11.14.2023

[film] Mon Crime (2023)

11月5日、日曜日の昼、シネクイントの白で見ました。

邦題は『私がやりました』、英語題は” The Crime is Mine”。監督はFrançois Ozon。
フランスのGeorges BerrとLouis Verneuilによる1934年の同名戯曲を脚色したもので、この原作はハリウッドで1937年と1946年の2回映画化されている古典である、と。過去の映画化作品はどちらも見ていない。見たい。

1935年のパリで、売れない女優のMadeleine Verdier (Nadia Tereszkiewicz)が売り込みに行ったプロデューサーの邸宅で乱暴されそうになったのでなめんなよ、ってぶん殴ってそこを出てアパートに帰ると、家賃の滞納で大家がねちねち嫌味と文句を言ってきてうんざりで、付きあっている大企業オーナーのぼんぼんのAndré (Édouard Sulpice)は婚約手前でどうしたいのかおどおど頼りなくてため息で、同居している駆け出し弁護士のPauline Mauléon (Rebecca Marder)と食事に出てから戻るとアパートには警察がいて、昼に訪れたプロデューサーのMontferrand (Jean-Christophe Bouvet)が撃たれて殺されたって引っ立てられてしまう。

その時間帯に被害者のところを彼女が訪れてなにやら交渉しようとしていたこと、凶器の拳銃が彼女のアパートにあったし、被害者の財布が無くなっていたので金目当てらしい、ということで証拠も含めて被告人Madeleineは圧倒的に不利で勝ち目なさそうでどうしたものか、と弁護を引き受けたPaulineは考えて、裁判官と陪審員を前に、確かに彼女はプロデューサーを撃ちました - 「私がやりました」 - けどね … という圧倒的な嘘/熱弁論を展開して無罪を勝ち取り、理不尽かつ強引な金持ち老人の暴力と戦ったサバイバー、というヒーローみたいな女優像と親友の窮地を救った若手弁護士、という美談で花吹雪が舞って、時の人となったMadeleineのもとには新たな出演のオファーが舞い込んで、ぼろアパートからの脱出にも成功して…

すべてがまるく収まった - これも「私がやりました」 - と思ったところで横から孔雀のような女優のOdette (Isabelle Huppert)が現れて、Montferrandを殺したのは自分だほれこれが証拠、とか言いだしたり、有名になればなったでAndréとの結婚問題が再燃したりとか別の富豪がちょっかい出してきたりとか、いろいろ面倒なのが湧いてきて悩ましいのだが、でも貧乏じゃないってすばらしい、と。

元の脚本がしっかりしているからだろうか、MadeleineとPaulineのキャラクター設定 - 何事においても派手で恋愛でもなんでも自分が中心にいて愛されて当たり前、でずっとやってきたMadeleineとそんな奔放な彼女に振り回されてばかりだけど彼女のことがちょっと好きなのでどうしても強く出れずに言いなりになってしまう真面目なPauline - の二人組がバカでぼんくらで傲慢で二言目には「女なんて」「女だから」ばかりの男ども - 初めから終わりまでずっと - の全員をコテンパンにしてざまあみろ、になりかけたところで、魔女が現れてもう一回引っかき回してくれるけど、でもなんとかだいじょうぶだから、ってなる。ちょっとだけ金持ちをきりきり舞いさせるスクリューボールコメディで、法廷/バックステージもの、でもあったりする。しかも今のご時世の話題の中心線からそんなにズレてないし。

François Ozon、ついこないだの”Peter von Kant” (2022)といい、ここのところ90分サイズの軽めのをさくさくリリースしていて、どのテーマも作風も作品ごとにてんでばらばらだし、それぞれそんなに深く考えさせるやつでもないし、個々の作品にはっきり好き嫌いはあるのだが、そのフランス映画職人に徹したようなちぎっては投げ、の姿勢はよいかも。まだ油断ならないかんじだけど。

Paulineを演じたRebecca Marderさんは、こないだの『シモーヌ フランスに最も愛された政治家』(2021)で若き日のSimoneを演じていた。弁護士役がとてもよくあう頼もしさがあったり。

今回のIsabelle Huppertさんは好き勝手やり放題していてよかった。ちょっとHelena Bonham Carterぽい化け猫の化け方だったけど。(実際に狙ったのはSarah Bernhardtだったそうだが)

あと、久々にAndré Dussollierさんを見れてうれしかったかも。

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