱とか、そんなようなものだ、ということもようくわかっている。

その箱を開けるのは我々で、それは正に今宵、墓場がその口を開け、死者ですら着飾って街に繰り出すその晩に全てはおこって、実際、彼らは死者をも叩き起こしてキャバレーだのサーカスだのに引きまわした挙句、即座に痙攣 → 昇天させるようなものすごい勢いで歌って、叩いて、走っていった。

そして、あんまりのことに死人をも含めて、いまぱっちりと目覚め、おもいしるのだ。 
ああ、こんなにすごいバンドだったんだわ、と。

この日が特別だ、というのはHalloweenのおかげ、ではなくて、この日が、丁度ふたりが出会って10年目のAnniversaryだから、とAmandaが言う。 2000年の10月31日にふたりは出会ったのだと。
そりゃ力もはいるわよね。 お祝いだもの。

歌のでだし間違いとか歌詞忘れもいっぱいあったが、ぜんぜんいいよそんなの。
天井風船とか即席合唱隊とか、いろいろ楽しい見せ場もあったけど、なくてもぜんぜんへいきよ。

アンコール2回入れて2時間半びっちり。
ほとんどの曲は聴けた。 
いや、"delilah"以外は、だね。この曲は今晩のかんじからすると、ちょっとだけちがったかも。

ラスト(だったかな)の"War Pigs"も、まったくだれず揺るがず、Amandaは客席の真正面から仁王立ちでぶちかましていた。

全体になんだかものすごくて、恐れるものなんてなにもねえ、やっちまえモードのやけくそで突っ走っているようにも見えた。 それでもちろん、よいのだけど。

ねえ、そもそもなんであんたたち休んでたの?

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