10.10.2021

[film] Beat Girl (1960)

10月5日、火曜日の晩、Criterion Channelで見ました。
新作“Last Night in Soho”がNYFFでも評判になって、昨晩のLFFでもプレミアされたEdgar Wrightさんがここでこの映画の魅力 - この時代からのSohoの魅力など - について語っている。もうじきBFIで始まる特集 - “London After Dark”でも上映されるの。
邦題は『狂っちゃいねえぜ』… アメリカでの公開タイトルは”Wild for Kicks”。脚本の最初の段階でのタイトルは"Striptease Girl”で、当時のX-Rated指定を受けて、ストリップのシーンでは胸が見えている。

50年代後半のSohoは、Billy Braggさんがその著書 - “Roots, Radicals and Rockers: How Skiffle Changed the World” (2017)で触れているように(彼だけじゃなくていろんな人々からも聞いた)ここのほんの数ブロック - 小さなエリアのカフェ文化(紅茶ではなく断固コーヒー)がその後のロケンロールを含む雑多なカルチャー - そこにはLGBTQ周辺のアンダーグラウンドのも含まれる - の爆心地としてあった。その頃にいくらでも転がっていたかもしれない例えばこんなお話し。

Paul Linden (David Farrar)はプロジェクト系のモダン建築を手掛ける建築家で、長期のフランス滞在を終えてロンドンの高級住宅街にある自邸に戻ってきて、そこに滞在中に出会って連れてきた24歳の妻Nichole (Noelle Adam)を迎えて幸せの絶頂にあるのだが、彼の(前妻との間の)ひとり娘のJennifer (Gillian Hills)はちっともおもしろくなくて、夜に家を抜け出してSohoのカフェ - Off-Beatに入り浸って、いつもギターを抱えているロケンローラのDave (Adam Faith)や仲間たちとべたべたうだうだしている。

せっかく家族になったのだしJenniferと仲良くなりたいNicholeはJenniferの通うSaint Martin's School of Art(名門)まで追っかけてきて、彼女の仲間とおしゃべりすると、仲間たちは彼女のジャズの知識とかにクールじゃん、って感心するのでJenniferを動揺させて、でも帰り際にカフェの隣のストリップクラブのダンサーGreta (Delphi Lawrence)がNicholeに声をかけている(Nicholeはさらっと無視する)のを見てなんか怪しいかも、って思う。

こうしてJenniferはNicholeの過去を掘るのにストリップクラブに出入りするようになり、そんなことすればするほどNicholeともパパともどうしようもない不和が広がって毛が逆立ち、だんだんやけくそ起こして自分の家でどんちゃん騒ぎすれば怒られ、カフェに戻って踊っても対立する不良たちとぐじゃぐじゃになって、逃げこんだストリップクラブではそこのマネージャーのKenny (Christopher Lee!)からうちにくればパリに連れていってあげるよ、って口説かれて、それを陰で聞いていたGretaがてめーふざけんじゃねえよ、ってナイフを..

どこのエピソードがどう、と言うより、若者たちの居場所や拠り所のなさを掃除機のように吸収して広がってびくともしないロンドンの繁華街のぎらぎら雑多な様や魔窟ぶりが強く残って、これらもまた"angry young men”を中心としたKitchen sink realismの一部だったのか、その反対側にあるなにかだったのか、なんにせよ、いろんな若者たちがいて、いろんな溜まり場があって、いろんな捕り物があったり作品が作られたり、その独特なエネルギーのありようは見ているだけで楽しい。小説でも映画でも。

主人公のJenniferは外に向かって暴れたかのように見えて実はなにも起こらないままおうちに戻り、騒動でギターを壊されたDaveがどこに行くかは街が教えてくれるのさ、ってひとり雑踏に消えていく。Beat Girlが本当に楽器を手にして騒ぎだすにはここから更に20年かかった..

映画音楽作家のJohn Barryが音楽を手がけたのはこの作品のが最初で、劇中でもJohn Barry Sevenていうジャズコンボで演奏をしている。タフでぶっとくて軽く一晩でも踊っていられそうな曲の数々。この作品のサウンドトラックが、映画のサウンドトラックでLP盤としてリリースされた最初のものなのだそう。

Jenniferを演じたGillian Hillsさんはバルドーぽい、ってこの後に“Blowup” (1966)とか“A Clockwork Orange” (1971)にも脇で出たりしている、と。



小三治さんが亡くなってしまった。90年代にアメリカに行く前はたまに寄席に行ったりしてて、戻ってからも彼が出ているのなら..  と思いつつも行くことはなかった。もう寄席に行くことはないのかな。
ありがとうございました。あっちでの寄席を楽しみに。

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