1.13.2024

[film] Saltburn (2023)

1月7日の夕方、CurzonのBloomsburyで見ました。
英国の階級に関するみんな大好きこてこて変態まみれのドラマなので、こちらではふつうに映画館でかかっていて、そこそこヒットしている模様(11月から公開しているって)。

監督は”Promising Young Woman” (2020)でオスカーの脚本賞を受賞しているEmerald Fennell。プロデューサーにはMargot Robbieの名前がある。

舞台は2006年、不器用で不器量でぜんぜんいけてないOliver Quick (Barry Keoghan)がOxfordに入学して、なにをやってもドジで気弱でバカにされてて、そんななか分け隔てなく接して少しだけ優しくしてくれた、学内の人気者 - その毛並みだけで見るからに貴族のぼん – Felix (Jacob Elordi – “Priscilla”でElvisをやっていた)に魅了されて、いつも学内のどこかにいる彼を目で追っていくようになる。

やがて落ち込んでいるOliverから父が亡くなった、と聞くと、Felixは夏の間、彼の父が所有する豪邸 – Saltburnで一緒に過ごさないか、と彼を誘って、え.. いいの?ってなると、カメラは扉を叩くなり現れる執事からしてなんなのこれ? の世界に入りこんでいく。しきたりも成り立ちもよくわからない貴族社会、そのお屋敷に入り込んだ平民男子のひと夏のめくるめく体験 - 当然のようにウォーの『ブライズヘッドふたたび』なんかを思いだすのだが、あそこにあった戦時の倦怠/退廃やカトリシズムへの行儀のよい目配せはほぼなく、どいつもこいつも冗談のようにリアルっぽい変人ばっかし - 当主のSir James (Richard E Grant)、元モデルの妻Elsbeth (Rosamund Pike)、そのけばい友人Pamela(Carey Mulligan – おもしろすぎ)、Felixの妹Venetia (Alison Oliver)、大学にもいたアメリカ人のいとこFarleigh (Archie Madekwe)、などがなんもしないでごろごろしてて、Farleighを除いたそこにいる全員が田舎者Oliverをペットのように気にいって声を掛けてくれるようになり、そうなるとOliverは..

しめしめ、あの世界にうまくもぐりこめると思ったのに、Oliverのお誕生日にFelixはサプライズで彼の実家へのドライブを決行して、訪ねてみると彼の父は死んでいないし母は薬物依存症でもないごくふつうのおうちだった… Felixのお金持ちの善意が踏みにじら…

これでもうOliverも絶交されて追いだされて終わりかー、と思ったらここから更に蛇のようにぐねぐねしたうねりがやってきて、最後の最後まで気を抜かせない底意地の悪さは”Promising Young Woman”にもあった気がする。はじめのうちはFelixへの同性愛的な執着なのか、それがやがて貴族階級への同一化要求なのかな、になり、最後には裸踊りして地面にひれ伏して、というただの変態なのだった…  になってしまうなんだこれは、のかんじ。そこには貴族階級に潜りこんで転覆させる下剋上のスリルも面白さも、確信的で抜け目なく狡猾な悪への執着もそんなになく、彼をそんな半端な変態に留めようとする状況や思いの提示もなく、その反対側にある貴族社会の腐臭やそこへの風刺もなく、ただあるのは期待通りぐにゃぐにゃ変幻自在で捉えどころのないBarry Keoghanの裸でどーん、だけという。

これが00年代だっ、という言い方はできるのか、してしまってよいのかどうか。それはとにかくBarry KeoghanでSaltburnは彼の王国、で説明できてしまって、見ているこちらもそれだけでなんか納得できてしまう、という強さ。”Barbie” (2023)に彼がいたら、Barbie Landももっとおもしろくなったのではないか。

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