1.24.2024

[film] Ferrari (2023)

1月21日、日曜日の午後、Odeon LuxeのWest Endで見ました。
映画はもう二番館の方に来ててあまり上映されなくなっているので、少し慌てて。

上映していたLuxeっていのはシネコンチェーンのOdeonが新しく始めたラインで、シアターとか画面はそんな大きくないのだが、椅子がリクライニングしてゆったりできる仕様なの。Leicester Squareだとここが2軒め。リクライニング、してもいいけど寝ちゃうよね。

監督はMichael Mann、原作はジャーナリストによる評伝 - ” Enzo Ferrari: The Man, the Cars, the Races, the Machine” (1991)。Adam Driverがこないだの”House of Gucci” (2021)に続いてイタリア近現代のカリスマ的な人物をややイタリア訛りの英語で演じている。この辺、彼の俳優としての佇まいとか、ハリウッド映画としての要請などの観点から「なんで?」って考えていったらおもしろいかも。

1957年から始まる話で、”Ford v Ferrari” (2019)で描かれた60年代中頃よりも前で、それがどうした?なのだが車に関してはブランドとか種類とかなんで動くのかとか、知識がゼロに等しいのでほんとどうでもいい。ここからの積み重ねがあったから今がある、っての?

ここでのEnzo Ferrari (Adam Driver)はすでに白髪で貫禄も十分の同社のワンマントップで、速い車を作って会社を維持したり大きくしたりすることに頭がずっといっぱいで悩ましく、会社のお財布を管理している別居中の妻Laura (Penélope Cruz)との仲は一人息子だったDinoが亡くなってからは険悪のどろどろで、別のところにいるLauraの知らない別の家族 – Lina (Shailene Woodley)と息子のPieroは彼に安らぎを与えてくれるがこれからどうしたものか、になっている。

速い車には速く走れるドライバーが必要で、映画の最初の方で死亡事故を起こしたりもしているのでチーム編成も含めてどうにかしたいところに、若くてイキのよさそうなドライバーのAlfonso de Portago (Gabriel Leone)が加わって、イタリアの公道を夜中もぶっ通しで走るレース - Mille Migliaに向けてがんばっていくのと、そういうのとは別にLauraとLinaのふたりとの関係をどうするのか、があってなかなか落ち着かない。

男の快楽で夢、であるらしい金属でできた速い車でぶぅーん、てぶっ飛ばすというのをビジネスとして成り立たせてでっかくするためになにが求められてEnzoの場合はそこにおいてなにが突出していたのか、という観点の洞察も、彼の哲学や思いのようなものが語られることもあまりなくて、スピードの探求も、会社の財務問題も、家庭問題も、なにひとつうまく回せないようなのに周囲から崇められ、プレスからは追い回されている。 例えば、確かに”Ford v Ferrari”にも出てきたデーモニッシュな闇のように深く暗いなにか、はあるように見えるのだが、それがどうした? でしかないし、なんであんなひどい事故を起こす/起こした車に、夢だなんだと燃えてしまえるのか、ちっともわからない。ひとり勝手に燃えていてほしい。

という具合に、Enzoも彼の生み出した車も、なんで/なにがそんなにすばらしく、いまだに「ステータス」らしきなにかを生み出しているのか、ちっともわからないような描き方をしていて、それがめちゃくちゃ重みがあって - でも速そうな路面の走行とか最後の方の大惨事と絶妙な対照を描く。ことはわかるのだが、でもやっぱり、ただの走る車じゃん。とPenélope Cruzは怒っているようだった。

うん、この映画で本当にすばらしいのはずっと暗い不機嫌な目で呪いをかけるようにEnzoを追って責めたてていくPenélope Cruzの方で、あの、ずっと、ばっかじゃないのあんたら、っていう目がたまんなくよくて、Adam Driverがどれだけあの、彼特有のなにが起こってるんだかわかんないし考えてないよ …? っていう無垢な獣の目をしたってだめなの。

あと、漫画とかで人が事故で吹っ飛んだりするのは見たけど、映画だとあんな風に飛んでいくのかー とか(なんかほんとうっぽいし)。


小引越しの真っ只中で、布団(Duvet)一式を買って地下鉄で運んだり、袋でちょこちょこ運びだしたり - そんなことをしても実は何ひとつ片付いていないのだが、それが楽しくて、この感想も移動している地下鉄で書いたりしているのだが、実際に生活が始まるとなんかつまんなくなって片付けもなんもしなくなる。ってだめよね。

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