10.28.2021

[film] À nous la liberté (1931)

10月23日、土曜日の昼、武蔵野館のRené Clair Retrospectiveで見ました。
邦題は『自由を我等に』。英米のタイトルはそのままなのね。

冒頭、流れ作業で玩具の木馬を作っているラインがあって、みんなで歌を歌いながらそれを流しているのは刑務所の囚人たちで、そのなかのEmile (Henri Marchand)とLouis (Raymond Cordy)のふたりは目配せをしたりしつつ、工具をこっそりくすねて隠し、同じ房にいるふたりはそれで格子を切って脱獄を試みるのだが、成功したのはLouisだけで、自転車とぶつかり、その自転車を漕いでいくとレースに優勝し、店に入れば衣服を貰えて、レコードの露天売りからそのままするする蓄音機製造の会社に入って、気がつけば社長になって偉そうに自分が出てきた刑務所のような流れ作業の頂点に立っている。(ちょっとベンヤミンに似てる)

ようやく出所したらしいEmileの方は、また捕まって牢屋に逆戻りで、もうだめだって首を吊ろうとしたらそれも失敗して、でも結果的に外に出ることができて、その時にぽーっとなったJeanne (Rolla France)の後を追いかけて工場に入ったらそこはLouisの工場で、彼を発見したEmileはなんだお前、って寄っていったらLouisは知らんぷりをしようとして、でも逃げてどうなるもんでもないからハグして、再会したふたりは一緒に過ごしていくうちにだんだんなりふり構わず、になっていってその先にはー。

ずっと鳴って歌っているご機嫌な音楽(by Georges Auric)に乗って、なにをやっても運よく転がっていってお得なLouis – やや冷たい - と、なにをやってもついてなくてやられてしまいがちのEmile – やや温かい - と、でもなにかの運がよいとかわるいとか、それを決めて転がしているのってなんなのか、自分たちとはあんま関係ないそのときの社会(みたいなやつ)の状態とか動勢みたいなのでしかなくて、そんなのに縛られたり踊らされるのってバカみたいじゃない? って。

前作の『ル・ミリオン』では見えない百万のくじ札の周りで誰も彼もが踊って/踊らされていたわけだが、今作ではそれって、それすらもなんかバカじゃね? どうでもいいんじゃない? っていうところにまで行く。こんなふうなその先のなにかを本当に「自由」と呼んでよいものかどうか、は彼らの今後(とこの後にやってくる時代)を想像するとどうなのかなあ、って。アナーキーで落語みたいで楽しいけど、あまり笑えない気がするのはなんでだろう。  

などど思いながら北千住に行って毎日パンク!の展示を見たの。


Porte des Lilas (1957)

24日、日曜日の午前に同じ特集で見ました。邦題は『リラの門』、英語題は“Gates of Paris”。
今回のレトロスペクティブ5本のうち、これだけ50年代の作品。 原作はRené Falletの小説 "La Grande Ceinture"。

パリの下町で職も持たずに日々呑気にお気楽に暮らしているJuju (Pierre Brasseur)といつもギターを抱えて歌って同様のArtiste (Georges Brassens) – やや暗め - がいて、彼らの暮らす家に銃を抱えて警察に追われていたPierre Barbier (Henri Vidal)が逃げこんでくる。具合が悪かったのでJujuは彼を看病して、彼の情婦のところにいって服を貰ってきたり、警察が探しに来ても地下に匿ったりしてあげて、でもこいつは傲慢だし乱暴だし人殺しなのになんでそこまで.. って思う。

そのうち、Pierreは酒場の娘Maria (Dany Carrel)に目をつけて、夜中に誘い出して遊びに行ったり - Robert Doisneauの写真みたいなふたり - 貢がせたりして、Mariaも夢中になって、でもそれがPierre自身の逃亡までの遊びだったことがわかるとJujuは…

『自由を我等に』とか、『奥様は魔女』(1942) なんかもそうだと思うが、一度社会から弾かれた者たちがその縛りから解き放たれて自由を味わって、でも結局 .. のようなところに向かう。それって規範とかルールのありようと表裏なのか、なんとかスナフキンみたいな自由に、風になれないものか、とか。

もうとっくに誰かやっているのだろうけど、三人の男たちのホモセクシュアルなドラマとして見るといろいろ見えてくるものも。

Georges Brassensが歌ってギターを弾いて、そこに猫もいるのを見ることができる至福。Jacques Brelは当然聴いてて、Serge Gainsbourgももちろん聴いて、Léo Ferréも大好きだった。大学の頃って、パンクと並べてこれらを聴いてて、フランス映画はもう少し後だったなあ、とか思い出した。

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