9.06.2021

[film] The Green Knight (2021)

9月2日、木曜日の晩、米国のYouTubeで見ました。

A24制作 - David Lowery監督・脚本による伝奇もので、こんなのぜったいに映画館で見た方がよいに決まっているのだが、どうせまた見るに決まっているのだし、あの喋るキツネを見たくてたまらなくてつい。

冒頭、農村風景で前景に角の生えたヤギと鵞鳥がリアル小競り合いをしているその向こうで家屋に火が燃え広がって「キリストが生まれたー」とか声が聞こえる。これだけで胸倉掴まれて、続いてでっかく“The Chivalric Romance”(騎士道物語)- 次画面で“Sir Gawain and…”、次画面で”… the Christmas Game”って、古文書のゴシック体ででっかくでんでんでん、と出て、それだけでおー、って向こうの世界に引っ張りこまれる。

原作は14世紀に書かれたアーサー王物語を詠う長編詩 - 『ガウェイン卿と緑の騎士』。

Sir Gawain (Dev Patel)はでっかいことしたいなとか、まだ騎士にはなれていない、とか自分に言いつつガールフレンド (Alicia Vikander)と地元でぐだぐだしているとクリスマスの宴の日に伯父のKing Arthur (Sean Harris)とQueen Guinevere (Kate Dickie)に呼ばれて彼らの傍らに座らされて、お前のことはいつも気にしてきた、とか言われて少しびっくりしていると、扉がごおおーって開いて、馬に乗った緑の半樹人the Green Knight (Ralph Ineson)が現れて、ここに自分の首を叩き切る勇気のあるものはいないか? 叩き切って自分が生き返って無事だったらそのお返しを1年後のクリスマスに自分のところ - the Green Chapelでやるのじゃー、ってよくわかんないけど、誰も手をあげないのでGarwainは手をあげて立ちあがって緑の騎士の首をだん!て切ったらやっぱりこいつは立ちあがって自分の斧を置いて自分の首を拾いあげると「1年後にGreen Chapelで会おうぞ!」って馬で去ってしまったので、Garwainはその斧を携えて旅に出ないわけにはいかなくなる。

ここまでで、旅に向かう大義とか心意気とかも含めて、かわいい人形劇で茶化されたりするようにちっとも勇ましそうなかんじはなくて、厄介事に巻きこまれちゃったなって進んでいくと、屑拾い(Barry Keoghan)に会って身ぐるみ剥がされて死にそうになったり、裸の巨人の行進を見たり、キツネと出会ったり、親切そうな領主(Joel Edgerton)と謎めいた女性(Alicia Vikander - GFと2役)と盲目の老婆(Helena Browne)に会ったり、いろんな誘惑や試練にあうのだが、それらを乗り越えて彼が成長していく証のようなものは特に見れらなくて、どこまで行っても自分はこの程度なのか、Green Chapel行きたくないな、の方がとぐろを巻いてやってくる。

でももちろん最後には、待っていた緑の騎士のところで、ゲーム - 取引きのルールに従ってお前の首を差し出せ、って言われるのだが…

これこれを達成した - 誰それを倒した - から騎士になれるとか、騎士になれたらあんなことこんなことができるとか、そういうレベル設定やゴールや教訓があるわけではなくて(あっても冠とか剣とか)、母 - Morgan Le Fay (Sarita Choudhury)やGFや王/女王の目線とか - 所詮は人形劇 – に縛られながら成長したくてもできずに苦しんで彷徨うGarwainの顔面が何度も映し出され、その暗さを反映するように手もとも遠景もぱっとしないどん詰まりが延々続いていく。そうしてみるとこの先の見えない彷徨いはまるで”A Ghost Story” (2017)のシーツを被ったゴーストの世界にそっくりで、あの成仏できない立ち姿に胸を打たれたひとには来るけど、そうでもなかったひとにはどうかしら。

光とか闇とか樹々の深い緑とかも含めて中世の神話世界に引きずり込む引力はすごくて、そこに居心地わるそうに現れた勇ましさの欠片もない中途半端な若者はどこを目指して如何にして騎士になるのかなれないのか。そんな半物語、みたいなおはなし。

このGareainの風貌なら、誰もがAdam Driver主演を思い浮かべてしまうのかも知れないが、ここでのDev Patelの煩悶する立ち姿は実にセクシーで - 映画全体も猛々しくなくてぬめっとしてセクシーなの - 見応えたっぷりに向こうの世界にはまっている。Kylo Renとはちょっと違うかも。

これがアーサー王伝説(周辺)のいち解釈としてどんなもんなのか、未だリリースされていない英国ではどう受けとめられるのか、見守りたいけど、わたしはキツネの耳がしゅんと立ちあがるところだけで十分だったので、もう一回大きな画面で見たい。

David Loweryさんは”A Ghost Story”が公開された時のQ&Aで、Peter Panの映画化のことを嬉々として語ってくれて、あれはどうなったのかしら、と思ったらまだ撮っているのね。こちらも楽しみ。



暑さがどっかにいってくれたのはよいけど、低気圧と湿気がまだ中途半端にのさばっているのできつい。

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