9.02.2021

[film] Summer of Soul (…Or, When the Revolution Could Not Be Televised) (2021)

8月28日、土曜日の午前、シネクイントで見ました。今年のサンダンスで話題になった時からとっても見たかった1本。なので公開翌日に走る。

1969年の夏、ハーレムのMount Morris Park – 今はMarcus Garvey Park – で6週間に渡って開催されたHarlem Cultural Festival(ハーレム文化祭)に出演したアーティストのパフォーマンスと場の様子をとらえた作品。 それぞれのパフォーマンスのすばらしさ、とんでもなさもさることながら、なんでこんな映像が埋もれていたんだ? サブタイトルにあるように「革命がテレビ放映されなかったとき」… Or, 革命はこうして隠蔽される。

監督はThe RootsのAhmir "Questlove" Thompson。彼のレコード掘りの旅やインスタで延々だらだら(←ほめてる)繰り広げられるDJに触れたことがある人は彼が真摯で思慮深い音楽の探究者であることを知っている。1997年に彼が日本で初めてその存在を知ったフェスに2017年に改めてぶつかり、それを記録したビデオテープの存在を知り、それがミックスも含めて奇跡的によい状態で保管されていた、と。さまざまな偶然と最良の探究者が重なって発掘復元された1本 – その偶然に近年のBLMの動きも加わっていることは言うまでもない。

冒頭、まだ小僧のようだったStevie Wonderがキーボードを力強く引っ叩き、更には引っ叩きの延長でドラムソロまで披露する、現在のStevie Wonderの姿と重ねて掴みとしてはじゅうぶん。

そこからなぜこの場所で、こういうフェスが必要とされたのか、どんな人たちが集まってきたのか、69年という時代と共にハーレムのコミュニティやカルチャーの紹介をした後で、ゴスペルの方、神の方↑ に目を向けて(Mahalia Jackson & Mavis Staples !)、中盤にモータウンを始めとしたスターたちを並べて、そうはいってもね、と裾野としてのニューヨリカンの源流を辿り、最後は問答無用のNina Simone ~ Sly and the Family Stoneで締める。単に時系列で並べるというより、「この熱狂はマジックでもなんでもない、時代と場所、季節と人々と音楽のミックスが生み出した必然」ということと「なぜ月面着陸は放送されてこの熱狂と興奮はされなかったのか?」というメッセージを的確に伝えるべく編集と構成は十分に考え抜かれているように思った。

現代の(含. 出演していた)ミュージシャンたち - Mavis Staples、Gladys Knight、Sheila E.などからのコメントは証言という側面だけでなく、はっきりとライブの熱狂に驚き興奮しているし、映像をモニターで見ている現代のアメリカ人と会場でわあわあしている観客が横並びに連なってゆるゆる高揚していく。約2時間に渡る1曲を輪になって楽しんでいるかんじ。

夏のマンハッタンの公園のフェスだとCentral ParkのSummerStageとかProspect ParkのCelebrate Brooklyn! とかいろいろあって、最近は有料のも多いけど、基本はフリーでほんと気持ちよくだらだらできるのがいっぱいで、たまんなくよいの。今年に入ってフェスのイメージはなんか汚れてしまったし(結局金か)、当分近寄る気にはなれないけど、フェスっていうのはそもそもこういうもんなのだ、というのを”Woodstock” (1970)よりもストレートに伝えてくれる気がした。「愛と平和」なんてくっつけなくても。

個人的なハイライトは、やはりSly and the Family Stoneかしら。Cynthia Robinsonがかっこよくて、Greg Erricoのスネアが炸裂してGreg本人が喋ってくれるし、"Everyday People" (1968)の歌詞とかすばらしいし。彼らは中盤に出てきて、映画の最後にもういっかい、”Higher”を演奏してくれる。ラストは"Hot Fun in the Summertime”じゃないのかと思ったら、この曲のリリースはほんの少しだけ後だったのね。

このラインナップで、自分が見たことあるのはNina Simoneだけだったかも。93年のBeacon Theater。2階席からだったけど、あれはほんとにとんでもないものだった。

まだまだこういうフィルムが世界のどこかに眠っていると信じたい。Questloveさんにはこれらを掘って束ねて繋いで”Women Make Film” (2018)のようなでっかい音楽ドキュメンタリーを編んでほしい。

このサブタイトル、昔どっかで見たような、ってずっと思っていたら、デプレシャンの『そして僕は恋をする』(1996) の英語題 - “My Sex Life... or How I Got Into an Argument” だったかも。(そんな似てないか...)



それにしてもさー、『さよなら、私のロンリー』ってなに? ほんといい加減にしてほしいわ(怒)。
 

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