6.27.2023

[film] Marlowe (2022)

6月20日、火曜日の晩、日比谷のTohoシネマズのシャンテで見ました。
邦題は『探偵マーロウ』。ただの『マーロウ』だとプリン屋の話かと思われちゃうから?

監督はNeil Jordan、脚本はNeil JordanとWilliam Monahanの共同、原作はJohn BanvilleがBenjamin Black名義で書いた小説 - ”The Black-Eyed Blonde” (2014) - このタイトルは終わりの方で一瞬でてくる。

暗めの探偵ものは得意だった気がするNeil Jordanだし、キャラクターはRaymond Chandlerのだし、主演は最近不気味さを増量してきた気がするLiam Neesonだし、そんなに変なものではなかろう、くらいで。

70歳となったLiam Neesonの俳優100本目記念作品だという。比べたってしょうがないけど、岡田茉莉子さんが映画出演100本記念の『秋津温泉』を撮ったときは29歳だったのよ。

1939年のL.A.ベイシティで、探偵のPhilip Marlowe (Liam Neeson)が怪しげなご婦人Clare Cavendish (Diane Kruger)に声をかけられ、映画スタジオで小道具係をしている恋人Nico Petersonがいなくなってしまったので捜してほしい、と依頼を受ける。捜査を始めると簡単に見つかって、彼は金持ちの集う高級クラブCorbata Clubの前で車に轢かれて頭を潰されて死んだ、と言われる。

他方で、事故が起こった時の様子とか細かいことを調べようとクラブに潜入しようとするとはっきりと邪魔されたり警察からはやめとけ、って避けられたり追い払われたり明らかに何かを隠そうなかったことにしようとしているし、Clareに彼はもう死んでる、って告げても、そうなっているのは知ってるし、そう言われているけどこないだ彼が車に乗っているところを見たし、って。

こうして、明らかに死んでいなさそうなNicoは誰のために何をやっていたのか、彼が死んでいないとしたら死んだのは誰だったのか、などを巡って、金持ちと映画屋と変態しかいなさそうな街を巡るなか、クラブのオーナーで英国大使になることが内定しているセレブとか、そこに絡むClareの母で元女優のDorothy Quincannon (Jessica Lange)とか、見るからに悪そうだし自分でワルだって言って堂々としている白スーツのFloyd Hanson (Danny Huston)とか、はっきりと粘着系の変態ぽいLou Hendricks (Alan Cumming)とかが寄ってきて、その反対側で、行方を追っていたNicoの妹はどこかに連れ去られて殺されて。

誰も助けてくれない土地で、誰もが隠してなかったことにしようとしている夜の隅っこを堂々と嗅ぎまわって、より深いところにクビを突っこめば突っこむほど、なんだてめーは、って難癖つけられたり死体が増えていったり、じたばたせざるを得なくなる。そんな沼の描き方として、登場する人たちがクラシカルにゴージャスに濃くてどこから見ても怪しいオーラまみれなのでなんだかとっても期待させてくれた割には、みんなあまりに芝居の書き割りの中にきちんと収まりすぎていて、あまりぱっとしなかったかも。この辺、最近のKenneth Branaghのポアロものにも似た風味はあるかも。再現度や解像度があがってストーリーのおもしろさがどこかに行ってしまったような。

これまでの映画史のなかのPhilip Marloweで(ぜんぶ見ているわけではないけど)理想だったのはやはり”The Long Goodbye” (1973)のElliot Gouldの、かったるそうで眠そうなオトコで、でもなんか半野良で動いていく猫のしなやかさを持った彼で、そういうところで言うとLiam Neesonは行動の原理と行方がわかりやすすぎるのと、やはりちょっと歳を取りすぎててこの人に頼んで(別の意味で)だいじょうぶかな? という危なっかしさがある。危なくてもアクションとしてうまくはまってくれればよいのに、そこがなんか、やや老犬みたいな挙動になってしまったりするのは脚本のせいなのかしら。途中で加勢してくれる黒人運転手の彼がいてくれたからよかったものの、彼なしではくたばっていたであろう .. それでよいのか? - べつにいいんだ、になってしまった感があるのは残念かも。

ほんとはDiane KrugerとJessica Langeがもっと前に出て、ややぽんこつのLiam Neesonを引っ叩いたり蹴っ飛ばしてくれたりしたらよかったのに。そういうことを期待させる強いふたりなのに、というのは少し思った。でもRaymond Chandlerはそういうの許さないんだろうな。

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