1.30.2024

[film] La Bête (1975)

1月23日、火曜日の晩、BFI Southbankでやっている”SCALA!!!”の関連上映企画 – 同館でよくかかっていたB級カルト作品を上映する - で見ました。

英語題は”The Beast”、邦題は『邪淫の館・獣人』。SCALA!!!”のポスターのなかに、目をむいて頬に手をあててムンクの「叫び」みたいになっている女性の写真があるのだが、それはこの映画からのものであった。入口には「ものすごく不快になるかもしれない表現があります」って注意書きの立札があったのでどきどきして入る。

いまフランスで上映されているBertrand Bonelloの同名の新作とは関係ない、と思う。

監督はポーランドのWalerian Borowczykだがフランス映画で、言葉もフランス語、イタリア語、英語。メリメの”Lokis” (1868)がベースと言われているが、それより単に『美女と野獣』のエロ版、で通っているらしい。

冒頭、結構肉肉しい馬の交配シーンがあって、それを仕切っていたMathurin (Pierre Benedetti)に実業家の娘Lucy (Lisbeth Hummel)との縁談が持ちあがり、父の侯爵Pierre de l'Esperance (Guy Tréjan)はMathurinの頭が悪くて奇形だったのを隠してきたので、ばたばたと自分ひとりで息子の洗礼をすませたりするのだが、同じ屋敷のなかにはその結婚に強く反対しているPierreの叔父もいたりしてややこしい。

やがてLucyが叔母と一緒に車で野山を超えて屋敷にやってくる。天真爛漫でポラロイドで写真を撮ってばかりいるLucyは、馬の交尾写真とかお屋敷で200年前にここの領主だった女性が獣と戦った話を聞き、そこでの獣姦を描いた絵 – まるで春画 – を見てひとり興奮している。

ここから先は婚礼前夜にMathurinと対面して夢のなか(なのか屋敷を彷徨う古の何かが乗り移ったのか)でひとり暴走していくLucy(と獣)と、Mathurinとの結婚を巡って枢機卿まで巻きこんだすったもんだのお家騒動に発展していく、全体としてはホラーになりたかったコメディ、なのかもしれない。

特にLucyが夢のなかで熊さん(なのかすら不明な毛むくの化け物)と出会って追いかけられて夢中で走っているうちに裸になっていて熊が... というとこ。おそらくリアルにやったら検閲に絶対通らない – でもどっちにしても通らなかった... - から着ぐるみぬいぐるみでやっとけ、とやってしまったのがなんだかはまっていてほのぼのおもしろくなんかおかしい。

画面全体の佇まいはヨーロッパの山奥に潜む変態貴族のあれこれ – いつも物陰で靴を脱いでやっているところで声を掛けられて中断させられてしまう下男とPierreの娘とか、お稚児さんふたりを連れている変態ぽい教会の神父とか、どこかブニュエルのように見えなくもないトーンできちきち描いているところで、あんな変てこ熊が現れて、しかも熊の性器まで作りこんであって..

夢のなかで勝手に絶頂に達した熊は鮭のように死んじゃって、夢から醒めたLucyがMathurinのところに行ってみると彼も死んでいて、包帯をしていたその腕は獣の毛むくで、お尻には尻尾が…  

女性ふたりがお屋敷に来るところから這う這うの体で逃げだすところまで、ホラーと呼ぶにはあまりにスカスカで、かすりもしていないのでポルノでもないと思うし、でもつまんないかというとぜんぜんそんなことはなくておもしろかった。客席もみんな朗らかに笑っていたし。

なんとなくBjörkの”Human Behaviour”のクリップを思いだした。熊がでてくるし。
 

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