11.22.2023

[film] TERRA (2018)

11月18日、日曜日の昼、映画祭TAMA CINEMA FORUMのサブ企画としてポルトガル映画特集というのがあって、そのなかの1本。上映後に監督の鈴木仁篤さんと赤坂太輔さんのトークつき。

監督は鈴木さんとRossana Torresの共同。タイトルについて、英語字幕では”Earth”と出るのだが、これはやはり地球、というより「土」とか「地面」なのではないか。

人工的に盛土がされた小屋のような小山のような赤土の塊が立っていて、そこに錆びれた金属の扉がついてて、その隙間や山の所々から煙が出ている。最初はその小さい火山のように内側が煮えたったり燃えたりしているらしい様がよくてずっと見ていられて、以降、すべての画面が一枚の or 個別の絵の落ち着きでそこにあり、これらなにもかもをえんえん飽きずに見ていられるので60分間はあまりにあっという間。

やがてその扉と赤土の隙間にひとが粘土を捏ねてぶつけるようにあてていたり、扉から何かを出したり何かを放り入れたりしている様子が出てきて、これは何かを焼いたり焼却したりする窯なのか、なにかが焼ける燻ぶるような音もするので炭をつくる炭焼き小屋なのか、と思っていると人がやってきて太い木の枝を投げこんだりしているので、炭焼きなのかー、くらい。でもこの先にこれがなんであるのか、特に説明はなし。

なんでこの絵 – 厚くぼろぼろの赤土の壁の向こう側で何かが燃えたり燻ぶったりしている - にこんなにも惹かれてしまうのか、見えない向こう側の奥で何かが起こっている、生起生成しようとしている、その表層をじっと見つめてしまうのって、オーブンの向こうで、蓋を落とした鍋の内側で温かくおいしいものができあがろうとしているあの時間を想起させてくれるからだろうか、とにかくその赤土の表面・肌理・質感は息をして生きているなにかのようで、その生が生々しく立ちあがるかんじを山や樹を相手にしてカンバスの表面に塗りこめようとしたのが例えばセザンヌかも、と思って。ぜんぜん違うのにストローブ=ユイレの『セザンヌ』(1989)のぐるーっと回る緑の森を思いだしたり。

この炭焼き小屋のすぐ裏には池だか湖だががあって、その水を汲んで流したりもしつつ四季や一日を通して変わっていく山水の景色とか、地・火・気(煙)・水のぜんぶがあるー、とか。これらが近く・遠くにある、フレームの内外で移ろっていくイメージの豊かなこと。

これ以外には羊がうろうろ歩いていく山道に銃を持った狩人のようなおじさんたちが座っていて、ヤマウズラ - Partridgeを待っているのだと言い、呼び寄せる鳴き声をたてたり – でも乗ってこない - 夜の町の片隅でバーベキューを焼いているとこ - うす暗い・けど寂しいかんじもしない - の風景とかも挟まったりするものの、やはりあの世界の根源にあるような赤土を露わにした山の姿、その山から袋詰めされて持ちだされていく炭の束などに戻っていって、そこに詰まって運び出されていくなにかに涎が。あれはバゲットじゃないのか(違う)。

最後、道の向こうからバイクが2台こちらに走ってきて、そこから横に向かって騒がしく飛びたって彼方に発っていく鳥の群れに繋いでいく音と光の流れがすばらしくて痺れる。

上映後のトークで、この土地はポルトガルのアレンテージョ地方 – ああーおいしい食べもの、ヤマウズラいっぱいの地! - で、鈴木さんがRossana Torresと共同でこの地を撮った作品 - ”Cordão Verde” (2009)-『丘陵地帯』の撮影の際、この土地で椅子を作っている職人の人と出会って、彼が炭を焼いている場所に連れて行ったところから始まった、と。初めから炭山を撮ろうとしていたわけではなかったのだが引きこまれていった、と。やはり窯とか焼き物とかパンに惹かれるらしい - ということで、ふたりの2作目 - “O Sabor do Leite Crème” (2012) – “The Taste of Crème Brûlée” - 『レイテ・クレームの味』すごく見たい。

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