10.06.2021

[film] Reminiscence (2021)

9月28日、火曜日の晩、TOHOシネマズの日比谷で見ました。
HBOの”Westworld”のプロデューサーだったLisa Joyの作/監督による長編デビュー作。

街の半分くらいが水没した状態にある近未来のマイアミで、Nick Bannister (Hugh Jackman)と相棒のWatts (Thandiwe Newton)は、自分たちの名前がついたお店をやっていて、そこでは客が「レミニセンス」ていうバスタブ装置に浸かって失われた記憶や楽しかった記憶を再生して安らぎや癒しを得たりする、そういうのをガイドしたり運用したり、のビジネスをやっている。

Nick自身の重めのナレーションで“The past can haunt a man” とか”Nothing is more addictive than the past”とか何度か語られるように、彼らはそれが客にとってあまりよくないし危険ですらあることはわかっているのだが、お金のため、ってハードボイルドなふう。

ある晩、閉店間際にMae (Rebecca Ferguson)が訪ねてきて、家の鍵を失くしちゃったのでその前後の記憶を探りたいのだ、と。そうやって再生された記憶を通してNickはMaeの陰のある佇まいとか、バーの歌手であるらしい彼女の歌う歌 - Nickの好きな歌でもあった - に惹かれていって、やがてふたりは恋人の仲になるのだが、ある日彼女は忽然と姿を消してしまう。

こうして彼女の消息を追って、Nickは自分の記憶映像のなかにある彼女の言葉や彼女の記憶映像に映っている人を順番に訪ねていくとニューオーリンズの麻薬の売人とか悪警察官Cyrus (Cliff Curtis) とかその背後に蠢くマイアミの土地利権のスキャンダルとかにぶつかってやばい事態に巻き込まれていく。彼女の正体は? 果たして彼女と再会することはできるのかー。

昔からある、消えてしまったファム・ファタールを私立探偵が罠と知りながらも追っかけて破滅していくノワールを近未来設定とガジェットとCGでなんの新味もなくパッチワークしただけ、などといろいろ酷評されているし、実際にノワールにおける失踪者を巡る関係者の語りが彼女自身とその関係者のビジュアルな記憶(メディア)に置換されているだけ、のような印象も受ける。 語りと写しとられた記憶に違いがあるとしたら語りはいくらでも嘘をつくことができるけど映像は嘘をつけないところ - でも本当にそうだろうか? - 映像は嘘をついていないように見せることができる、というだけのことではないのか? - といった辺りを掘りさげていったらもう少しおもしろくできたのかも知れないのに。

あるいは/それと複数の記憶映像の重ね合わせで見えてくる「だったはず」「じゃなかったはず」の像たちの呪縛。 記憶映像取り扱い業者のNickはその危険性を十分すぎるくらい知っていたはずなのに自らその迷宮に潜りこんで逃れられなくなっていく。 一方には自身の過去の戦争/従軍経験からの退避があり、もう一方にはひょっとしたらの希望の未来に繋がるかもしれないMaeへの強い愛があり ー。

甘々かもだけどずぶずぶに入り込んで過去や夢の世界にぬくぬくだらだら溺れていく人の話、として見てしまうとなんか嫌いになれない。 湯船に浸かって本読みながらこのままふやけて溶けてかまわないやって思うのと同じような。ちがう?  生産性ゼロ、むしろマイナスの人々。 みんなそうなっちゃえばいいのに。

そういえば、”Minority Report” (2002) - あれは水に浸かって未来の映像を予測する映画だったけど、なんで時間を旅するためには水(なのあれ?)に浸かるのが必須なのか? 羊水のイメージ? Hugh JackmanはWolverineの頃に散々ああいうのに漬け込まれていたのに懲りないの? ウィリアム・ギブソンの「カウント・ゼロ」だか「モナリザ・オーヴァドライヴ」(どっちだったか)にも電極通してあっちの世界に漬かったままの人たちが出てきたよね。

気になるのはあれらの映像に漬かっているとき、映像と音は再生されていそうだけど、その時の匂いとか味とか触覚とかまでは再生されないの? だとしたらプルースト的には難しいかも。そのうち飽きちゃうかも。

“The Greatest Showman” (2017)でも一緒だった(になろうとした)Hugh JackmanとRebecca Fergusonの相性は素敵なのだが、”The Greatest Showman”て、TVで見ただけで、なんか苦手なのよね。 ふたりでばきばきのアクション・コメディやってくれないか。


New York Film Festivalが始まってて、今日からLondon Film Festivalが始まって、つまんなくてふてくされて泣いている。飛んでいきたいようー。

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