6.12.2023

[film] Torch Song Trilogy (1988)

6月3日、土曜日の午後、渋谷のEuro Liveでの『サム・フリークス Vol.23』という上映イベントで2本見ました。80〜90年代のNYで、どうやってパートナーを見つけたり失ったりするのかについてのコメディ。趣旨も含めてどういう催しなのか知らなかったのだが、おもしろそう。

Walking and Talking (1996)

これは2018年にBFIの”Girlfriends”という特集で見ていたのをBilly Braggが音楽担当と聞いてあーあれだったかー、って思いだした。00年代以降、脚本も含めて佳作をいっぱいリリースしているNicole Holofcenerさんの長編デビュー作。

幼馴染のAmelia (Catherine Keener)とLaura (Anne Heche)が仲良しのまま大きくなって、セラピストのLauraは同居しているFrank (Todd Field)と結婚間近で、セラピーを受けたりしているAmeliaはがさつな元カレのAndrew (Liev Schreiber)とかレンタルビデオ屋の店員Bill (Kevin Corrigan)とかの間をどうしたものか... って行ったり来たりしていて、互いに互いの近況とか将来のことが気になったりぶつかったり(Walking and Talking)を繰り返しながら、とりあえず歩いていく。まんなかのふたりが最高にキュートでわかりすぎておもしろくて、それらをBilly Braggの音楽が温かくやわらかく包んでいて、5年に一回くらいは見直したくなる都会のお話し。そんなうまくいくわけない、ってみんな思うかもしれないけど、彼女たち、べつにそんなうまくいってないし。

Ameliaの飼い猫のBig Jeansがかわいくて、でも彼は癌で飛び降り自殺しちゃうの..

あと、かかってきた留守電をたまたま聞いちゃったりとか、レンタルビデオ屋(という特殊な磁場)とか、後世には脚注が必要になったりするのかしら?

Frank役のTodd Fieldは今や” Tár” (2022)の監督として有名になってしまったが、この頃はこんなにかわいかった(やや変態 - やっぱり変態)のよ、とか。


Torch Song Trilogy (1988)

上のに続けて同じ場所で。Harvey Fierstein作・主演による劇作(1982年初演 - トニー賞の作品賞と男優賞をとった)の映画版で、監督はPaul Bogart。タイトル(だけ)は何度も聞くクラシックなのに見たことなかった。

1952年のブルックリンに生まれたArnold (Harvey Fierstein)は幼い頃からひとり女装したりするような子で、でも騒いだりするMa (Anne Bancroft)を置いてとりあえず大きくなって、71年の彼はNYのStudっていうバーでドラァグクイーンとして仲間たちとショーに出ていると、バイセクシュアルだという教師のEd (Brian Kerwin)と知り合って恋におちるのだが、Edの横にはガールフレンドのLaurel (Karen Young)もついてきて、それがどうにも気に食わなくて別れる。

続いてバーにやってきた若いモデルのAlan (Matthew Broderick)と知り合って、Ed(とLaurel)のいる田舎に行ってふたりで本当にこの先やっていけそうかどうかなどを確かめて、ふたりして養子を貰うことを考えて大きなアパートに引っ越すのだが、引っ越した初日にAlanはホモフォビアの連中に殴り殺されてしまう。

1980年、Maがフロリダからやってきて、自分の息子がティーンの養子のDavid (Eddie Castrodad)を育てていること、そこに大人になってよりを戻したEdがいることについてなんだか鼻息が荒くて、でも諦めたのか納得したのか帰っていって、とりあえずなんとかなりそうかな、って。

これが「トリロジー」の大枠で、もっとArnoldの独白がいっぱいの、悲しく悲惨な語りが中心のかと思ったらそうではない、歌とステップと時々ブルースにのってじたばた軽快にあれこれ乗り越えていく(乗り越えようとする)お話だったのでよかった。ArnoldがEdと、そしてAlanと出会って恋におちていく瞬間(みるみる)の、そこから始まる最初のなにかとうまくはまらずに苛立ったりのかんじとそこから馴染んで弾んでいくとこ、Alanを失ったことが判った瞬間の光が失われていく様子などが、ぜったいに忘れるもんか、の強い思いと共に切り取られていて、これはHarvey Fiersteinが舞台の頃から自分の物語としてずっと見つめて揉んできたというのもあるのだろうか、とてもすんなり入ってくるドラマだった。

70年代だとStonewallの傷もまだ癒えず、80年代だとじきにエイズ禍もくるので、ほんとうに時代の合間に、なんとか自分たち(ふたり)で自分たちの場所を見つけようとその方角や地軸を模索していたゲイたちの精一杯の”love and respect”のお話し。それがいちばん身近なとこにいたMaとの決着と共にクリアされる(されてないのかもだけど)のは、よかったねえ、って。

いろんな(主に)コメディで、あの独特のダミ声で世界を和ませてくれる彼/彼女はこうやってここにきた/いる、というのを見せてくれて、それはちっとも変なやつじゃない、ずっとここにいてほしいよ、って抱きしめたくなるようなやつなのだった。

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