6.02.2023

[film] Baby Face Nelson (1957)

5月27日、土曜日の昼、シネマヴェーラでフォード特集の後に始まった『初期ドン・シーゲルと修業時代』 - こんなのもちろんぜんぶ見たい! - で見ました。 邦題は『殺し屋ネルソン』。 1930年代のシカゴに実在したギャングの一代記。

おとなしく服役していたLester Gillis (Mickey Rooney)は、シカゴのRocca (Ted de Corsia)の口添えで出所することができて、でも組合のボス殺しの依頼を断ったら殺し屋を送ってきたので蹴散らして、かつての情婦だったSue Nelson(Carolyn Jones)と再会して最強になって、その勢いでRoccaもやっつけて、怪我してかかった酔っ払い医者(Cedric Hardwicke)のとこでPublic Enemy No.1のDillinger (Leo Gordon)と出会って、やがて彼が倒されると”Baby Face Nelson”の看板名とともにNo.2からNo.1に格上げされて包囲網が敷かれて…

こんなふうに半自動くらいの不気味としか言いようのない勢いでのし上がる、というよりとにかく目の前に塞がって邪魔で面倒なのをひたすら蹴散らしていくBaby Face Nelsonの兇状旅を、その道行きと同じくらい手が付けられないざっくりした粗暴さで切り取っていく。なにを考えているのかどう動いていくのかわからない奴の挙動を画面に収める必要があるので、野良の動物を追っていく – 彼が何を見て、何に反応して、どっちの方に動く - 殺すのか逃がすのか – そして最後はどう終わるのか、などを捕らえようと、現像なんかしていたら逃げちゃうので端から撮って切って貼ってを繰り返していって、結果としてすごくかっこよくおもしろいのが連なっていく。このおもしろさ、痛快さというのはフォードの『投げること』で示された即物的な快楽に近いものがあり、ここだと『殺すこと』のようにひたすら殺しまくる、というか。

だから彼個人の、いちギャングとしての強がりとか見栄とか苦悩とか狂おしさとか痛し痒しとかは一切ないし見せないし – ドラマになりそうなとこは一切省いて”Baby Face”の裏に袋詰めしてとにかく動いていく、そのリズムとスピード感が気持ちよい。ノワール、かも知れないが、シンプルのっぺりとぶちまけたような黒のみ。 時間と予算の制約でそうなっただけ、かも知れないが、それにしたってこのかっこよさと痛快さってなんなのか。


The Big Steal (1949)

上のに続けて同じ特集で見ました。邦題は『仮面の報酬』。
原作はRichard Wormserによる短編 - "The Road to Carmichael's"。

冒頭、メキシコに停まっている船の中で、どこのどういう職業なのか不明のDuke Halliday (Robert Mitchum)と彼を追っているらしいVincent Blake (William Bendix)が殴り合いをして、DukeがBlakeを倒して彼のIDを奪って外に出て、次はJoan Graham (Jane Greer)がJim Fiske (Patric Knowles)に貸した金(結婚詐欺っぽい)を返せ、って言い合いで迫った後に逃げられて、そこでぶつかったJoanとDukeは互いのことを警戒しつつも一緒に共通の敵らしいFiskeを追うことにして、そんなふたりを怪しいと思った現地警察のOrtega (Ramon Novarro) - 英語学習中 - が彼らを泳がせつつ追っかけて、さらにそれを根性で追っかけるややうざくてどんくさいBlakeがいて、出てくる全員が互いのことを妨害したり注視したりざまあー、って言ったりしつつメキシコ各地を追いかけっこしていって、最後に辿りついた隠れ家ぽいところで…

なーんとなくの善玉悪玉はわかるものの全員の身分と正体がはっきりしない/させないまま最後まで行って、ぼかすかやりあって… 明らかになった彼らの正体にそんなに驚きはなくて、でもずっと広い原野をドライブしてきた果てに、あんな狭いとこの殴り合いで決着つけちゃうのか、そんなもんよね、って。

いつも半端ににまにまして余裕ありそうな顔の裏になにを隠しているのかさっぱりのRobert Mitchumが絶妙で、それを追っかけていくのは裏も表もなさそうな木偶の坊っぽいおっさんたち、この外面の対比は”Baby Face Nelson”にもあった気がするが、とにかく主人公たちを追っかける中間管理職ぽい男たちの愚鈍さ – みんな同じような顔と図体と行動原理 – が匂い立ってきてたまんない。 これJoanの視点でスクリューボール(巻きこまれ)にしても面白くなっただろうなー、とか。

なんにせよ、ものすごく快調で、John Fordの後がいなくなった後にこれなら、6月はなんとかできるかも(映画は)。

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