1.19.2024

[film] Scala!!! (2023)

1月15日、月曜日の晩、BFI Southbankで見ました。

前にも書いたが映画の正式タイトルは“Scala!!! Or, the Incredibly Strange Rise and Fall of the World's Wildest Cinema and How It Influenced a Mixed-up Generation of Weirdos and Misfits”という。『あるいは、世界で最もワイルドで狂った映画館の信じがたく変てこな興亡と、それがどんなふうに変態や除け者の混じりあった世代に影響を与えたか?』 ででん!(太鼓)

前世紀のロンドンに実在した映画館とそこでかかった映画とそこに集まった変人たちに関するドキュメンタリーで、監督はJane GilesとAli Catterallの共同。冒頭いきなりJohn Waters先生が出てきてやあやあ、って口上を述べる - そういう。

映画館として存在していたのは、1978年から1993年の間、King’s Crossの通りに建物自体はすぐわかる姿形で今も建っててライブハウスとして使われていて、Otoboke-Beaverはここで見た。ここにくる前のFitzrovia- Tottenhamにあった頃はライブ会場として有名で、Beatlesの”A Hard Day's Night” (1964)のライブシーンはここで撮られているし、ぎらぎらだった頃のIggy PopやLou Reedもここでライブをしているのは有名だし。

ふたりの若者がキュレーションして凝りまくったチラシでカルトに実験映画、ホラー、スプラッター、カンフー、エログロ、LGBTQIA+、分類不可のジャンクなんでも、作家だとDavid Lynch にPasoliniにRuss MeyerにJohn WatersにDerek Jarman に... 普通じゃないのであればなんでも、を上映しまくり、集まってくる客もサッチャー時代の反動のように、オールナイト上映の晩は特に居場所を失ったパンクにゴスに変態がうじゃうじゃ。有名になる前のBoy George、Spandau Ballet、JAMCなどもうろうろ吹き溜まっていて、映画にも出てくるMatt Johnson氏と映画には出てこないけどJG Thirlwell氏もここの映画館で出会ったことなどを以前語っていて、そういう磁場を形成していた。あと劇場猫もいた。二匹も。

映画はまだ残っているので見ることができるけど、こういう場所に紐づいていたものは記憶にしか残らなくて、でも結局それが一番強いのかも、って思うようになってきた今日この頃。

日本にもあったのだろうか。ぴあ(雑誌)とかシティロードの時代って、映画館巡りをするお金がなかった分、あの雑誌のなかで紹介されているいろんな場所やプログラムを隅から隅まで眺めて想像するしかなくて、そんな想像のなかにあるとか。黙壺子フィルムアーカイブ、とか? 昔のユーロスペースとか?

もうなくなってしまった溜り場を回顧するにしては湿っぽくなく、この映画そのものに変で不思議なパワーが漲っていて、いまやもうネットや配信でなんでも.. って言いかけたところで鼻の穴に指つっこまれて耳に噛みつかれるような勢いがあった。それがなんなのかよくわかんないのだが、変態なめんな、っていうことでよいのか。変な映画がもたらすイメージ(ダメージ?)って残るものはずっと残るよね。

ここ10~20年くらい、仕事などがつまんなかったり辛かったりが多すぎることもあって映画を見に映画館に通ったりするようになって、そういうのが嫌になったこともないのでたぶん自分は映画も映画を見るのも好きだと思うのだが、自己紹介とかで映画好きです!なんて言えないし本当に好きなのかまだわかんなくなったりするし、映画サークルみたいのに入ったこともないので、まだなんか信用できないのだが、そういうひとから見ても、ああこんなふうにこんな映画を見ていた人たちも猫たちもいたのなら ... って少しだけ元気になった。気がした。


Rock ‘n’ Roll Cinema

1月18日の晩、BFI Southbankであったこの映画の上映関連トークイベント。

ホストはCathi Unsworth、ゲストはBarry Adamson(映画のサントラを担当), Douglas Hart(The Jesus and Mary Chainのオリジナルメンバー), Mark Moore, Caroline Catz, Jah Wobble、の5名、みんなドキュメンタリーの方にも出演していて、彼らが自分にとってのRock ‘n’ Roll映画この1本! のクリップを紹介していく、という構成。紹介された映画はJah Wobbleが”Les quatre cents coups” (1959) - 『大人は判ってくれない』 - なんか意外、Barry Adamsonが”Beat Girl” (1960) - John Barry Seven! 、Douglas Hartが”Point Blank” (1967)、Mark Mooreが”Performance” (1970)、Caroline Catzが”Jesus Christ Superstar” (1973) – Jah Wobbleが、この音楽ってAndrew Lloyd Webberなんだろ?このベース、信じらんないくらいかっこいいんだけど、って - で、他には”Tommy” (1975)のThe Acid Queenのシーン、”The Man Who Fell to Earth” (1976)なども取りあげられて、全体としては、英国ではNicolas RoegとKen Russellは外せないな、って無難なところに落ちたかも。

最後、ホストのCathi Unsworthさんが、ここはあたしに締めさせてほしい、とJordanがDerek Jarmanの”Jubilee” (1978) で"Rule Britannia"を歌ってのし歩くシーンでおわる。ここについてはまったく異議なし、だった。


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