10.26.2021

[film] 地獄の曲り角 (1959)

10月20日、水曜日の夕方、時間があいたので、神保町シアターの特集『生誕100年記念:映画に愛された小説家・藤原審爾の世界』で見ました。なんとなく。

監督は蔵原惟繕、原作は藤原審爾の小説『金と女と死』。脚本には今村昌平が参加しているらしい。

シーホースホテルでボーイとして働く牧(葉山良二)は控室で同僚と骰子博打したり、ホテルを出たばかり客の情報をやくざの上月組に流して小銭を稼いだり、お金が欲しくて欲しくてたまんなくて、つきあっている花屋の章子(稲垣美穂子)にそういう話をしても、なんか退かれてしまって合わない。

ある晩、シーホースホテルの客室で男性が殺される事件があって、その現場の部屋で半分に切られて「1/2の鍵」って紙に包まれた鍵を見つけた牧は、殺しがあった部屋になにかを探しに訪れた謎の女 - 貴子(南田洋子)をマークして、向こうも牧にアプローチしてきて、政府を巻き込んだ大規模な収賄事件が背後にあること、もう半分の鍵を持っているのが貴子の恋人?で収監中の松永(二本柳寛)であること、鍵は郵便局の私書箱ので、そこには収賄の証拠一通りが揃っているので相当やばい(=金になる)やつであること、などが明らかになる。

これと並行して、客室に仕込んだマイクで室内の様子をテープレコーダーで録音して、それをネタに客をゆする稼業を始めたらこれが当たって、金に困らなくなったのでホテルも辞めて、大泉滉とかボーイ達仲間と一緒にこれまで下請けだった上月組との上下を強引に引っくり返して自分たちの事務所を作って威張り散らすようになるのだが、章子のために花屋を買いあげてやっても、実家の両親にTVを買ってあげても、身内はもう牧についていけなくなっていて、周囲の誰もこいつを止められなくて、最後に鍵を手にして関係者3人を呼びつけて恐喝してようやく大金を手にするのだが、そいつを狙っているのは他にもいて…

悪というか金に取りつかれた主人公が手段を選ばずにのし上がって、孤立と引き換えに大金を手にした途端につまんないことですべてを失ってしまう、というやや間の抜けたノワール仕立てで、謎の女とかやくざとか収賄とか闇にまみれた恐い世界があって、反対側に実直な堅気の世界があって、夜の狭い部屋の世界と坂の上から町を見晴らす世界が対比されて、一方から他方にでっかい声で強引に突っ切ろうとする牧がいちいちうざくて見苦しいかも。

そんなに金が欲しいならひとりでがんばって勝手に死んでくれ、なんだけど、あまり周囲に認めて貰えないのが我慢ならないところ(いそうなかんじ)とか、なんかクールじゃないし、あんた自業自得よね、としか言いようがない。ラストのあまり盛りあがらないカーチェイスの果てにあんな目にあうのは、彼の方であってもおかしくなかったし、なんならどっちの男につくかをひとり紙相撲して決める南田洋子の方がずっとかっこいいの。それにしてもなんで紙相撲なのか?

地獄の曲り角は冒頭の骰子転がすところで言及されてそこから始まっていくのだが、いくら曲がっても地獄は地獄、っていうだからこそ地獄、なのだった。


A24から”Lady Bird”のストーリーブックが届いた。すごくすてき。 今週はこれでなんとか乗り切れますようにー。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。