1.24.2024

[film] The Holdovers (2023)

1月21日、日曜日の昼、Picturehouse Centralで見ました。

70年代初のアメリカ東部を舞台にしたクリスマス映画で、クリスマスに見たらどんなにかー、なのと昔のカラーフィルム映画のテクスチャーをわざと模しているので、35mmフィルムで上映してくれたらー、もあったのだがデジタル上映のみの模様。監督はAlexander Payne、脚本はDavid Hemingson。

冒頭のクレジットとかロゴとか審査通ってる画面とかから昔のスタイルの真似をいっぱいしてて、雪のなかにニューイングランドの全寮制の男子校が浮かびあがり、過去から東海岸のエリート養成校として有名大学にいっぱい送り出してきたここも、みんな実家に帰るクリスマス休暇に向けていつもと少し違う雰囲気でほかほかしているのだが、ここにずっと暮らしている独身の古典教師Paul (Paul Giamatti)にはそんなの関係ないし、裕福な家のぼんが成績不良で進学できないかも知れない状況になっていても知らん、勉強できない奴は必ず落とす、って聞かないので、校長は彼にクリスマス休暇にいろんな事情があって家に戻ることができない居残り組(The Holdovers)の面倒を見させるようにする。教師にも生徒にも世の地獄と恨み節しか浮んでこないどんよりさいてーのクリスマス休暇。

残留組となった生徒のひとりには再婚した母親が新婚旅行に行くからって一方的に旅行をキャンセルされたAngus (Dominic Sessa)がいて、あとは年少組の子供ふたりを加えた5人だったのだが、その中のいかにもいそうな金持ちのぼんがうちのスキーリゾートで一緒に過ごそうよってヘリを飛ばしてみんなを誘ってくれて、それなのにAngusだけは親と連絡が取れなくてひとり残されることになる。

あとそこに食堂で給仕をしている女性たちの長で、ここの卒業生だった息子をベトナム戦争で失ったばかりで悲嘆にくれているMary (Da'Vine Joy Randolph)が加わる。

親から見放され学校からも罰ゲームのような教師をあてられて自棄になる(なるよね、自分は悪くないんだもの)Angusと、そんな敵意といろんな憎悪むきだしの彼に振り回されていくうちに教師としてどうあるべきかを少し考え始めるPaulと、自分の孤独と悲痛さからすればこんな連中ほんとどうでもよいけど、なんとなくふたりの大人子供たちを見ていられなくなっていくMaryが1971年のカウントダウンに向かってじたばたしながら少しづつにじり寄っていくドラマで、最近のは知らないけど昔の学園ドラマってこんなふうにあーあーあー(やっちゃった..)、って騒ぎながら人肌の温度にゆっくり上昇していくやつだったかも、などと思ったりした。

今のドラマなどにこのやさしいかんじがないとしたら、それは一体なんでなのか、世代なのか関心のありようなのか、とか。もちろんAlexander PayneもDavid Hemingsonも、音楽も含めてこれらをぜんぶ計算して、雪のなかのエモとして散らしているのだが、3人の関係がほんわかよくなっていく反対側で、甘いお伽話では終わらずに現実はやっぱりなんだかんだきついのだよ(悪い奴らはのさばるし)って … でもそうであったとしても、だ。

あとこれはやっぱりPaul Giamattiのすばらしさを堪能する映画で、彼が彼なのでよいの。彼が歴史・古典の教師としてすばらしくかっこいいことを言うので、そこだけでも。

音楽は予告でも流れてくるDamien Juradoの”Silver Joy”とかCat Stevensの"The Wind”とかしんみりしたアコースティックならなんでもはまる。あとバーで流れているBadfingerの”No Matter What”もたまんないの。
 

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