6.13.2023

[film] Ők ketten (1977)

6月4日、日曜日の午後、シネマカリテのメーサーロシュ・マールタ監督特集で見ました。

邦題は『マリとユリ』、英語題は”The Two of Them”。 彼女の作品の流れとしては『アダプション/ある母と娘の記録』(1975)→ “Nine Months” (1976) → これ、ときていて、前2作の要素やテーマが反復されているかんじもある。JuliとJánosの夫婦設定も”Nine Months”から継がれているし(赤ん坊は大きくなったし)。

寒そうな原っぱの中に建つ四角い建物(の影)がオープニングとエンディングに出てきて素敵。
この工員の寮の管理者であるMária (Marina Vlady)は冒頭に母を失って沈んでいて、他方で仕事場の寮では規則違反で寮に自分の子供を泊めたって、Juli (Lili Monori)が問題になって、その対応もありJuliの相手をするようになる。Juliにはアル中の夫János (Jan Nowicki)と女の子のZsuzsi (Zsuzsa Czinkóczi)がいて、どちらも言うことを聞いてくれないしもうどうしろってのよ、状態になっていて、MáriaはZsuzsiをそのまま泊めてあげつつJuliと話したり食事したりしていくうちに少しづつ距離が縮まっていく。

寮での仕事が中心で家にはほぼ帰らないMáriaには技術者の真面目な夫Feri (Miklós Tolnay)がいて、モンゴルへの長期出張の計画が、とか偉そうに言われるのだが、なんかうざいしもう好きにやってれば、になっていたこともありすべてをほったらかして勝手に奔放にやっているJuliが素敵に見えたのかもしれない。

『アダプション/ある母と娘の記録』にもあった母的な役割(期待)、娘的な役割(期待)のなかで居心地の悪さを感じていたふたりの女性の間に生まれる奇妙な連帯や友情が、ろくでなしに更に磨きをかけてどうしようもなくなった男たちを前に - 連中を蹴散らすかたちで - より親密なかたちで展開して止まらなくなる。(あと、別の縛りとしてあった寄宿学校は更なる規律と従属を求められる工員寮に)

四角くて寒そうな建物のなかの部屋とかベッドなどが – “Nine Months”のJánosの部屋と同様にあって、でもそこで横になって何かをやろうとしてもちっともうまくいかなかったり。

こうして、Máriaの夫には卵を割った直後のフライパンがすばらしい速度でぶちまけられ、アル中治療の施設に入ったJánosには拷問のように胡散臭い治療が施され、とにかく男には容赦ないし、子供はどこまでも言うことを聞かないし。そういうもんよ、見ろ! くらいのー。


Szép lányok, ne sírjatok! (1970)

6月9日、金曜日の晩に見ました。 英語題は“Don't Cry, Pretty Girls!”。モノクロ。

青春音楽映画で、当時のハンガリーのフォークとかサイケとかビート・ミュージック(っていうの?)が軽快に流れて(出てくるバンドも当時の有名なのばかりらしい)、そこで歌われる歌詞もストーリーの要素になっている。シネマカリテの上映前にはこれのサントラの1曲がいつも延々ぐるぐる流れていて、通っているうちちょっと頭がへんになるかと思った。

工場の脇の宿屋で働いているJuli (Jaroslava Schallerová)は工場で働きながらぷらぷらしている若者のSavanyú (Márk Zala)と恋人同士で、婚約して結婚式をあげるところまで話が進んでいるのだが、バンドのツアーで立ち寄った白いチェロ弾きのGéza (Lajos Balázsovits)と目が合った途端に恋におちて、彼に誘われるままにバンドにくっついて一緒に旅をしていくことになって、それを知ったSavanyúとその仲間はふてえやろうだ、ってJuliとGézaを追っかけ始めて…

でも逃げたふたりの行動に裁きを! のような映画ではなくて、そんなの別によいから恋せよ乙女、旅せよ少年、みたいに大らかな話で、しかも最後は結局もとの鞘に収まるので、なーんだ、になったりする。世界も原っぱもこんなにも大きく広がっているのだから踏み外したっていいじゃん、くらいのノリで。

仮にここを起点としてみると、↑ の主人公たちが結婚してから後の諸作のきつさ、辛さがなんであんなふうに描かれたのか、少しわかる気がした。画面のどこを切ってもスタイリッシュでかっこよくて、そんな彼や彼女が家屋や工場のなかに追われて囲われていくかのような。

最後の方でタイトル - “Don't Cry, Pretty Girls!”が歌詞に含まれた歌が流れるのだが、そのあとに”Don’t Cry, Pretty Boys!”って続いてから「人生は~」みたいになるの(..よく憶えていない)。どっちにしても楽じゃなさそうだねえ。

ここまでで今回の特集の5本は終わりなのだが、この程度で終わられてしまっては困る、というくらいにまだ見えていないものがある気がしていて、要はすごくおもしろかったので、次をお願い。まだ”The Girl” (1968)も”Diary for My Children” (1984)も見れていない。 Chantal Akermanと同じように春の恒例になっていってほしい。

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