11.21.2022

[film] Rosita (1923)

10月25日、火曜日の夕方、MoMAのストリーミングで見ました。邦題は『ロジタ』。
書いたままポストするのを忘れていた。

オリジナル版は散逸していて、ロシア語版など複数のプリントを参照しながらMoMAによって修復されて2017年のヴェネツィアでプレミアされて、2018年にMoMAで公開されたバージョン。監督はErnst Lubitsch(彼にとって最初のアメリカ映画。監督名のとこに”uncredited”でRaoul Walshって併記されているのだがほんと?)、製作・主演はMary Pickfordでそもそも彼女がルビッチをアメリカに招いた(あとで仲違いするけど)。1872年のフランスの舞台劇 - ”Don César de Bazan” - 『バザンのドン・セザール』がベースで、女性版フランソワ・ヴィヨンものを狙った、と。

セビリアで、大道芸人でギターを弾いて歌うRosita (Mary Pickford)は穴ぐらのようなところに一家で暮らしてて極貧のごちゃごちゃで、もういいかげんにしてほしい!、って王を激しく非難して侮辱する歌(サイレントじゃなかったらなー)をじゃんじゃか歌って民に大うけしていると、そこに自分の国のいけてなさ(自分でわかっている)を視察に来たまぬけで女たらしなスペイン国王 (Holbrook Blinn)が現れ、パワフルでお茶目なRosita を見て、自分がバカにされているのに彼女にすっかり魅了されて王宮に連れてくるのじゃ、って引っ立てようとする。 抵抗する彼女を見ていたDon Diego (George Walsh) – ちゃんとした身なりの人 - は、彼女を救うべく間に入って、やはり引っ立てられてしまう。

RositaとDon Diegoは宮殿内の囚われの身同志であっさり恋におちてしまうのだが、王様の方に対しては厳しくて言いなりにはならずに、あんたのこと相手にしてやってもいいけど、その前に自分の家族を王宮に住まわせろ、とか注文つけて、彼女の家族がぞろぞろやってきてやりたい放題するようになり、その反対側で王様は言うことを聞かない彼女への腹いせとしてDon Diegoとの結婚を申しつけた上で、その式の直後にDon Diegoの銃殺刑をやってやる、って。

お願いだから彼の命だけは助けてほしい、ってRositaは王様と交渉して、じゃあ執行の時の銃は空砲にしておくよ、って彼女に説明して、でもその裏でああ言ったけど実弾入れとけや、って部下にこそこそと指示して、それを後ろでじっと見ていたのが日頃の浮気とか三枚舌で旦那にあったまにきていた女王 (Irene Rich)で …

ルビッチ得意の豪快な女の子が権力者とかいけすかない男共を手玉にとって引っかきまわしてざまあ! っていう系統の(男女が逆だとつまんないよね)に分類されると思うのだが、ベースが劇作であるせいかドラマチックな仕掛けとか粘着するやらしい王の件など、減速させたりつんのめる要素もあちこちに見られて、Don Diegoの刑執行をめぐる裏の駆け引きは最後までどっちに転ぶかわからなくて、一応めでたし~ で終わるものの、脱線してロミオとジュリエットの悲恋で終わってもおかしくはなかったかも(そうしても悪くなかったのではないか)。

あと、ヒエラルキーの頂点にいたのは実は女王だった、その女王のことをもう少し描いてくれてもよかったのに。この後、ルビッチの『ウィンダミア卿夫人の扇』(1925)にも出ることになるIrene Richはワーナーがルビッチと契約した際の刺客でもあった、と。

ルビッチとしてはアメリカ進出にあたって大人気(だし呼んでくれたし)のMary Pickfordをメインに据えて威勢のよいぱりっとした宮廷活劇をやりたかったのかもしれないが、原作が結構クラシックなやつだったので思うようには捌ききれず、結果としてMaryのご機嫌を損ねてしまった(撮影後の彼女は相当気に食わないことがあったらしく興行的には当たったのにフィルムとかぜんぶ廃棄してしまったという)、ということなのではないか。『ルビッチ・タッチ』本には当時の批評が好意的だったこと、に加えて谷崎潤一郎の評なんかも掲載されている。

それでも最初の方の彼女が群衆を前にぐいぐい煽るシーンとかは遠くから捕らえていてもすばらしいし、王様のまぬけなかんじも含めて全体に漂うスカスカした緩いかんじはわるくないかも。ただこのレストア版はやや寄せ集め感があって、オリジナルはもっとテンポよく軽快なものだったのではないかしらー。

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