9.27.2021

[film] The Brat (1931) + Pilgrimage (1933)

どういう事情なのか、どうしてこの2本なのか不明なのだが、MoMAのバーチャルで”John Ford Rarities from the MoMA Archive”というタイトルの二本立てがかかっていて(9/30まで)、どちらもものすごくおもしろくて。

9/18に”The Brat” (1931)を、9/19に”Pilgrimage” (1933)を見ました。

The Brat (1931)

邦題は『餓饑娘』とか『餓鬼娘』とか。雑誌「文學界」2020年4月号の蓮實重彦さんによるジョン・フォード論にこの映画のポスターが引用されている(のの一部をWeb上でみただけ。本文の方は未読)。

女優/作家のMaude Fultonの書いた同名舞台劇(1917) - 主演も彼女 - がベースで1919年にまずサイレントで映画化されて、これが2度目の映画化、3度目のもあって”The Girl From Avenue A” (1940)だそう。

NYのローワーイーストから夜間法廷に連れてこられたごろつきのThe Brat (Sally O'Neil)が判事とのやり取りでぐじゃぐじゃ返しているとそれを面白がった作家で貴族のMacmillan Forester (Alan Dinehart)が自分の作品の題材に出来そうなので郊外の自分の邸宅に連れていきたい、と申し出て彼女と自分の一族を一緒に住まわせて巻き起こる旋風の数々。

まず、彼女が庭の大きな樹にかかったブランコをぶんぶん乗り回すところがすごくて、これを見るとルノワールの『ピクニック』(1936)のブランコってなんてお上品で貴族なのかしら、とか。あとはポスターにあるようなスカートまくり上がりがいっぱいあったり、Macの取り巻き娘のひとりAngela (Virginia Cherrill)とBratの互いの服をぼろぼろにする凄まじい取っ組み合いの喧嘩とか、見どころたっぷり。Pre-Code。

ストーリーはシンプルで、彼女の率直な物言いをBishop (Albert Gran)が感心したり、家のなかで彼女と同様にスポイルされてぐれているMacの弟のSteve (Frank Albertson)との恋バナがあったり程度で彼女を飼い慣らしてレディにするつもりはなくて、とにかく威勢がよくてぜったい揺るがないパンク娘 - Bratを見て痺れているだけであっという間に終わってしまう。当時の映画のなかで描かれた女性像からすると相当異色なのではないか。

彼女がそこらに置いてあった”The Restless Virgin”ていう本を拾いあげて少し読んで目をまんまるにするシーンがあって、たぶんポルノ本だと思うのだが検索しても同名の最近のやつしかでてこなかった。


Pilgrimage (1933)

邦題は『巡礼』になると思うのだが、allcinemaにも載っていないので日本では公開されていないのかしら?

第一次大戦の頃のアーカンソーの田舎で、未亡人のHannah (Henrietta Crosman)と息子のJim (Norman Foster)はふたり暮らしで、Jimが農作業の合間とか夜中に抜け出して村娘のSuzanne (Heather Angel)に会いにいくのがHannahは気に食わないし、やめろと言っても聞かないのでふたりを引き離すべく勝手に徴兵に応募してJimを戦地に送ることにする。戦地に赴く直前、地元の駅でJimがSuzanneにお別れをいうと彼女は彼の子供を身籠っている、と。 Jimはその場で結婚したかったのに時間がなくてそのまま離れ離れになって、彼はフランスであっさり戦死してしまう。

Jimが亡くなってSuzanneに彼の子供が生まれてもHannahは彼らを許さずに認めずに無視し続けて、終戦から10年が過ぎて第一次大戦の戦死者の母親たち – “Gold Star Mothers”にフランスの戦地を訪れて追悼しようという政府のプロジェクトがやってくる。当時の自分がやったことへの後悔の念に苛まれているHannahは参加を渋るのだが、アーカンソーでひとりだけだからとかみんなに説得されて旅に出て、そこで彼女はー。

自分と同じように息子を失った母親たちがどんな思いで過ごしてきたのかを知ったり、パリでJimに瓜二つの思い詰めた顔の若者に出会って彼の結婚の悩みを聞いたりしているうちに生まれてくる贖罪の念と自分にできること、すべきことはなにかを考え始めるHannah。 Jimの墓の前で泣き崩れたあと地元に戻った彼女はSuzanneのところに向かうの。

書いてしまうと暗い内容に見えるけど、Hannahのとる行動も感情の行方も一貫していて(その土地の、ひとり親の母の)倫理があって、それを丁寧に掬いあげてきちんと並べて、単なるお涙頂戴にはなっていないし、フランスで他のMothersと一緒に射的場で撃ちまくってぜんぶ当てまくるとこなんてコミカルで痛快ったらない。

興行的には当たらなかったらしいが、これ、主人公を母親ではなくて父親にして、彼の後悔と贖罪をメインにしたらまた違ったのではないか。 そんなことないかしら?


この2本、Pre-Code時代の女性映画なんだと気付く - ひとつは結婚前の、もうひとつは母となった女性の。
(あったりまえすぎるが)John Fordすごいー。もっと見せてMoMA。

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