11.15.2023

[film] Carole King Home Again: Live in Central Park (2023)

11月4日、土曜日の午後、ヒューマントラストシネマ渋谷で見ました。
1973年の5月26日、NYセントラルパークのThe Great Lawnで行われて約100,000人を集めたライブの記録。今から50年前のライブ映像。

Kingの“Tapestry” (1972)のプロデューサーであり、この映画のプロデューサーでもあるLou Adlerが16mmフィルムをまわして、最初は彼のナレーションでCarole Kingのキャリアと音楽がざっと紹介される。

NYで生まれ育った彼女がGerry Goffinと出会って結婚して、一緒に曲を書くようになって、Goffinと別れてからローレル・キャニオンに渡ってトリオの"The City" – 大好き – を結成して音楽活動を続けつつJames TaylorやJoni Mitchellと出会って、ソロとして”Writer” (1970)を出して... 以降はいいよね。このファーストソロから1973年までで驚異としか言いようのない5枚をリリースして、”Fantasy” (1973)を作ったときのレコーディングが楽しかったのでこのメンバーとライブをやってみたくなった、と。

それまでMetropolitan OperaやNY Philharmonicのライブが行われていた程度だったThe Great Lawn – 夏になるとSummerStageとして日替わりでライブをやってくれるのはRumsey Playfieldという別の場所。念のため - に野外ライブ用のステージを組んで、大規模な宣伝はせずラジオで流したくらいで当日これだけの人が集まった(でも80年のElton Johnの時は300,000人来たって)。

内容は最初彼女ひとりのピアノと歌だけ、衣装なんて呼べないそこらの普段の野良着のような格好で、でもそれが似合ってて、彼女がそのままリビングで歌っているような少しの緊張とやわらかさをもって歌いだしたかのよう - でもこれこそが聴きたかったライブのCarole Kingだなー。彼女のこんな音楽、嫌いになれるひとがいるだろうか、というのと、これだけの聴衆を前になんでこんな温度感でさらりと歌えてしまうのだろう、という驚きと。

地べたに座っておとなしく聴いたり口ずさんだりしていた聴衆もバンドが入り始めた後半から緩く立ったり動いたりするようになってきて、大勢がわらわらと櫓に登り始めた時にはひやひやするのだがいつものように追い払われて(それでも残るバカはいる)。

まだちょっと寒さが残っていそうな5月の終わりの午後だったけど、家に帰ったらみんなレコードかけてまた歌ったりしたんだろうな(自分ならきっとそうする)、というところまで追いたくなるような、そんな景色がいっぱいあった。


Travelin' Band: Creedence Clearwater Revival at the Royal Albert Hall (2022)

11月11日、土曜日の昼、ル・シネマの渋谷宮下で見ました。
監督はBob Smeaton、ナレーションはJeff Bridges - 朴訥で、そんなにべらべら喋らない。

1970年4月14日にロンドンのRoyal Albert Hallで行われたCCRの英国で最初の、ひと晩のライブを16mmで撮ったものが倉庫から50年ぶりに発掘された、と。

前半(最初の40分)はバンドの成り立ちから1970年に初めてヨーロッパの地を踏んでこの日のライブに至るまでを紹介して、後半のライブ(後の42分)が始まってからはナレーションも編集も一切入らず、最後まで(おそらく)全曲通して流される。

CCRについては、John Fogertyひとりがクローズアップされがちだし、彼のヴォーカルの強さに改めて感嘆するものの、ライブだとDoug CliffordのドラムスとStu Cookのベースが際立ってよく響いて、割とおとなしめ(客席もフルでは埋まっていない)の観客が最後の" Keep On Chooglin'"で一部狂ったようになるのは彼らのエンジンのおかげなのではないか。このライブの数日前に発表されたThe Beatlesの解散がどうの、とはまったく関係なく、彼らのストンと足元に落ちてくるリズムって英国のR&B系とは明らかに違っていて、それを遠くからなんだこれ、って眺めているような感があっておもしろい。アメリカのガレージ的な、日が暮れても延々止まらずに鳴り続けているなにかが、でっかい箱ででっかく響きわたった最初の方なのではないか(← てきとー)。

Carol Kingのもだけど、こんなふうに「発掘」されてくるのって、デジタル化による倉庫の整理整頓が進んできた結果なのかしら、と思う反面、デジタルにしたからあとは棄てていいってものじゃないんだからね! というのも改めて言っておきたい。

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